第35話 私にスランプが・・・
私にスランプがやってきた。一年に四季があるように私にまた、小説が書けない時期が訪れていた。
「はぁ、書けない。今まで湯水のように書けたBL小説が・・・書けない」
私、東雲亜里沙はノートパソコンの前で唸る。
「東雲さん、またですか?」
今、言葉を発したのは同じ部活の男子部員こと芳賀康太君。そして、私の彼氏(仮)である。
「また出たのか?東雲の病気が」
「病気とか言わないで下さいよ、部長」
笑いながら、こう言ってきたのはこの文芸部の部長の高瀬先輩。私と芳賀君を強制彼氏彼女(仮)に仕向けた張本人である。いつもだと湯水のごとく活字が湧いてくるのに。どうしてこうなったと言いたくなるくらい文が出てこない。
今回は本当に書けない。
「本当に進まない」
私はノートパソコンのキーボードを打つのを止める。というか止まってしまう。
「あぁ。どうしようかなぁ」
私は腕を伸ばし、体をリラックスさせ天井をボーっと眺めた。そういえば、教室の天井の模様ってつい見ちゃうのよね。なんでだろ。
「偶には、BL小説以外の物に手を出してみたら?」
「ん~」
高瀬先輩がおもむろに私に言ってきたので、考える。
「二人でファンタジー小説作ってみたら、気晴らしになるんじゃない?」
「私と芳賀君でですか?」
「うん。キャラクター設定は私が作るからそれを使って二人で物語を作ってみてよ。それをみんなで読み合う。考えずに着のみ着のままに書けばいいのよ」
「いや、考えないと小説書けないです」
流石に高瀬先輩の言葉にツッコミを入れる。
「面白そうですね、それ」
「意外に乗り気じゃない、芳賀君」
「だって、東雲さんのBL以外の小説読めるじゃないですか」
「そ、そうね。嬉しい事言ってくれるじゃない。まぁ、私も恋愛BLものばっか書いてるから偶には普通の恋愛ものもいいかも」
芳賀君は私の手を握り「やりましょう」と声をかけてきた。
そんな時だった。部室の入り口の扉が開く。
「お疲れでござる」
「おっつー、亜里沙ちゃん」
「失礼します」
相田君、凛花さん、植田さんが部室へ入ってきた。最近、この三人は文芸部員でもないのに普通に入ってきて部活に馴染んでいる。別に部活の邪魔をするわけでもないから、高瀬先輩も特に何も言わない。
「何かやるでござるか、東雲殿」
相田君は妙にイベントごとには鋭い。他の二人も「何かやるんですか?」「何々、面白い事?」と興味津々。
「ま、まぁね。みんなにとって面白いことかどうかわからないけど」
私も隠しておくと後々面倒くさくなりそうだから、みんなにも高瀬先輩の提案を説明することにした。
「ほぅ。これは面白そうでござる」
「わたしも参加する」
「面白そうですね。私も参加します」
説明を聞いた三人は参加したいと言ってきた。高瀬先輩は「OK。じゃあ、ちょっと待っててね」と私たちに伝える。
どうしてこうなった。私はこの状況に肩を落とす。
最初は私と芳賀君だけの遊びだったのに・・・
「はっ!」
私はつい声を出してしまった。私、何考えてた?芳賀君とは確かに彼氏彼女の関係ではあるけどあくまで(仮)なのよ。
何で私、悔しがってるの。意識してるっていうの。
私は焦った。今までこんな気持ちになったこと無いのに。素数を数えて気持ちを落ち着かせるのよ。
「2、3、5、7、11、13、17・・・」
「東雲さん。どうしたんですか?急にブツブツ言いだして」
「な、何でも無いわよ」
私は素数を数える事で大分落ち着いてきていた。
「ならいいですけど」
「ほら、私たちも準備するわよ」
私がそう言うと私と芳賀君、高瀬先輩で小説を書く準備を始めた。他の三人もそれ
ぞれの席に座り準備万端みたいだ。
「じゃぁ、始めるよ」
高瀬先輩の開始の言葉に全員返事をする。そして、高瀬先輩は小説に出てくるキャラクターの設定を私たちに教えてくれた。
提示されたキャラクターはこれだった。
まずは主役の男の子。伊達光太郎で大人しい性格の高校二年生。
そして、ヒロインの女の子は東條ゆかり。性格は高飛車お女様キャラ。主人公とは同学年、同じクラス。所謂、テンプレキャラ。だからこそ、この二人をどう動かして恋愛成就に持っていくのが難しい。大体、いろんな小説(ライトノベル)で使い古されている設定。ここにいるみんなで簡単な起承転結が出来れば、何とかなるけど。
「なるほど。どう料理するか」
「このキャラクター達をもとに恋愛小説を作っていけばいいんですね」
「この二人をベースにサブキャラ入れて話作ってくれればいいわよ。後、どんな話になってもいいから。面白ければそれでいいから。一応、前任者の最後の一文だけは読んで展開考えて続き書いてね。ここは妄想力が試されるわ」
「リレー小説ですか」
