第32話 えー、やだ、また垂れてきた
9月中旬、去年の今頃はナオさんに好意を持ちつつも、何か具体的な行動に移すでもなく、二人で出た出張中にナオさんの気まぐれでセックスするだけだった。俺の誕生日に何かご褒美やプレゼントでもくれるかと期待をしていたのだが、何もなく。「俺、誕生日なんです」とナオさんに伝えても、「ふーん、おめでとう」と、素っ気ない対応だったことを思い出す。
しかし、今年は違う。ナオさんの力の入りようがスゴイ。自分の誕生日にプロポーズをしてもらって、思いのほか早く婚活を終える事ができたのが嬉しかったのだろう。俺の誕生日も特別な日にしたいとのことだ。例の『記念日』のことである。10月半ばにフォトウェディング、11月上旬に新婚旅行なので、「仮に今すぐに妊娠しても、つわりやお腹が大きくなるのは2~3か月後だから、ドレスや旅行に影響はないでしょ」、「ユウジ君の誕生日9月19日を記念日にしよう」というのがナオさんの意見である。ナオさんは1日でも早く子供が欲しいようだ。「女として生きている以上、妊娠、出産、子育てを経験してみたい」と前から言っていたし、自分の年齢の事もあるだろう。俺の母親に嫌味を言われたことも気にしているのかもしれない。
俺としては、もう記念日を断る理由がない。これまでマリッジブルーがあったのは確かだ。「本当に半田ナオで良いのか」をずっと自問してきた。コウジの彼女ハツネさんのように、若くて可愛い女、従順で支えてくれる女、上品で穏やかな女じゃなくても良いのか?と。最初はナオさんと結婚して、仮に上手くいかなければ離婚すればいい。子供がいなければダメージも小さいだろうと思っていた。だからプロポーズの後もすぐに「記念日」をせず、これを正当化するために式や旅行を理由にしてきたが、そろそろ限界である。後はいつ“できる”か天に委ねるしかない。俺の本音は、子を授かるのはもう少し後でも良いと思っている。
ナオさんからは誕生日にアニバーサリー休暇を取得し、一日空けておくようにと指示があった。
ナオさんは仕事に行き、仕事後にナオさんが予約を取ってくれたレストラン「マルゼルブ」で合流である。初の海外となるパリへの新婚旅行を楽しみにしてくれているのか、フレンチらしい。フランスに渡り修行してきたという30代のシェフが腕を振るってくれて、デザートまで美味しくいただくことができた。
今日を記念日にするとナオさんと予め決めていたので、「お腹いっぱいだし今晩はすぐに寝ようか」となるはずがなく。いつもどおりナオさん、俺の順でシャワーを浴び、準備をする。ナオさんは全裸かと思っていたらパジャマ姿だ。
「ユウジ君、ここに座って。」ナオさんはベッドの上で正座し、自分の前に座る様に手で招かれる。
「はい。」俺もベッドに上がり、ナオさんと向かい合う形で正座する。俺はTシャツにトランクス姿だ。
「へへへ、何か照れるね。緊張もする。」
「いつもどおりで良いんですよ。」
「うん。…私ね、これまで一人で出来る事は何でもやってきたし、一人で手に入るものは何でも手に入れてきた。でも、キスや結婚は一人じゃできないし、いくらお金があっても婚約指輪や子供は手に入らなかった。ユウジ君が私に結婚しようって言ってくれたおかげで世界が広がったよ。ありがとう。」
「でも、私はこれからも、仕事での成功も、お金も、子供も、幸せな家庭も、ぜーーーんぶ欲しいの。だからユウジ君を私にちょうだい。必ず幸せにする。後悔させないから。」
「俺がプロポーズした夜の話をちゃんと聞いていましたか?幸せにするとか、後悔させないとかは俺の方のセリフです。」
「ふふふ、そうだったね。…じゃあ、誕生日おめでとう。これからもよろしくね。」
「ありがとうございます。」
ナオさんはベッドの上で立ち上がり、厳かな儀式の巫女のように仰々しくパジャマを脱いでいく。パジャマの下は、ナオさんが出丸百貨店でランジェリーフィッティングをして買ったあの下着だ。白地に暖色系の花柄があしらわれ、上品で綺麗だ。胸が普段より高くなり、谷間も深くなっている。あのお披露目の後も2~3度この下着を着けてくれたが、ナオさんの勝負下着の1つだ。
