第70話 隠しフロア
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■ダンジョン『重獣』
51~59階層
・ファングヒポモス
経験値約26000
レベル59→66
3階ごとに池
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「獲得経験値量がインフレし始めたな……」
俺はメモ帳にここまでの獲得経験値量などをメモ帳にメモすると、ぐっと背伸びした。
階段の位置をマークする依頼もこなし、現在は59階層と60階層の間の階段で座りながら休憩中。
ここについてから3時間程の仮眠を取ったことで、体はそれなりに元気だ。
60階層のボス挑戦もしてみたいところだが、この様子ならファングヒポモスを乱獲した方がいいかもしれない。
「戻るか」
俺は重たい腰を上げると59階層に戻った。
久々に浴びる光が目を刺激して、何だか足元に違和感すら覚える。
「いきなりで眩暈でもしてるのか――」
ずさぁああぁああぁあ
「なっ!?」
足元の違和感を感じていると、砂が飲まれるような音が響き出した。
そして、その音共に俺の脚が砂に埋もれていく。
眩暈じゃない。地面が動いていたんだ。
「くっそ!! 『瞬脚』」
『瞬脚』でその場から逃れようと試みるもそこから抜け出すことが出来ない。
アイテム欄からヒポモスの皮を取り出そうとして腕を動かそうとするが、砂の勢いは凄まじく、俺は既に腕を動かすのは不可能な程の砂に埋もれてしまっていた。
「『瞬脚』! 『瞬きゃ――』」
遂に顔も、口も砂で覆われて視界が真っ暗になったのだった。
◇
「ん?」
砂に埋もれた筈なのに痛くも苦しくもない。
息も出来る。なんなら声も出せる。
ギュッと瞑った瞼を恐る恐る俺は開けてみる事にした。
「ここは……」
するとそこにはさっきまでの明るい砂漠ではなく、薄暗い前面に砂が敷き詰められた部屋。
砂に飲まれたことで、この場所に移動したらしい。
全く仕組みは分からないが、これが俗に言う隠しフロアなのかもしれない。
隠しフロアでは通常のフロアでは出現しない希少なモンスター、植物、鉱石などが手に入るとか……。
「ただ、その分リスクも大きいんだっけ……」
隠しフロアは基本通常のフロアよりも狭い事でローグライクで定番のあれが発生する可能性が高いとか、そもそものモンスターの強さがけた外れに上昇してるとか、そういった噂は後を絶たない。
ただ確認しようとしても隠しフロアの出現率が相当低い所為で意図的にそれも出来ない。
だから噂程度にしか情報が出回らないらしい。
この情報さえ、探索者なりたてのころに、ダンジョンの入り口待機列に並んでる他の探索者の話を盗み聞きしてたまたま知っていただけ。
探索者協会は隠しフロアについて、もうないものだと考えているのかもしれない。
「まさかそれを引き当てるなんて……」
ボコっ。
俺が自分の運がいいのか悪いのか判別出来ずにいると、砂の一部がボコっと盛り上がった。
どうやら、通常のフロアと同じく、砂の中にモンスターがいるらしい。
「『透視』」
俺はここまでにレベルを1つ上げた『透視』LV6を発動した。
LV6まで上げた事で砂に潜っていてもその上から相手の急所を見れるようになり、ファングヒポモスはもはや雑魚モンスターと言っても過言ではないくらい安定して狩れるようになっていた。
「砂の上から一突きで倒……。何だよこれ?」
『透視』を使って見えた赤い点。
それは幾重にも重なって、砂の中をうようよと泳ぎ周る。
その数、10、20……50以上。
「一度に襲われたらまずい。『隠蓑(かくれみの)』」
俺はその状況をまずいと思い、LV65で習得した新しいスキルを発動させたのだった。
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