第56話 最後の晩餐

弁当を一緒に食べるのは今日で終わりにすると決めた。美術の教科書に載っていたあの絵は確か最後の晩餐というタイトルが付けられていた。人があっちこっち向いていて真ん中の人物を見ており手も微妙に上げている。裏切者のユダを予言したイエスの絵だ。宗教画にしては他と雰囲気が違う。あまり見てないけど。12使徒と摂った最後の夕食はちゃんと味がしたのだろうか。ユダは銀貨の入った袋の前に座っておりそれを見て字が読めない人も裏切者だとわかる絵だったんだと思う。銀がなぜ裏切者だと分かるかというとたぶん食事を置いた銀の皿の色が変わると毒を盛ってることがわかるからだ。聖書ではイエスを連行したたあと銀貨30枚入った袋を受け取るらしいが

手で鉢に食べ物を浸した者が、わたしを裏切るはちょっと絵解きしにくかったのではないかと思う。食べ物を浸すとかそのまま描けばアヴァンギャルドな作風になる。テンペラ画は卵も使ってあるらしい。今日の弁当にゆで玉子はない。うずらの卵だった。テンペラ画は保存に向いていない。卵って腐るもんね。テンペラ画を描くときは時間に縛られなかったらしい。壁画なのでフレスコ画が一般的だった。現在は別の意味で存在が奇跡だと言われている。ワインや柑橘類を添えた魚料理がテーブルの上に載っている。弁当には魚が入ることもある。「野菜多いな」と結月に言われたこともあった。もっと肉を食べろということか弁当残してる人に言われたくない。今日私は結月を裏切る。声をかけてくれた可愛い子を裏切るのは気が引けたが結月のためだ。焼きそばを食べ口を拭くと質問されたことを思い出した。私に向かって血液型とか占いで後で見るんかと思うようなことを聞いてきた女子だな。ほぼO型で結月はB型だった。それでなぜ彼女が苦手なのかわかった。彼氏と同じ血液型だからだ。現代ならイエスは輸血されている。名探偵と近い血液型だからか嬉しそうに見えた。A型の人とは相性が悪い。何を考えてるかわからない誕生日より血液型にショックを受けていたので結月の誕生日を間違えた要因はこれだ。心がざわざわした何この運命の三角関係は。ドラマの設定かよ安っぽいなぁただし真ん中の私意外二人と接点がないので修羅場は見なくてすみそうだから救いがある。興味持たれる前に隠し通さなければ。最後なのに碌に楽しまずに昼食は終わった。「あのなぁO型って他の血液型に血貰われないんだって。他の血液型に血あげられるけど」怖いな君手術の予定でもあるのか。

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