「ナオさん、綺麗です。」
「いつも褒めてくれてありがとう。…さあ、始めましょ。」ナオさんは俺に軽くキスをした後、ベッドに寝ころんだ。俺も急いで全裸になりナオさんの横に寝そべる。今日はゴムを着けない。
「いきなり注文つけて悪いけど、今日はキスしたいからお互いにアソコを舐めるのは無しにしようね。」
「分かりました。」俺はナオさんにキスをしながら、ブラ越しに優しく胸を触る。いつもより胸の弾力が強い。
「嬉しい。…ユウジ君だけだよ。私にちゃんとキスをして抱いてくれたのは。」
「俺も『美声のプレゼン女王』のお口にキスを許していただいて嬉しいです。」今日は俺からナオさんに舌を入れると、すぐにナオさんの舌が絡まってきた。温かい吐息を感じる。
ディープキスの後は、唾液で下着を汚さないように注意しながらブラを着けたままの胸、鎖骨や首筋に舌を這わせる。手を下に伸ばしてショーツ越しにナオさんのアソコもソフトに撫でることも忘れない。
しばらくナオさんは仰向けのまま静かに感じ入っていたが、「私にも舐めさせて」と体を起こし、俺と上下の体勢を入れ替えて攻守交替である。ナオさんは俺の胸に顔を乗せ、自分で背中に手を回しホックを外して、ブラを取った。そのまま俺の胸や首や顔の辺りでクンクンと匂いを嗅ぎながらソフトなキスをしてくれる。しばらく匂いを楽しんだ後は俺の乳首を舐めたり吸ったりして気持ちよくしてくれた。もう俺は完全勃起である。
「ふふふ、すごい。ユウジ君のチンチンが勃って、透明のヌメヌメも出てきたよ。」ナオさんが笑いながら皮を剥いて、窮屈そうだった亀頭を開放してくれた。
「ナオさん。入れたいです。」俺も上半身を起こしてナオさんに伝える。
「うん。お願い。」
ナオさんの足の方へ移り、ショーツをゆっくり脱がせる。
「いっぱい濡れてますね。早くに脱がせればよかった。」
「今日は特別な日だから、仕方ないよ。へへへ。」ナオさんは股をゆっくり開き正常位で受け入れる体勢になってくれた。
「私の初めてをあげるんだから、心して味わいなさい。」
「俺も生でするの初めてですけど、ありがとうございます。」二人とも笑いがこぼれた。
モノをナオさんのアソコにあてがい、ゆっくり入れていく。俺の我慢汁とナオさんの愛液で十分濡れていて、引っ掛かりや摩擦をほぼ感じることなく入れることができた。動かすのもゆっくり大きく動かしていく。
「気持ちいいわよ。…ユウジ君、好き。」
「俺もナオのことが好きだよ。」ナオさんの体内のトロトロの感触を亀頭でダイレクトに感じることができて普段よりも気持ち良い。また、肌の表面体温よりも亀頭で感じる体内の体温の方が温かく感じる。ナオさんもいつもとは違う何かを感じているのかなと思っていると、ナオさんは「イキそう」と言って体内がギューーーっと締まり、腰が痙攣して先に果ててしまった。俺もその柔らかい圧迫でスパートがかかり、ナオさんに遅れて1~2分後にイクことができた。ナオさんの中の出来るだけ奥で射精し、モノが中で脈打つ。
「ユウジ君もイったね。いつもと感覚が違った?」ナオさんが上半身を起こしながら気遣ってくれる。
「いつも気持ちいいですけど、今回はナオさんのトロトロの感触が最高でした。」
「ふふふ。私の“初めて”をもらってくれてありがとう。遊びや性処理じゃなくて、ちゃんと妻として恋人として、ユウジ君と記念日をすることができて良かったよ。「子供が欲しい」って思いながら初めてエッチすることができて、なんかやっと一人前の、大人の女性として認めてもらえた気がする。」
「俺もナオさんにプロポーズして、ちゃんとケジメをつけて記念日をすることができて良かったです。俺達の子供、楽しみですね。」
「任せなさい。ちゃんと元気な子供を産んであげるから。」親指を立ててポーズを決めている。
ナオさんから射精を終えて縮んだモノを抜くと、ナオさんのアソコから恥ずかしい液体がこぼれ出てくる。向かい合って座ったまま二人ともナオさんのアソコに目が行く。
「うわー、精子が出てきた。…えっと、これ中に戻した方が良いの?」
「そんなことしなくても大丈夫ですよ。たぶん。」
「ホントに?拭き取っても精子残ってる?」
