第166話 夏っぽい企画に向けて①
八月末に、夏の締めくくりとしてメンバー全員参加の企画が予定されている。
簡潔に言うとプールで遊んでいるところを配信するだけなんだけど、お風呂配信に近い需要があるんじゃないかということで話が決まった。
ちなみに、あたしが提案した『エッチなようでエッチじゃない我慢比べ大会』はネーミング・内容共にギリギリということで運営さんにやんわりと断られた。今度は小さな子供が視聴する可能性も考慮しつつ案を練ってみよう。
「ミミちゃん、水着持って行くの?」
ミミちゃんのベッドに寝転がりながら、タンスの前にいるミミちゃんに声をかけた。
今日はこれから企画の下見も兼ねて会社のプールで遊ぶ。
朝から向かうのはあたしとミミちゃんの二人だけど、最終的には全員が集まることになっている。
「当たり前ですよ」
即答だった。
貸し出し用の水着は紐かスク水の二択なので、意外だとは思わない。
すでに準備を終えてバッグを玄関に置いてきたあたしも、自分の水着をきっちりと用意してある。
「ん~、いい匂い」
姿勢を変えてうつ伏せになり、枕に顔を埋める。
よだれを垂らさないように気を付けつつ、深呼吸を繰り返して香りを楽しむ。
「そ、そんなに思いっきり嗅がないでください」
慌てて駆け寄ってきたミミちゃんにひっくり返され、あたしは一瞬にして仰向けの状態に。
「遅くなってすみません。準備できましたから、行きま――」
話している最中のミミちゃんを抱き寄せ、おもむろにキスをする。
特に理由はなく、気付いたら体が動いていた。
重なった唇の隙間をかき分けるように舌を伸ばすと、それに応じてミミちゃんが舌を絡めてくれる。
いきなりキスした瞬間はさすがに少し驚いていたものの、すでに動揺の色は見えない。
「んっ、ちゅっ……ぁんっ」
あたしたちはベッドの上で熱い抱擁を交わしながら、身も心も蕩けてしまいそうなほど濃厚な口付けに没頭する。
そして、偶然にも同じタイミングで手が動き、お互いに相手の下腹部へと向かわせた。
平時よりもわずかに湿度が増した下着の内側へと手を滑り込ませ、指先が敏感なところに軽く触れた瞬間――
「……っ!」
お互いにハッとなって手を止め、慌ててキスも中断する。
「危ない危ない、ちょっとだけキスしたらやめるつもりだったのに」
「うっかり夢中になってしまいましたね」
まだ時間に余裕があるとはいえ、あのまま続けていたら気付けば夜という可能性すらある。
快感がとんでもなく強かったおかげで、逆に冷静さを取り戻すきっかけとなってくれた。
続きは帰ってから思う存分やるとしよう。
「下着を替えて、プールに行きましょうか」
「うんっ」
あたしは自分の部屋に戻り、適当に選んだパンツを持って脱衣所で再びミミちゃんと合流。
ムラムラした気分を体の奥底へと追いやりつつ着替えを済ませ、満を持して家を後にした。
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