第45話 異変
王都を出ると、今回の討伐の目的地へと向かう。
今回の目的地はラーディアという商業が盛んな街である。
王都からもそんなに遠くは無い。
順調に行けば今日の夕方か夜には到着することだろう。
ラーディア領にある雄大な森が討伐任務の目的地である。
「ヴィム様、討伐計画には目を通させていただけましたでしょうか?」
カミル騎士団長がヴィムに向かって言った。
「ええ、読ませていただきました。あれで問題ないかと」
討伐計画は一般的なものだった。
ヴィムたちが魔術師が物理攻撃が効かないスライムたちを攻撃する。
その間、通常の魔獣たちは騎士団で討伐するという流れである。
「承知しました。道中、何かありましたら私たちで対応いたしますので」
まあ、この世界は安全な所の方が少ないのだ。
街の中やきちんと舗装された道は警備兵が巡回しているので、まだ治安は守られている。
「何事もないといいんですけどね」
「それが理想ですね」
馬車はそのままゆっくりと進んでいく。
特に何事もなく、街を二つほど通過した。
比較的安全なルートを通っているというのもあるが、わざわざ騎士団の馬車を襲おうとするほど、盗賊も馬鹿では無いということである。
魔獣の類はいつ出現するか分からないが、そっちは警戒しておけばなんとかなるはずである。
「どうやら、今回は大丈夫そうですね」
目的地であるラーディア領に入るとヴィムは言った。
「そのようですね。やはり、あの噂は本当だったのか……?」
カミル騎士団長は顎に手を当てて、何かを考え込むような表情をしていた。
「あの噂というのは?」
「実は、魔獣の数が少なくなっているという報告も国の各所から上がってきているのです」
「それは、騎士団が少なくしているのではなくてですか?」
騎士団の討伐任務の主な理由は増えすぎた魔獣を間引きすることにある。
第6騎士団まであるレオリアの騎士団は国中の街を飛び回って任務に当たっているので、全体的に魔獣は減るはずなのである。
「ええ、ある所では魔獣が急増し、またある所では異常なほどに魔獣がいない。そんな状況なんですよ」
ヴィムの質問にアロン筆頭魔導士代理が答えた。
確かに、それはおかしな話である。
通常、魔獣は空気中にマナが存在する限りは無限に発生してくるものなのである。
それが発生しないとなると、この世界に何かしらの異変が起きているのかもしれない。
「それは変ですね。理由はわからないんですか?」
「それが全く分からないのです。騎士団も魔導士団もお手上げです」
カミル騎士団長は頭を抱えるように言った。
国のトップの機関が分からないというと、かなり難しい問題なのだろう。
「それ、私の方でも調べて構いませんか? そういうことに詳しい人なら知ってるので」
「ええ、それならぜひお願いしたい」
カミル騎士団長たちとそんな話をしているうちにラーディアの街に到着した。
そこは、商業の街と言われるだけのことはあり、随分と栄えている様子であった。
ヴィムたちが乗った馬車は街の大通りを抜けていくと、あるお屋敷の前で停車した。
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