高瀬先輩はニコニコしながら説明してくれる。後、順番は自分たちで決めてくれていいとの事だった。芳賀君がぼそっと呟く。
順番は相田君、植田さん、凛花さん、芳賀君、私の順番に決まった。
「あー、後。読むのは最後にみんなで読むから。じゃぁ、相田君からスタートね。よろしく」
「任せるでござる」
相田君はそう言うとノートパソコンのキーボードを淡々と叩く。早いわねと感心していると「チャットで培ったこのタイピング能力、見るでござる」と言いながら、恐ろしく早くキーボードを叩き文を構成している。
「凄い。相田君にこんな能力が」
芳賀君は相田君のタイピングに素直に拍手していた。
「終わったでござる。次は植田さんでござるね」
「私ですか。早いですね」
相田君の執筆は終わり、ノートパソコンが植田さんの前に移動される。
植田さんは、相田君の書いた最後の文章を読み「解りました」と言うと
物静かにタイピングを始めた。
植田さんは偶に腕組みをしながら、カタカタとキーボードをタイピングしていく。相田君とは対極でウサギとかめかと思うぐらい打つスピードが違った。
「よし。これで、いいですね。じゃぁ、これでお願いしますね」
植田さんはキーボードを打つのを止め、凛花さんの前にノートパソコンを移動させる。
「次、わたしね」
凛花さんは植田さんの書いた一文を確認し、舌なめずりをしてタイピングを始めた。凛花さんは他のメンバーとは違って、文章を打つタイピング姿は凛々しい。
「何か、かっこいいわね。どっかの売れっ子作家みたい」
「あら、そう」
凛花さんはそう言うと「じゃぁ。わたしも小説書けば、売れるかしら」とクスクス笑っていた。本気なのか冗談なのか。
「あぁ、後。売れたら亜里沙ちゃん私の彼女になってね」
「それは無いです」
私はその条件をキッパリ断る。そんなことを言っている内に凛花さんは自分の部分を書き終えると席を離れた。
「うーん。こんな感じかな。終わったわよ」
「じゃぁ、次は僕ですね」
芳賀君が待ってましたみたいな感じで指をぽきぽき鳴らしていた。
「さぁ、真打登場ですね」
芳賀君はバトルマンガのノリでその場に座り、前任たちの文章を読む。「なるほど」と芳賀君が呟き目を瞑った。
芳賀君は少し考えると仕草を見せる。
「整いました」
芳賀君が言うと目の前のノートPCのキーボードを叩き始めた。私は芳賀君の後ろに回り、拝見をしようとする。
「ダメです。まだ見ないで下さい」
芳賀君は私の行動が見えたのかノートPCの画面が見えないように覆いかぶさる。
「別に少しくらいいいじゃない。どの道最後私が確認するんだし」
「それでも、ダメです」
芳賀君は頑なに拒む。流石にここまでされると気が引ける。てか、あなた女子ですか。
「解ったわよ。見ない見ない」
私は大人しく、自分の席に戻ると凛花さんたちと談話することに。
私たちは今日学校であったくだらない出来事を適当に話した。数学の先生が今日は怖かったとか、体育の授業が持久走できつかったなど。
芳賀君は私たちの会話に入ってこず真剣にタイピングしていた。
「ふぅ。出来ました」
芳賀君の小説が終わったみたいだ。満足した表情でやり切った感を出している。
ようやくここまで来たわね。
私は芳賀君と席を交代するとノートPCと向き合い、前文の数行を確認した。とりあえず、芳賀君は宇宙での展開の話になっていた。
まぁ、ツッコムのは止めておこう。まずは私で話を終わらせなくてはいけない。
話は宇宙での話になっていたので宇宙空間の主人公とヒロインが宇宙で遭難して、二人で困難に立ち向かい自分たちの星に帰ってからハッピーエンドでいいでしょう。
愛は吊り橋効果でより強い愛に変わっていくとして、終わりと。
私は考えたことをタイピングしていく。何か、BLって考えずに書けば意外にあっさりその時書けるものなのね。
「よし、これでいいかな」
私はタイピングが終わる時には、もやもやしていた事がすっきりしていた。何だか、もやもやしていたことがバカバカしく思えた。
「ほー、どれどれ。私がみんなの書いた物を朗読してあげるわ」
私の横にいつの間にか高瀬先輩が立っていた。
「朗読はちょっと・・・」
「じゃぁ。みんなで黙読しましょう」
私が不満を漏らすと高瀬先輩は黙読に切り替えてくれた。そして、ノートパソコンの前にみんなを集め読み始めた。
最初は相田君の話だった。
時は江戸。僕は伊達光太郎。忍術学園に通う17歳の男子生徒。忍術を習うべく大江戸忍術学園に行き、大忍者になるべく鍛錬していた。
ある朝の出来事だった。
僕は学校に遅刻しそうで、焼き魚を食べながら学校に向かい走っていた。
「どうしよう。遅刻してしまうでござる」
「パンは無いにしろ、焼き魚って・・・。まぁ、お約束か」
私はツッコミをしたかったが読み続けた。
僕はある角を曲がろうとした時に
ドンッ!!
