第75話 グリフォン討伐編

 グリフォンの周りで大爆発が起こった。


「すごい……」

「これ、私たち居る必要あった?」


 物理結界によって守られたミサとハナは口を開けたままになっていた。


「必要はあるさ。まだ、決定打にはなっていないだろうからね」


 ヴィムの手応え的にはまあまあといった感じだ。


「あれで倒せてないの?」


 ミサは驚きの表情を浮かべていた。


「ほらな」


 爆風と砂埃が収まった後に現れたのはいまだに倒れていないグリフォンの姿であった。

しかし、その姿はだいぶ弱っているような印象を受ける。


「行きます!」


 ミサは再び剣を構えた。

そのまま、ハナとミサは回り込むようにしてグリフォンへと向かっていく。


『痺れろ』


 ヴィムは雷系の魔法を展開する。

弱っているグリフォンの動きがさらに鈍くなったのを感じた。


「はぁぁぁ!!!!」


 ミサがグリフォンの後ろから剣を振るう。

その剣は見事に背中の位置に入った。


 ハナの剣もグリフォンの腹の位置に入っている。

見事な連携攻撃である。


「お見事」


 その攻撃が決定打となった。

グリフォンは横倒れたまま、再び起き上がることはなかった。


「お疲れさま。結構強っかったね」


 正直、もう少し簡単に倒せると思っていた所があったので、若干手こっずってしまった。

しかし、時間にしたら戦闘時間は20分に満たない程度だろう。

それを考えたら上出来ではないだろうか。


「そうですね。でも、ヴィム様の援護があって助かりました」

「ですね。正直、あの魔法の威力は桁違いだと思います。この防御膜もそうですし」


 ハナたちが自由に動き回れていたのは、この『防御膜』という防御系統の魔法を付与していたからであるとも言える。

多少、攻撃が当たろうが、その衝撃を全て弾き返してしまうほどの力を宿している。


「あの、短い詠唱でこれほど強力な魔法を起動できてしまうとは、本当にすごいです」


 ミサは感心した様子で言った。


「魔法は全てイメージ次第だからね」

「イメージですか……」


 魔法を起動させるときは、どれだけ明確なイメージを自分の中で起こせるかにかかっている。

それを補助する役割がよく、魔術師たちが持っている魔法の杖というわけである。


 ヴィムはもう、魔法の杖で補助してもらう必要がない為、杖の類は持ち歩いてはいない。


「さて、それじゃあ次に行こうか」

 

 守護者を討伐したことによって、次の階層に進むことができる。

次あ6階層となる為、魔獣のレベルも上がっていることだろう。


「気を引き締めていくぞ」

「「はい」」


 ヴィムたちは、次の階層に行くための階段を降りた。


 次の階層は3階層と同じくちゃんとした広さのエリアとなっていた。

しかし、マナ濃度が一気に上がった気がする。


「2人とも、大丈夫?」


 このマナ濃度だと、耐性がないと結構厳しいだろう。


「な、なんとか」

「私もです」


 2人とも少し表情を歪ませた。


『魔力付与』


「これでどう?」


「楽になりました」

「本当に、全然違う」


 ハナとミサは驚いた表情を浮かべていた。


「2人に俺の魔力を貸し与えている。これで、この濃いマナが充満している空間でも耐性ができるはずだ」

「そんなことができるんですね」

「私も、そんな魔法は初めて聞いた」


 これはヴィムの規格外な魔力量だからこそできる技でもある。

通常の魔力量と質では、他人に貸し与えることなんでできない。


 他人に貸し与えるということは、自分の魔力を消費しているということだからだ。


「そうだな。あんまり使える人はいないと思うよ。さて、じゃあ行きますか」


 索敵魔法を展開して、ヴィムたちは6階層を歩き始めた。

 


 

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