第163話 ギリギリ健全かもしれない我慢比べ①
「はいっ、ということで! 今回はミミちゃんと我慢比べをしていくよ~!」
あたしは自室のベッドに腰かけ、マイクもなにも入っていない状態で意気揚々と宣言した。
うっかり配信開始していなかったり、マイクがミュートのままだったり、そういう類のミスではない。
今日はあたし考案の変則的我慢比べを配信の企画として使えるか否か、これからミミちゃんと二人で人知れず試す予定だ。
どうせなら本番のつもりでやろうと思って、配信しているつもりで先ほどのあいさつを口にした。
「大まかにルール確認しつつ、実際にやってみよ~!」
ベッドの近くに持ってきたローテーブルには、暫定的なルールを書いたコピー用紙が置かれている。
「好きな場所を触ったり舐めたりして、どれだけ我慢できるか競うゲーム……配信で企画としてやる場合は、舐めるのは無しで触るだけなんですよね?」
「うんっ。いまは二人きりだからいいけど、さすがに配信でコラボ相手の体を舐めるのはいろいろとマズいからね」
では、なぜ今回は無しにしなかったのか。
可能な限り本番に近付けるべきではないのか。
客観的に考えれば、そういった意見も挙げられる。
ただ、まぁ……性欲に抗うのって難しいよね。
「相手の体の一部を指定して、制限時間が許す限り攻めまくる。大きな声を出したら、その時点で負け……」
「そこにも書いてあるけど、乳首とアソコは禁止だよ~」
理由はいくつかあるけど、そもそも好きな人に性感帯を刺激されて我慢できるわけがない。
ゲームで例えるならチート。勝負として成り立たせるために、禁じ手とすることにした。
「あっ、そうだ。本番は漏れた声の大きさで判定するけど、今回はイったら負けってことにする? もしくは、一定以上濡れちゃったら負けとか」
言いもって隣に視線を向けると、横からでも分かるぐらいミミちゃんの顔が真っ赤になっていた。
普段しているエッチなことに比べれば生易しいぐらいなのに、これぐらいで照れてしまうミミちゃんもすごくかわいい。
「冗談はさておき、とりあえず一戦やってみよう! 先攻後攻はじゃんけんで決めるよ~!」
「は、はいっ」
「さいしょはグー、じゃんけん――」
「「ぽんっ」」
あたしはチョキ、ミミちゃんはパーを出した。
一戦目はあたしの先攻。あたしはミミちゃんに声を出させれば勝ち、ミミちゃんは声を我慢できれば勝ち。
「それじゃあミミちゃん、仰向けに寝転んでねっ」
「了解です」
言われた通り、ミミちゃんはベッドに横たわった。
あたしはベッドから降りて床に膝をつき、攻めるための体勢を整える。
ミミちゃんから向けられる視線には、緊張と不安が入り混じっている。
「次は、攻める場所を宣言するよ~」
配信でやるならここでドラムロールを数秒ほど流した方がよさそうだと思いつつ、深呼吸で間を空けてから続きを言う。
「――おへそ!」
「お、おへそ、ですか」
耐える自信がないのか、不安の色が濃くなる。
それでもミミちゃんは覚悟を決め、「分かりましたっ」と言いながら服をたくし上げた。
シャツに覆われていたすべすべのお腹があらわになり、かわいらしいおへそが顔を出す。
「制限時間は三分、スマホのキッチンタイマーでしっかり測るからね!」
二人とも平等に残り時間を確認できるよう、あたしはタイマーをセットしたスマホを枕の近くに置く。
いよいよ準備が整い、「スタート!」と口で言うのと同時にタイマーのカウントを開始させた。
「まずは指でなぞっちゃおうかな~」
おへその周囲を人差し指の先っぽで円を描くようになぞると、お腹にグッと力が込められたのが分かった。
「じゃあ、次は……」
あたしは顔をお腹に近付け、舌を伸ばす。
先ほど指でしたように、今度は同じ場所を舌でなぞっていく。
ミミちゃんの息遣いが荒くなる。
唇を固く結び、両手はシーツをギュッと握りしめ、必死に声を堪えているのが見て取れた。
残り時間は二分弱。この調子なら、同じ攻め方を繰り返すだけでも勝てるかもしれない。
だけど、ここは全力を尽くす!
「ちゅっ、ちゅっ」
指でなぞり、舌でなぞり、今度はおへそにキスをした。
一回、二回と続けたら、間髪入れずに再び舌を這わせる。
堪えるために強く擦り合わせられた太ももの間から、甘く淫靡な香りが漂ってきた。
残り時間は三十秒。ラストスパートをかけるとしよう。
「んっ」
満を持して、あたしはおへそのくぼみに舌先を触れさせた。
わざと音を立てるようにしながら、小さなおへそを丹念に舐め回す。
「~~~~~~っ!」
残り時間一秒のところで、部屋にミミちゃんの嬌声が響き渡る。
続けてミミちゃんが攻める番――といきたいところだけど、ミミちゃんの息が整うまで、少し休憩を挟むことにした。
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