第243話 今日は一日いい天気らしい③
左手に荷物を持ち、右手はミミちゃんと手をつないで、公園までの道をのんびり歩く。
「まさに運動日和だね! よ~し、久しぶりに思いっきり体を動かすぞ~!」
青い空に白い雲、ほどよく涼しさを感じさせてくれる爽やかな風。
こうして外を歩いているだけで、晴れやかな気分になってくる。
「こんなに天気がいいと、歩いているだけで晴れやかな気分になりますね」
「あっ、いまちょうど同じこと思ってた!」
同じ感想を抱いたことが嬉しくて、つないだ手をブンブンと振って喜びを表す。
近所に住む人たちはすでに通勤や通学を終えた後らしく、周囲に人はいない。
公園に着いても人影は見当たらず、あたしとミミちゃんの貸し切り状態となっていた。
「ここまで人がいないなら、裸で走り回ってもバレないんじゃないかな?」
「絶対にやめてくださいね」
「あははっ、もちろん冗談だよ~。でも、ミミちゃんが野外であたしの裸を見たいって言うなら、その時は恥ずかしいのを我慢して産まれたままの姿をさらけ出すよ。覚悟は決まってるから、見たくなったらいつでも言ってね!」
「そんな覚悟は決めなくていいです」
「じゃあ、お姫様抱っこは?」
騒ぐわけじゃないから近所迷惑にはならないし、もし急に人が来たとしても驚かせてしまうことはないはず。
野外で裸になることと比べたら、ハードルなんて無いに等しい。
「お、お姫様抱っこ……」
小さくつぶやく声からは、少なからず興味を持ってそうな雰囲気が滲み出ている。
「お姫様抱っこ、する?」
「……はい」
ミミちゃんはわずかに悩んだ後、ハッキリとうなずいた。
「お姫様抱っこ、したいですっ」
「えっ? したい? されたいじゃなくて?」
ミミちゃんをかっこよく抱き上げるイメトレを済ませ、さりげなくおっぱいを揉ませてもらおうという下心も抱いていた中、本人から告げられた言葉はあたしの想定と正反対のものだった。
「はいっ。たまにはかっこいいところを見てほしいですから」
「ミミちゃんはいつでも最高にかわいくてかっこよくて世界一素敵な人だけど……せっかくだから、お言葉に甘えてお姫様抱っこしてもらおうかな」
「さりげなく褒めないでください。嬉しくてニヤニヤしちゃうじゃないですか」
言葉通りミミちゃんの表情は緩み、頬がほんのり赤くなっている。
あたしたちはいったん足を止め、近くに荷物を置いた。
そして、あたしの体はミミちゃんによって地面から離れる。
「な、なんか、急にドキドキしてきた」
お姫様抱っこはこれが初めてじゃないけど、キスと同じように回数を重ねても色褪せない魅力がある。
「なにがあっても落としませんから、安心してくださいね」
「うんっ、信じてるよ」
実際にいままで一度も落とされたことがないし、仮にその実績がなかったとしても、ミミちゃんへの信頼は揺るがない。
人目がないのをいいことに、あたしたちは公園の遊歩道でお姫様抱っこという滅多にないシチュエーションを満喫する。
途中で何回もキスしそうになったけど、一度してしまうと歯止めが利かなくなりそうだったから二人とも頑張って我慢した。
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