第183話 歩数より多いかもしれない
ある日の夜、配信を終えてリビングに顔を出すとミミちゃんがソファでくつろいでいた。
光に引き寄せられる虫のように、あるいは磁力に導かれるように、あたしは自然とミミちゃんのところへ足を運ぶ。
「ミミちゃんっ」
隣に座る直前でピタッと立ち止まって名前を呼び、少し身を屈めて顔をミミちゃんに近付ける。
そして鼻息がかかる距離にまで接近すると、かわいらしいぷるんとした唇に自分の唇をそっと重ねた。
「んっ……ちゅっ……ちゅっ」
あいさつ代わりの一回では済まず、二回三回とキスを続ける。
回数を忘れて夢中になり、最後に舌を絡めた濃厚なキスをじっくりと堪能してからミミちゃんの隣に腰を下ろした。
リビングはエアコンのおかげで快適な室温が保たれているけど、あたしの体はキスによる興奮で火照っている。
それとなくミミちゃんの方へ体を寄せて腕と腕をピタッとくっつけてみると、予想通りミミちゃんもあたしと同じように体温が上がっていた。
「あたしたち、この夏だけで何回ぐらいキスしたのかな? たくさんしたよね~」
一緒に暮らす前から、それこそ子どもの頃から頻繁にキスしていたけど、今年は特に多かった。
やっぱり、同棲を始めたことが大きな要因と言える。
日頃からそれなりに歩いていることを踏まえて考えても、あたしとミミちゃんがキスをした回数は歩数より多い。
「数え切れないぐらいしましたよね。これからも、もっともっとするつもりですけど」
こちらを向いて照れながらそう言うミミちゃんがかわいくて、思わず体が動いて十数秒ぶりのキスを強行してしまった。
「これでまた一回増えたねっ。今日だけでも、もう――」
言い終わる前の言葉が、ミミちゃんからのキスによって遮られる。
しかも、キスする際に抱き寄せられてしまった。
積極的な行動にドキドキしていると、密着したミミちゃんの胸からも同じように速くなった心臓の鼓動が伝わってくる。
「強引なミミちゃんもかわいいな~」
「わたしだって、たまにはユニコちゃんをリードしたいですから」
勢いに乗っているのか、ミミちゃんがいつになく大胆だ。
二人ともこの後は配信の予定がなく、時間が空いている。
とはいえソファの上だし、そこまでエッチなことはしないと思う。
***
あれから数時間が経ち、現在あたしとミミちゃんは仲よくお風呂に入っている。
結論から言うと、あたしの予想は大きく外れた。
ソファにはシミができたけど、まぁそれも思い出ということで。
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