第7話 迷宮脱出
あれから約1年が経過しようとしていた。
何が辛いというと、とにかく暇だということだ。
たまに魔獣の討伐をしているのだが、守護者を倒してしまったからか、魔獣も弱くなった気がする。
「やっぱり、暇つぶしには物足りないよなぁ」
ヴィムは生活に特に困っては居なかったが、暇からは逃れられなかった。
あれから分かったことは『不老不死』というのは特殊スキルに含まれるらしい。
その名の通り、体が老化しなくなり半永久的な生命が保障される。
それと同時に、飲まず食わずでも生きて行ける体になっているようだ。
これは、ヴィム自身が鑑定の魔法によって突き止めた事実である。
今日は一階層の出口付近まで来ていた。
「ん? これは……」
ヴィムは鑑定の魔法を発動させて出口付近に目を凝らした。
「やっぱりだ。結界が綻んで来ている」
魔術師長がかけた結界が1年の時を経て、わずかながら綻びができていた。
「これなら、突破できるかもしれないな」
この結界の綻びを利用すれば、結界を破壊することが可能かもしれない。
幸い、魔力は十分すぎるほどに残っている。
「やってみるか」
ヴィムは迷宮の入り口から少し距離を取った。
『焼き尽くせ』
ヴィムは結界の綻びを目印に炎の矢を複数展開して打ち込んだ。
「もう少しか」
『燃えろ』
今度は矢のスピードを上げて結界に向かって放つ。
すると、結界には日々がが入る。
その亀裂が徐々に大きくなっていき、結界が破壊された。
結界さえ破壊してしまえば後は簡単である。
ヴィムは閉ざされていた迷宮の扉を蹴り破った。
「久しぶりだな」
外に出ると、太陽の光で一瞬目が眩んだ。
約、1年ぶりの太陽の光である。
「ちょっと、考え深いものがあるな。さて、早速行動するか」
行動は一刻も早くしたい。
おそらく、結界が破壊されたことは遅かれ早かれ気づかれるだろう。
特に、結界を張った本人なら1番早く気づくはずだ。
なんというか、自分が張った結界が破られると体に違和感が走るのだ。
「この国とはおさらばだな」
ヴィムを幽閉した帝国なんぞに用はない。
ささっとこんな所からは出ていってやる。
「レオリア王国がここからだと近いな」
レオリア王国、完全実力主義の国である。
サイラス帝国とは違い、身分で差別されることがない国だと聞いていた。
本当にそんな夢物語のような国があるのかは分からないが、今はその情報を頼りにするしかない。
「行くか」
ヴィムはレオリア王国へと目的地を定めた。
この辺の地理情報は頭に叩き込まれている。
「久々に使ってみるか」
飛行魔法を展開する。
まず、空を飛ぶ魔法というのはまだ御伽噺の域を出ない術式である。
それをこんなにも簡単に使える魔術師は世界でも片手で数えられるだろう。
ヴィムは体を浮かせると、徐々にスピードと高度を上げ、レオリア王国へと向かうのであった。
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