かなりきついな……

トーイは、またウサギ肉のスープと果実しか食べなかった。


でも、それでいい。食べられるだけマシだ。これで何も口にしなかったらそれこそどうしていいのか分からなくてお手上げだっただろうけどな。


朝食を終えると、


「今日もまた、村までいろいろ回収に行くつもりだが、どうする? よかったらここで待っててもいいんだぞ……?」


トーイを一人残していくのは不安だったが、目的地が目的地だからな。母親の遺体がそのままになった場所になんか行きたくないと思っても無理はないだろうし。


しかし、トーイは、俺と一緒に行く準備を整えて荷車の脇に立っていたリーネのところに行って、彼女の服の袖を掴んだ。


「私も行くけど、いいの? 一緒に行く?」


「……」


リーネが問い掛けると、トーイは小さく頷いた。一人にされるのは嫌だということか。どうやらリーネには懐いてくれたようだ。なら、リーネを通じて支えればいいだろう。


「分かった。トーイはリーネと一緒にいればいい」


そう言って、トーイは荷車に乗せて、俺とリーネは歩いて集落へと向かった。だが……


「これは……かなりきついな……」


まだ半分くらいしか下ってないのに、腐敗臭が立ち上ってくる。しかも、ハエが目に付くようになってきた気がする。現場は大変なことになってそうだな……




「……」


で、集落に辿り着くと、予感通りの有様に俺は言葉を失っていた。べっとりとした印象のある臭気。飛び交うハエの大群。前世の俺ならそれこそこの場で吐いて腰を抜かしててもおかしくないような<地獄>がそこにあった。


漫画やアニメならここまでの描写はしないでいてくれるかもしれないが、現実ってやつは本当に容赦ない。それでも、死体も死臭も屍肉にたかるハエも、ここまでじゃなくても割と身近な世界に生きてきただけあって、何とか耐えられていた。


リーネも、手で鼻と口を押えて顔をしかめてるものの、怯えてる様子はない。彼女も、住んでた村で死んだ人間の処置とかやらされたクチだな、これは。まあ、死体が怖けりゃ昨日の時点で俺と一緒に来てないか。


他の火事場泥棒や逃げ出した奴らの姿は見えないが、長居は無用だ。


だから、昨日来た時に当たりを付けていた、倉庫らしき建物へと向かう。それも半分焼けて倒壊していたが、燃え残った部分があったからな。昨日回収した<斧>で傾いた壁を叩き壊して、中を覗くと、


「よっしゃ! ビンゴ!!」


明らかに小麦を入れておく袋が見えた。


「小麦だ! 運び出すぞ!!」


「はい…」


俺が斧で壁をさらに壊しつつ声を掛けると、リーネがしっかりと返事をしてくれたのだった。


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