チェック!
赤いガードが逃げた後、背後を振り返って黒髪の少年の方を見た。一人のガードを倒し、二人のガードに押されている。彼の装備している念動力は強力だが、持てる重量に制限があり、連続した戦闘には向かない。彼がいつも短期決戦を狙っていたのはそれが原因だ。
彼の装備していた“末期ガン”は使えば使うほど、死に近づくが、強力な力だ。だけど、彼はもうその力は使わないだろう。彼が今装備しているのは、この私(ホームレス)だ。
黒髪の少年の小さい体に、黄色の宝石をあしらった鞭が踊るように迫る。私は、小さい体を黒髪の少年とガードの間に滑り込ませる。そして、私の剣でしなる鞭を絡め取る。ガードはムチの動きを完全に封じられて一瞬の隙を見せた。
「今!」
黒髪の少年がこちらを振り向くことなく、剣で黄色の宝石のガードに斬りつける。続いて、一番大柄な透明な宝石を纏ったガードが私を巨大な両手剣で叩き潰そうとする。それを黒髪の少年が斜めから弾く。
「今だ!」
彼の合図とともに、私は剣で透明な宝石のガードの頭に叩きつけた。当然鈍重なアーマーで守られているが、突如眼前に剣が叩きつけられたら反射で人間は大きく怯んでしまう。
体勢を立て直した黄色の宝石のガードが、鞭をおおきく振りかぶる。同時に私と黒髪の少年を攻撃するつもりだろう。私は、小さい体を活かして、鞭の網の隙間を縫った。針の穴に糸を通すように、背後を取って、黄色のガードを羽交い締めにする。
「やって!」
黒髪の少年が思いっきり剣を振りかぶって、全身の力を込めた攻撃を叩きつけた。私は彼の攻撃の瞬間、ガードを少年の方向に蹴り飛ばした。アーマーが湾曲するほどの攻撃力で衝撃を食らったガードは痛みに悶絶して動かなくなった。
私と黒髪の少年は透明な宝石のガードの方を見る。頭の先から靴の裏までが夥しいほどの宝石に覆われている。まるで宝石が意思を持って人間のふりをしているみたいだ。両手剣はつかも唾もその刀身にも宝石が埋め込まれている。透明な宝石は、他のどんな宝石よりも美しかった。
鮮やかな色を持っているわけでもなく、綺麗な装飾を施されているわけでもない。ただ、他の全ての宝石よりも光を大きく反射しているのだ。宝石の内部に吸収された太陽光は、プリズムによって乱反射を繰り返し、その美を届ける。まるで太陽光さえもその宝石に隷属しているようだった。
私と黒髪の少年は少しだけ目を合わせると、お互い小さくうなずいた。そして、二人で同時に透明な宝石のガードに正面からぶつかった。私の剣がガードの右手の甲を舐める。少年の剣がガードの左脇腹をかすめる。私の横振りがガードの胴体の宝石を落とす。少年の斬撃がガードの左足を抉る。私の突きがガードの首を傷つける。少年の縦斬りがガードの左腕にダメージを与える。
私たちの攻撃は、お互いがお互いの隙を補い、庇い、補完しあった。徐々に徐々に息が合っていく。剣と剣は重なり、影を交え、一つになる。まるで一組の双剣のようだ。
私たちの連続攻撃は、呼吸も許さないほどの濃度で透明なガードを襲う。玉座の絨毯は綺麗な宝石で汚れていた。私の攻撃が一撃入るごとに、砕けた宝石がいびつな破片となって地面に寝転ぶ。少年の攻撃が一撃入るたびに、宝石の体は見る影も無い姿になって地面に落ちた。打ち上げられた花火のように儚く美しく、透明な宝石は砕けてしまった。
そして、王様のガードの中で最も強かったであろう透明な宝石のガードは、連続攻撃に圧倒されて何もできずに地面に沈んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます