決して子供のためには
軽く昼食を済ますと、雨もすっかり上がってた。で、風呂を見たら、雨水がたまって溢れてる、そんなわけで、風呂を沸かすことにした。
湯を沸かしてる間は、リーネとトーイに庭の草刈りをしてもらう。最初に刈ってもらった時からしばらく経ったからまた生えてきてるんだ。
「トーイは、できるものだけむしってもらったらいい。無理はするな」
「……」
俺がそう言うと、黙って頷いてくれた。
まあさすがにまだ心を開いてはくれないか。焦らない焦らない。
リーネとトーイに、麓の村から回収してきた皮手袋を渡して、それで作業してもらう。また手を血まみれにされても気が滅入るしな。
「竈の周りはやらなくていい。近付くな」
と釘を刺しておく。
「はい!」
「……」
リーネが元気よく応え、トーイが頷く。危険なことをしてもらう時には俺の目の届くところでやってもらう。こうして俺は鉄を打ち、そして一区切りつくごとに外の様子を窺って、二人の無事を確かめる。
手間ではあるが、その手間を惜しんじゃ取り返しのつかないことになったりするからな。本当は、トーイみたいな小さい子からは目を離しちゃいけないと思う。リーネがいるからまだしも、子供に責任を負わせるのはきっとよくないんだろうな。
まあ、自動車とかは走ってない分、まだ安心できるが。それでも、できる限り俺も自分の目で確認した。この努力を怠って子供にもしものことがあったら、そりゃ親の責任だろう。<努力>だよ<努力>。好きだろ? <努力>。
そして<
もっとも、<サンダル>と言っても前世で百均でも売ってたような樹脂製のそれじゃなくて、木の板に、ツマミみたいなものを付けて、それを足の親指で挟んで履く、本当に『ちょっと履くだけ』のサンダルだ。風呂と家の間だけ履くためのを、三人分作る。
こうして日が暮れ始める頃には風呂も沸いて、また三人で入った。湯を沸かしてる間、何度も様子を窺ったが、トーイももう危ないことはしないでくれた。
俺にわざわざ逆らって何かしなきゃいけない理由が、今のトーイにはないからな。鉄を打った時にとんだ火花が手に当たって、
『熱いは痛い』
ってのも学んでくれたというのもあるかもしれない。こうやって大きな怪我にならない範囲でいろんな経験を積んで、いろんなことが分かっていくんだと思う、
『過度に干渉して何もやらせない』
ってのは、決して子供のためにはならないんだろうなって実感したよ。
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