第217話 雨の日の運動④
次の種目はスクワット。前に挑戦した時は十回でもけっこうキツかったけど、ギブアップはしなかった。
布団でゴロゴロしながらミミちゃんと触れ合ったりマッサージで筋肉をほぐしたりした後だから、コンディションは万全の状態で始められる。
まだ下半身を使う筋トレはしてないし、まぁなんとかなるはず……。
なんてことを考えていると逆に失敗しそうな気がしてきたので、あたしは自分の頬を軽く叩いて気合を入れつつ立ち上がった。
「ミミちゃん、スクワットは先にやらせて!」
唐突に上がった熱量にキョトンとしつつ、ミミちゃんは「分かりました」とうなずいてくれた。
少し離れたところに移動したミミちゃんを正面に見据え、スクワットを行うための姿勢を取る。
足を肩幅に開き、手は頭の後ろへ。
「いーち」
ミミちゃんのカウントに合わせて腰を落とし、膝が爪先より前に出るか出ないかというところで元の姿勢に戻っていく。
背筋を伸ばして、お腹に力を入れて、正しいフォームを意識して行う。
「に、にーい」
「ん?」
ミミちゃんが動揺しているというか、なんか気まずそうな顔をしている。
もしかして、無意識に変顔しちゃってた?
「さー、ん」
なにやらミミちゃんの顔が赤い。
体調が悪いわけじゃなさそうだけど……気になる。
でも、まずは最後まできっちりやり遂げよう。
「――ん~、太ももに効いてる気がするっ」
きちんとフォームや呼吸を意識しながら無事に十回を達成し、その場に座り込んで心拍を落ち着かせる。
自宅なのをいいことに、脚を大きく開いてスカートの裾をつまんでパタパタ扇ぐ。
熱を持った太ももに風が当たり、なんとも心地いい。
ミミちゃんの位置からはパンツが丸見えになっているから、気を遣って視線を逸らしてくれている。
気にしなくていいのに。むしろ見てほしい。
あたしにも羞恥心はあるけど、ミミちゃんにパンツを見られるのは恥ずかしさよりも嬉しさが勝る。
「ところでミミちゃん、さっき様子が変だったけどなにかあったの?」
「えっと、ユニコちゃんが腰を下ろすたびに、その……ぱ、パンツが、チラチラ見えちゃってて……」
「えっ!? でも、そっか、そうだよね。スカート穿いてスクワットやったら、見えちゃうよね」
理由を聞いて、すべてに納得がいった。
ミミちゃんにはいままでパンツどころか体の隅々まで数え切れないぐらいに見られているけど、気付かないうちにパンツを見られていたと思うと、なんか不思議な照れ臭さがあるというか……もっと見てほしいとさえ思いつつも、顔が勝手に熱を帯びていく。
「よかったら、近くで見る? なんなら脱ごっか?」
照れ隠しでけっこう大胆なことを言ってしまった。
「ひぁっ!?」
突飛な提案に驚き、ミミちゃんの体がビクンッと跳ねる。
「あっ、でも汗かいてるからあんまり近付かない方がいいかもっ。臭かったら申し訳ないし!」
スカートで扇いだとは言っても、スクワットの直後で蒸れてしまっている。
まだミミちゃんの返答はないけど、忠告しておいて損はない。
「ユニコちゃんは汗をかいてても臭くないですよっ。臭いどころか、ドキドキしちゃうというか、エッチな気分になってしまうというか――いっ、いまのは忘れてください!」
勢い余って、ミミちゃんからもなかなか大胆な発言が飛び出た。
当然、いくらミミちゃんの頼みだろうと忘れることはできない。
「ミミちゃん、今日の主旨は運動だったよね?」
「は、はい、そうですね」
「まだミミちゃんがスクワットやってないけど、別の種目に変えてもいい?」
「いいですけど、別の種目って……?」
話題が急に変わったものの、内容から卑猥さが消えたことでミミちゃんが落ち着きを取り戻す。
でも、ごめん。
先に頭の中で謝ってから、あたしはミミちゃんを動揺させてしまうであろう提案を口にする。
「ここまでは交代しながら筋トレしてきたけど、そろそろ二人で一緒に運動しようよ。ほら、ちょうど布団も敷いてるわけだし」
あたしは誘惑するような微笑みを浮かべ、布団をポンと叩いた。
いまの言葉がなにを意味するのか、それはミミちゃんにしっかりと伝わっている。
「っ!?」
ミミちゃんの顔が再び赤くなり、驚いた様子で瞬きを繰り返す。
そして深呼吸を一回挟むと、こちらに歩み寄り、そのままあたしを優しく押し倒した。
「明日はきっと、筋肉痛になっちゃうね」
筋トレから急遽変更して始めた運動は、夜遅くまで続いた。
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