たとえ仕組まれたものであったとしても
「よかった……」
トーイの熱が下がっているらしいのを感じて、俺は心底ホッとしていた。血のつながってない、しかも会ってから半月と経っていない赤の他人の子供に対してそこまで心配するとかおかしいと思う奴もいるかもしれないが、知るか! それはお前の感覚であって今の俺の感覚じゃない!
たとえ前世の自分自身の行いに対する罪悪感が基になってたとしても、これは今の俺の正直な気持ちだ。誰かにそう考えるように仕組まれたわけでもない。
……いや、たとえ仕組まれたものであったとしても、素直にそう思えるんだ。それでいいじゃないか。
たとえ、自分自身が、どこかの誰かが作ったゲームのキャラクターとかでしかないとしても、普段の自分がそれを感じ取れなければ、そんな事実はないのと同じだ。<運命>ってもんがあったとしても先にそれが分かっててどう足掻いても回避できないってのが分かりでもしなきゃ、やっぱりないのと同じだろ?
少なくとも俺はそう思う。
だから他の奴らが、
『血も繋がってない子供に真剣になれるのはおかしい!!』
と言ったところで、俺の知ったことじゃないんだよ。俺はトーイに生きててもらいたい。幸せになってもらいたい。そう考える自分自身に正直になってるだけだ。それにケチを付ける奴の言い草なんか、俺にとっちゃ糞の役にも立たねえよ。
偽善だ? 綺麗事だ? うるせえよ。自分じゃ何もしねえ奴がホザくんじゃねえ。<表現の自由><言論の自由>を盾にしてごちゃごちゃ言うのは勝手だが、それで他人を操れると思うなよ?
『自由には責任が伴う』
ってことも理解してないようなクソガキが……!
などと、別に今ここにはそんなことを言ってる奴はいないものの、でも、前世の俺なら確実に『血も繋がってない子供に真剣になれるのはおかしい!!』って考えるのが分かるから、その<前世の俺>に対しての話として、そう思う。
『血が繋がってる自分の子供さえ愛せないから、そんなことが言えるんだ』
ってな。しかも、
『自分とは血が繋がってない他人の子供だって、ちゃんとした生きた人間だ』
ってことも想像できないような馬鹿だったってのも思い知る。その程度のことも想像できないから、他人に対して攻撃的にもなれる。理不尽にもなれる。横柄にもなれる。
『自分の方が偉い』かどうかは関係ねえ。相手も、<どこかの誰かが生んだ子>なんだよ。自分と同じなんだ。そして、自分の子供と同じ。
自分の子供さえ大切にできねえから、他人の痛みすら想像できねえんだろ。
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