第219話 備えあれば憂いなし②

 水を箱買いしようという話になり、あたしとミミちゃんは真っ先に飲料コーナーへと足を運んだ。

 カートの下部に置いたカゴをミミちゃんが持ち、空いた場所に天然水の箱を載せる。


「そう言えば、防災グッズってあんまり買ってなかったよね」


 もともと買う予定だったハンドソープの詰め替えを求めて通路を歩いていると、ふと防災グッズの特設コーナーが視界に入った。

 気になって足を運び、立ち止まって視線を巡らせる。

 簡易トイレやライター、懐中電灯や乾電池などなど、非常時に役立つアイテムが軒並み揃っている。


「あっ、非常食も売ってる」


「最近のホームセンターって本当になんでも揃ってますね」


 ミミちゃんの言葉に、あたしはうんうんとうなずく。

 防災グッズに限らず、年々商品の種類が豊富になっている気がする。


「こういうのあると、いざという時に便利だよね」


「これも非常時に役立ちますよ」


 二人でじっくり吟味して、今日のところは様々な防災グッズがセットになっている防災バッグを二つと、普段から時計やマウスにも使う乾電池をカゴに入れた。

 そして、この時点でカートのキャパが限界に達する。

 下部は水の箱が占領し、上部のカゴには決して小さくない防災バッグが二つ。

 予定外の買い物ではあるけど、買っておいて絶対に損はしない。


「それじゃ、次は予定通りハンドソープを探しに行こ~」


 あたしたちは防災コーナーを離れ、ハンドソープの詰め替え、歯磨き粉、サランラップ、アルミホイルなどの事前に決めていた商品を次々とカゴに入れていく。


「カゴ重くない? あたしが持とうか?」


「大丈夫ですよ、そんなに重い物は入ってないですから。まだまだ余裕です」


 言葉通り余裕の笑みを浮かべるミミちゃん。

 頼もしさを感じさせる表情でありつつ、尋常じゃない愛らしさも兼ね備えている。


「はぁ……いつものことながら、かわいすぎて理性を保つのが大変だよ」


 あまりのかわいさに、思わずため息を漏らしてしまう。


「かわっ、えっ? あっ、ありがとうございます」


 照れて真っ赤になった顔もまたかわいい。

 そんなかわいいミミちゃんの様子を堪能しながら、カゴに入れ忘れた物がないかチェックしてセルフレジへと向かった。

 しっかりポイントカードをスキャンしてから会計を行い、お父さんに連絡。

 ふと漂ってきた甘い匂いに誘われて入口の方へ歩いてみると、ベビーカステラが売っていて気付いたら買っていた。

 お父さんと合流してから駐車場へ行き、ホームセンターを後にする。


「出来たてだから、まだあったかいよ。はい、あ~ん」


「あーん……んんっ、おいしいですっ」


 来る時と同じく、帰りの車内でもおやつを食べさせ合ってイチャイチャするあたしたち。

 その後、運転や荷物運びのお礼としてお父さんに晩ごはんを作ることになったものの、食事中の会話は九割近くあたしたちののろけ話を聞かせることになってしまった。

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