「届く限り奥で出しましたし、きっとナオさんの体内にもっと残っていますよ。アソコから出てきている量も少ないでしょ。」
「確かにそうか。いつもゴムに出てる量と比べたら、こんなに少ないわけないもんね。」ナオさんはやっと納得したのか、座ったままティッシュで拭いて後始末を始めた。俺も自分のモノや内股を拭き取る。
ナオさんが立ち上がり、キッチンで水分補給をして、シャワーを浴びようと歩いていると。「えー、やだ、また垂れてきた」と言って立ち止まり、お股を確認している。太ももの内側に精液が垂れてきたようだ。俺はティッシュを箱ごと持ってナオさんの元へ行き、渡す。
「ユウジ君、すごいわね。いつもこんなに出してくれてたんだね。」
「あんまり自覚は無いんですけど。」
「この分だとあっという間に子供が出来るかもしれないね。ははは。」
二人とも交代でシャワーを浴び直し、ベッドで眠る。このセミダブルのベッドも新居に引越たらお別れだ。新居では、新しく同じシングルベッドを2つ購入して、並べて寝室に置く予定だ。
「実はさぁ、シャワー浴びている間も少しずつ垂れてきたんだ。せっかくいっぱいもらったのに、全部出ちゃったかも。…エッチの後って、あんまりすぐに立ち上がったり、歩いたりしない方が良いのかもしれないね。」
「そんなに気にしなくても大丈夫じゃないですか。ほんの一滴、ナオさんの体内に残っていたら届くかもしれないんだから。」
「まだ寝ている間も出てくるかもしれないよ。」
「今回きりじゃなくて、これからもずっとなんですから。今回届かなくても、これからもずっとチャンスがありますよ。」
「ふふふ。そうだね。…そうだった。これからの時間はずっとユウジ君と一緒なんだ。…この人と結婚したい、この人と私の子供が欲しいと思える人と結ばれて感激だよ。ありがとう。おやすみ。」
妊活。この「記念日」を機に子作りを意識するようになる。フォト婚や旅行についても書くが、先に俺達の子作りについて書いてしまおう。物語はもう、そう長くはない。結果を先に言うと、俺達は健康で元気な子を授かることができた。しかし、ナオさんの努力とは裏腹に中々授かることができず、結婚後しばらくは焦りと不安でいっぱいだった。
この記念日の後もナオさんに月の日が来て、この頃はまだ「まあ、すぐは出来ないよね。」と余裕だった。ナオさんは基礎体温をしっかりと計り、生理周期が乱れないように気を付けて、所謂排卵日近くはナオさんからの求めに応じてセックスをし、“Yesショーツ”の期間中5日連続。中には1日に2回頑張ることがあったにも関わらず、ナオさんが妊娠することは無かった。元旦に婚姻届けを提出し、2月には新居に移って生活も落ち着いてきた頃には、この記念日から5ヶ月が経過し、ナオさんはさすがに焦り始める。「あれ?おかしいなぁ。もうちょっと待ってね」と軽い感じで話してはいるが、内心イライラしているのが一緒に生活していると分かる。俺は、本音では結婚後すぐの妊娠を望んでいなかったので、まださほど気にしていなかった。
桜が散りナオさんは1つ年齢を重ね、梅雨を迎える頃にはそれぞれの両親も子供を気にするようになった。電話で俺の母親は「ナオさんはまだなの?本当に大丈夫かしら」と、「だから言ったでしょう」と言わんばかりに、自分の不安が的中したことを俺や父親に認めさせようとする。記念日から約9ヶ月である。親からのプレッシャーもあり、ナオさんの余裕がなくなり、セックスの時も悲壮な表情である。この頃ナオさんは、「私かユウジ君のどちらかに何か問題があるのかもしれない」と、ついに検査を口にするようになった。「次また生理が来たら、一緒に検査を受けて欲しい」とのことだ。
お盆の帰省をどうするか考える頃、「生理が来ない。もしかしたら」と、幸いにも検査を考えるだけで受けることなく、半年以上前に購入していた検査薬をやっと試すことになった。トイレに入ったナオさんから数分後、「よっしゃー!」と女子らしからぬ声がして、俺はナオさんの妊娠を知ることになる。
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