第26話 ゴールドホーンラビット

「キーッ!」


 威嚇をするホーンラビット。

 俺は他の探索者に勧められたのとは逆の階段を下っていた。


 他の探索者が言っていたようにあの1本角はジャマハダルをはじく程の高い硬度を誇る。

 

 HPこそ低いものの、コボルトよりも素早く気を抜けば串刺しになりかねない。

 外れのコース扱いをされるのも分かる気がする。


「キーッアッ!!」


 ホーンラビットは真正面から突っ込んでくることがない。

 今も俺の周りを走り回り、こちらの様子を窺い、更には気を散らそうとしている。


 俺から攻めるような姿勢を見せると、距離をとられ最悪仲間を呼ばれる。

 

 ホーンラビットの攻略としては攻撃を待ちカウンターを決める。

 これが鉄板となりそうだ。


「≪透視≫」


 俺は透視を発動しつつ、攻撃の構えを解き、腕をブランと垂れ下げる。

 明らかな隙を作ってあげる事で攻撃を誘う。


「キーッ!」


 ホーンラビットは頭の1本角を俺に向け、背後から攻撃を仕掛けてきた。

 背後から攻撃してくるのは何回か相手をしたことで、何となく察していたし、そもそも隠す気のない鳴き声の所為で折角の背後からの攻撃はバレバレだ。


 俺はそんなホーンラビットに向き直ると、攻撃を避けるのではなく、敢えてジャマハダルを突き出す。

 わざわざこんな事をしなくても避けてから胴体の急所を突けば一撃で倒せるのだが、こうするのには訳がある。



 バキっ!



「キーッ!!」


 角にはウォーリアーコボルトと同じように青い点があった。

 そしてそれを突く事で角は綺麗に折れる。

 

 折ってしまえば後は気兼ねなくホーンラビットの胸を突き刺し倒す。


 すると、そこには『+80』という経験値が表示された。


「角を折ると多めに経験値が手に入る仕様だとはな」


 普通にホーンラビットを倒せば得られる経験値は12。

 コボルトよりも3低い。だが角を折ってやるだけでコボルトの5倍以上の経験値が手に入るのだ。


 レッドメタリックスライムと比べれば少ないかもしれないが、沸く数によってはこっちの方が効率がいい。

 レベル上げにここを使うのはありかもな。



 そうしてホーンラビットをある程度倒しながら、20階層に辿り着いた。


「キギーッ!!」


 珍しく小型のボス。

 ホーンラビットと殆ど同じだが、角の色が金色に輝いている。

 

 あの光沢の感じ……少しだけ既視感があるな。


「キギッ!」


 金色の角を持つホーンラビット、ゴールドホーンラビットの角がぱりぱりと電気を纏いだした。


 そしてその角を地面に突き刺すと、電気が地面を這い俺に向かってきた。


 見た目に反して遠距離攻撃が得意なモンスターのようだ。


「キギッ! キギッ! キギッ!」

「くっ! そんなに俺を黒焦げにしたいのか?」


 電気での攻撃は避けても避けても繰り返される。

 

 そんななか俺は気付かれないように少しずつ少しずつゴールドホーンラビットに近寄る。


「キギッ!!」

「そろそろ……『瞬脚』!」


 俺はゴールドホーンラビットとの距離が『瞬脚』の範囲内に入ったと確信し、『瞬脚』を使った。


「≪透視≫」


 ゴールドホーンラビットの真横まで一気に近づくと俺は≪透視≫を使った。

 今までの通常ホーンラビットの事から、角を折った方が得。


 俺はゴールドホーンラビットの角に現れた青い点を狙って思い切りジャマハダルを振り下ろした。


「キギッ!」

「く、ああ!!」


 ゴールドホーンラビットは直前で角に電気を纏った。

 すると攻撃した俺に一瞬電気が走った。

 

 痛みと痺れで俺は追撃を仕掛けられなかった。

 だがそれはゴールドホーンラビットも同じ。


「キギァッ!!」


 金色に輝く角は見事に真っ二つになっていた。

 ゴールドホーンラビットは痛みからか、その場でぴょこぴょこと跳ねている。


 俺はその隙を突こうと根性で身体を動かした。


「キギッ!」

「ちッ」


 それに気づいたのかゴールドホーンラビットは慌てて俺との距離をとった。

 そして、再び電気を角に纏わせようと身体を力ませる。


 だが、電気は角に集まらず、ゴールドホーンラビットの身体を覆い、遂にはゴールドホーンラビットの体を焦がしだした。


「角が無いと電気の制御が出来ないみたいだな」


 俺は焦げていくゴールドホーンラビットを眺めた。

 

 しばらくして、電気が消えゴールドホーンラビットの姿がその場から消えだした。

 何とも情けない幕引きだ。


「『+1000』。美味いな」


 表示された経験値に満足すると、俺はボスの討伐証6つ目をアイテム欄にしまい込むのだった。

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