第47話 街の見物

 翌朝、いつもより少し遅い時間帯に目が覚めた。

ハナと約束している昼の12時よりは手前だったので問題はないだろう。


「さて、準備するか」


 ヴィムはベッドから起き上がると一通りの準備を済ませた。

そこから部屋を出ると、宿の階段を降りた。


「おはよう」

「おはようございます」


 階段を降りた所にハナの姿があったので、ヴィムは声を掛ける。


「それじゃあ、飯でも食べに行きますか」

「そうですね。そうしましょう」


 ヴィムたちは朝食兼昼食を露店で食べることにした。


「めっちゃ晴れてるな」


 外に出ると、そこは雲一つないような快晴だった。

雨の日は討伐も一気に危険が増すので、晴れているに越したことはない。

騎士団たちは調査に行っていることだろう。


 宿を出て中央通りをハナと並んで歩く。

中央通りの両脇にはずらっと露店が並んでいるのである。


「お兄さんたち、旅の人かい? 良かったら一本どうだ?」


 露店の親父から声をかけられた。


「これは何の肉なんだ?」

「鶏肉の串焼きだ。特製のタレをつけてここで焼いた焼き立てだ」


 串焼きはどこも定番であるのだが、ここのは肉の種類が違った。


「じゃあ、それを2本くれ」

「毎度」


 そういうと、親父が2本の串焼きを渡してくれる。

ヴィムはそれと引き換えに金を渡した。


「そういや、このへんにスライムが出るって聞いたんだけど、こっちにも何か被害があるのか?」

「なんだ、知ってんのか。大変だよ。魔獣が出るって怖がって仕入先から肉が輸送されてなくてな。仕方なく値段を上げるしかないんだよ」

 

 露店の親父は申し訳なさそうな表情を浮かべていた。


「いや、いいんだ。情報ありがとう」

「おう。また、来てくれよ」


 そう言うと、ヴィムとハナは露天から離れた。


「はい、ハナの分」


 適当なベンチに腰を下ろすと、ハナに串焼きを一本渡した


「私の分までありがとうございます」

「気にしなくていいよ。お腹空いたしね。俺、ちょっと飲み物でも買ってくるよ。待ってて」


 ヴィムはベンチから立ち上がると、飲み物が売っている露天で果実ジュースを購入した。

こちらも、定価より少し高い気がしたので、スライムの影響が出ているのかもしれない。


 購入したジュースを持ってハナの元に戻る。


「はい、どうぞ」

「すみません。頂きます」


 ハナはジュースを両手で受けとった。


「ちょと待ってねー」


 そう言って、ヴィムはジュースの上で手をかざす。

すると、ジュースの中に数個の氷が現れた。


「すごい。氷だ」


 ハナは感心した様子でグラスの中を見た。

前回はジュースを冷やすというだけで氷は入れなかったが、今回は氷を入れて冷やすことにしてみたのだ。


 氷というのは貴重なものなので、滅多に手に入らないが、ヴィムなら魔法でいくらでも生み出せる。


「さて、食べますかね」


 ヴィムの方おグラスにも氷を入れると、それを一口飲む。


「やっぱり冷たい方がうまいな」

「ですです」


 そんなことを喋りながら、串焼きを頬張った。

そして、あっという間にその二つを完食した。


 しかし、まだお腹には余裕がある。


「もう少しなんか露店をみるか」

「賛成です」


 二人はベンチから立ち上がって、再び露店の通りを歩こうとする。


「気づいたか?」

「はい」


 ヴィムとハナは異変を感じ取ったのであった。

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