第34話 東の森
ヴィムはとハナは並んでソファーに座った。
「この度はわざわざご足労頂き、ありがとうございます」
「とんでもありません」
「では、今回の依頼についてご説明させて頂きます」
カミラ支部長が数枚の資料を机の上に置きながら言った。
「お願いします」
「まず、ここから数十分の所にある東の森で魔獣が大量発生しております。騎士団の方も頑張ってはくれているのですが、一向に減る見込みがありません」
騎士団が討伐に当たって、減る見込みが見えないということは、それなりにランクの高い魔獣が出現すると思われる。
しかも、この街は初心者の街とも呼ばれて、冒険者になりたての者が多い。
とてもじゃないが、初心者では太刀打ちできな無いような魔獣たちであろう。
初心者たちのために、定期的に騎士団が強力な魔獣を討伐していくのである。
「分かりました。できるだけのことはやってみます」
「ありがとうございます。Sランクの方のお手を煩わせてしまって申し訳ないです」
支部長は常に恐縮していた。
「いえ、そんなに気を使わなくても大丈夫ですから」
別のSランクだから偉いというわけでもないし、ここで俺が大きな態度を見せたら信用されなくなってしまうだろう。
冒険者というのは信用商売のようなところがある。
同じ報酬を支払うのであれば、信頼できる冒険者に頼みたくなるのは当然のことであろう。
「では、早速行って来ます」
「え、もうですか?」
支部長は少し驚いた表情を浮かべていた。
それもそうであろう。
普通は下準備を整えてから向かうものである。
「ええ、百聞は一見にしかず。自分の目で見ないと物事の本質は見えないと思いますので」
これは、ヴィムは常々大切にしていることである。
「そうですか。分かりました。余計な心配かもしれませんが、お気をつけて」
「ありがとうございます」
そこまで話すと、ヴィムとハナはギルド支部を後にした。
「さてと、やりますかぁ」
「はい!」
ハナの方も気合が入っている様子だった。
街を抜けて東の森へと向かう。
やはり思ったのは、初心者の装いをして冒険者が多いということだろうか。
ヴィムやハナのようなちゃんとした装備をしていると、目立ってしまうほどである。
街を抜けて数十分歩いて行くと、東の森に到着した。
「ここから油断せずに行くぞ」
「分かりました」
ヴィムは索敵魔法を展開すると、森に足を踏み入れた。
「すごいな……」
索敵魔法には次から次へと魔獣の反応があった。
少し歩いているだけにもかかわらず、早速一体目の魔獣が出現した。
それは、ヴィムの体より大きなトカゲのような魔獣だった。
「来やがったな」
「ここは私が」
そう言うと、ハナは剣を抜いた。
そのまま、間合いを一気に詰めると剣を振るった。
すると、トカゲの魔獣の首が切り落とされて、魔獣は絶命していた。
「さすがだな」
「ありがとうございます」
おそらく、今のスピードは常人では目で追うことすら不可能に近いだろう。
ハナの剣の腕は相当なものである。
「燃えろ」
ヴィムはその魔獣の亡骸を青白い炎で燃やして処理しておいた。
こんな魔獣の素材は大して役にも立たない。
できるだけ邪魔なものは道端に転がしておきたくはなかった。
「ヴィム様もさすがです」
「ありがとよ」
そう言うと、ヴィムたちは再び歩み始めた。
おそらくだが、ここまで魔獣が増えたのには何かしらの理由があるはずだ。
それを解決しないことにはこの問題は解決しないだろう。
その理由を探るのも今回の仕事だった。
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