第41話 報告と立ちはだかる敵

 翌日、午後になると王宮へと向かう。

屋敷から王宮の道のりは何度も歩いているので迷うことはない。


「お疲れ様です!」


 王宮の門番に勢いよ敬礼された。

王宮に何度か通っているうちに顔を覚えられてしまった。


「ご苦労さん」


 王宮の門を通り抜けると、そのまま入り口へと向かう。

すると、扉が開かれた。


「お待ちしておりました。陛下がお待ちになられております」

「ありがとうございます」


 王宮の従者に案内されて応接間に通される。

そこには相変わらず、豪華な調度品が並べられている。

ヴィムには価値は分からないが、おそらく高価な代物なんだろう。


「お待たせして申し訳ない」


 応接間でしばらく待っていると陛下が現れた。


「いえ、とんでもございません」


 ヴィムとハナはソファーから立ち上がった。


「まあ、座ってくれ」

「失礼します」


 陛下に促されて再びソファーに腰を下ろす。


「では、早速だが報告を聞かせてもらおうじゃないか」

「分かりました。報告をさせていただきます」


 ヴィムは座り直すと、報告を始める。


「まず、東の森がマナ濃度が著しく高騰しているのが魔獣の大量発生の原因だと思われます。その元凶となる魔物はすでに討伐しているので現在はマナ濃度が下がっています」


 ヴィムが確認したので、これでマナ濃度は低下し、魔獣も通常のレベルにまで落ちていることだろう。


「濃度が上がっていた時に発生した魔獣はあらかた片付けておきましたので心配ないかと」


 ヴィムの索敵魔法に引っかかった魔獣は大体倒して帰ってきた。


「そうか。ご苦労だったな。報酬はギルドの方から支払われる。他に何か変わったことは無かったか?」


 陛下がヴィムに尋ねた。


「そうですねぇ。帰り道に変な男たちに遭遇しましたが、そのくらいですかね」

「ほう。それはどんなヤツらだね?」

「バーロンの街と王都の中間地点あたりで人払いの結界を張っていて、それなりに身なりの良さそうんな服を着た男と野蛮な男って感じでしたかね」

「なるほど」

 

 陛下は顎の位置に手を当てて考え込んでいた。


「もしかすると、あれかもしれんな」


 しばらく考えこんだ後、陛下が口にした。


「何かお心当たりがあるんですか?」

「最近、人身売買の組織があるらしいんだ。うちの国でも問題になっているんだが、未だに実態が掴めていないのが現状だ」


 人身売買はレオリアの法律ではもちろん禁止されている。

それも、かなり重たい罪に当たるのだ。


 国ですらも実態を掴めていないとなると、組織はかなり大きなものだと感じる。

あの、人払いの結界もヴィムの前では無力だったが、それなりに高度なものであった。


「私の方でも探ってみましょうか?」


 ヴィムが陛下に向かって言った。

人身売買はヴィムとしても許せるものでは無かった。


「頼めるか?」

「もちろんです。私としても許せることではありませんから」

「すまんが何か情報が入ったら教えて欲しい」


 これから色んな街や国を旅する機会があるだろう。

そうしたら何か情報を掴むことができるかもしれない。


「分かりました。何か分かり次第、報告させて頂きます」


 これで陛下との話は一段落が付いた。

その時、再び応接間の扉が開かれた。


「お父様、お話は済まれましたでしょうか?」


 レオリアの王女であるエリンが入ってきた。

ヴィムが助けた相手でもある。


「おお、大丈夫だぞ」


 陛下はエリンを招き入れた。


「ご無沙汰しております。ヴィム様」

「お久しぶりだね。元気そうで何よりだよ」


 ヴィムは微笑みを浮かべながらいった。

相変わらず可愛いと思ってしまう自分がいた。

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