第114話 アジトの捜索へ
ヴィムの過去が明かされ、ヴィムがどんな思いでこの組織壊滅に臨んでいるのかが、そこにいる全員がわかったことだろう。
「ちょっと遅くなっちゃったけど、行くか」
ヴィムはソファーから立ち上がる。
「はい!」
その声は、いつもよりどこか緊張感があるように感じた。
「場所はグリフィントとの国境沿いだ。空間魔法を使おう」
アジトがあると思われる場所には、一度立ち寄ったことがある。
空間魔法で一気に行った方が効率的であろう。
今回は黒竜はお留守番だ。
空間魔法を展開し、グリフィントとの国境へと繋ぐ。
その中を通り抜けて、ヴィムたちは外へと出た。
「本当にこんな所にアジトがあるんでしょうか?」
ハナは少し不安そうな表情を浮かべていた。
「まあ、可能性としては十分にあるだろうな。こっちだ」
ヴィムが先導する形で、森を抜けて行く。
数十分歩いた所に、廃村になった村を発見した。
「ここ、見たいだな」
「ですね」
「マスター、どうやら辺りみたいだぞ」
廃村になった村に入った瞬間にディアナが言った。
ヴィムですら見つけられなかった気配を探知したのだろうか。
「え、でも索敵魔法には引っかかってないんだけど」
ヴィムはここに来る道中で既に索敵魔法を展開していた。
「結界でも入っているんじゃないか?」
「ああ、確かに」
結界を張っていると、索敵魔法に反応しないことが多い。
「でも、どうしてわかったんだ?」
「マスター、トレースの魔法を使ってみろ」
トレースとは、その名の通り人や動物の痕跡を辿ることができる魔法である。
肉眼では見えない足跡などの痕跡も、この魔法を使えば辿ることができる。
「これは……」
「マスターも驚いたか」
そこには、複数人の足跡が残されていた。
「この感じからすると、結構最近のものみたいだな」
「そうだな。三日も経っていないだろう」
こんな廃村になった何もない村に、用事がある人間がそう簡単にいるとは思わない。
それこそ、表舞台には立てないようなアングラな人間だろう。
「警戒していくぞ」
「「はい!」」
ヴィムの声で、ハナとミサはいつでも剣を抜けるような体勢を取る。
「この足跡を辿ってみるか」
ヴィムはトレースの魔法を展開したまま、村の中を進んで行く。
そして、村の奥の方にある寂れた比較的大きな建物の中へと続いていた。
おそらく、村長クラスが住んでいたのだろう。
ヴィムたちがその建物に入ろうとした時、その女は姿を現した。
「おや、懐かしい顔があるな」
長い赤髪のポニーテールを揺らしているのは、間違いなくヴィムとハナの宿敵である、組織のボスの女だった。
「覚えていたのか、お前」
「そりゃ、忘れないさ。私の可愛い部下を殺した男の顔はな」
「嬉しいね。何せ、俺もお前の顔は忘れたことがないからな」
ヴィムと赤髪の女との間には緊張した空気が張り詰めていた。
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