何かとぶつかり僕は尻もちを付いた。
「いたたたた」
僕は目線を上げ、自分にぶつかったモノを確認した。
「!?」
僕は目を疑った。
僕がぶつかったものは鯉の着ぐるみを着た誰かだった。その姿はまな板の上にのった鯛の様にぴちぴちと足掻いていた。
「ちょっと、鯉の着ぐるみ着た女子がぶつかるとかあり得ないでしょ」
「あり得ないから面白いでござる」
相田君は眼鏡をクイッと上げるとどや顔で私を見てきた。
「た、確かに・・・」
「まず、街角で女の子とぶつかり恋に落ちるのがそもそもあり得ないでござる」
「・・・」
相田君の言葉に私は何も言い返せなかった。
「普段の生活であり得ない事が起こるからこそ、人間は興味を持つでござる」
「解ったを大人しく読み続けましょう」
私は大人しく小説に戻る。
「大丈夫ですか?怪我はありませんか」
僕は何と声をかければいいのか分からなかったが聞くことにした。
「大丈夫ですわ」
鯉の着ぐるみの中から声が聞こえた。女の子の声。とりあえず大丈夫そうだ。
「それは良かった。急いでいたみたいですけど、どうしたのですか?」
「それが追われているのです。あれです」
女の子は後ろを指さす。
女の子の指さす方向を確認すると顔が怖い武士が6人ほどこちらに向かってきているのが見えた。
「うわっ」
「私を助けて下さい」
女の子は鯉の顔で僕を見つめてきた。正直怖い。しかも、着ぐるみで中身の女の子の表情がわからない。恐らく、懇願の眼差しで見つめているのだろうか。
「解りました。手助けをします。忍術学園は今日は休むしかないですね」
僕は腹をくくり、この女の子を助ける事にした。
「で、どこに行くんですか?」
「どこか遠くに私を連れて行って下さい」
「解りました。では」
後ろから「姫様。お城にどうかお戻りください」と顔が怖い武士が叫んでいるのが聞こえた。
「姫様?」
僕は姫様という言葉に反応したが、そのまま鯉の着ぐるみを着た女の子とドロンする。
そして、ページをスクロールし植田さんが書いた続きが始まる。
私は読み続けた。
僕たちがドロンした先は何処かの花園。あたり一面にはパンジーが咲き乱れていた。
「うわぁ、綺麗」
彼女はそう言うと喜び飛び跳ねていた。しかし、彼女が着ている物が鯉の着ぐるみなせいで違和感しか無い。
「その格好だと違和感しか無いですね」
彼女は「そうね」と言うと鯉の着ぐるみを徐に脱ぎ始めた。彼女は頭の部分の着ぐるみを脱ぐと顔をあらわにした。
「ふぅ。暑い」
その顔は肌が白く、髪は長い。ぱっちりとした目で彼女は凄く可愛いかった。
僕は彼女の可愛さに視線がくぎ付け。
「どうしたの?」
彼女も僕の視線に気づいたのか僕に聞いてきた。
「あの、どうして鯉の着ぐるみなんです?」
「そうだな・・・・・・何となくかな」
僕は彼女の言い分に疑問が浮かんだ。
「いや、その何となくで鯉の着ぐるみ着るとかありえないと言うか・・・」
「まぁ、強いて言えば他人に自分の姿を見られたくないから」
「そうなんですか。急いでて名前聞いてませんでしたよね」
僕は彼女の名前を聞いてみる。
「あぁ、私。東條ゆかり。さっきの町でお姫様やってるの」
「?」
僕はこの子が何を言っているか分からなかった。
「ちょっと何言ってるか分からないです」
と言うか僕は言葉に出していた。
「だから、私お姫様」
「違うそうじゃない。お姫様が鯉の着ぐるみ着て城下町歩いているなんてふつうありえないでしょ」
ゆかり姫は僕の言った事に対して考えていた。
「だって、城でじっとしてるのって退屈でさ。城下でみんなどんな暮らししてるのか見て見たかったの。爺からは城下は危ないので城からは出てはなりませんと言われたから余計に気になっちゃって」
ゆかり姫はてへぺろってして、やらかしちゃった顔で僕の方を見てきた。
「じゃぁ、あの怖い武士の人って・・・」
「私の家来の人達」
僕は彼女のその言葉を聞き、頭を抱える。しかも、この状況だと僕がこのゆかり姫を誘拐した様になっている。
「この状況、あなたヤバいはね」
「あなたのせいですよね」
ゆかり姫は僕を煽ってきた。僕はさらに頭を抱える。
「もう、こうなったら追ってから逃げる事しか無いわね」
ゆかり姫は鼻息を荒くして、僕に言ってきた。
「僕を巻き込まないで下さい」
「じゃぁ、次行ってみよう。逃げて、逃げて、逃げまくりましょう」
僕も負けじと言い返すがゆかり姫はレッツゴーと腕を上げ聞く耳をもってくれない。
僕は観念して、もう一度ドロンすることにした。
植田さんのは普通の展開で安心した。こういう展開は次の話が作りやすいから凛花さんが羨ましい。
しかし、次のページからは凛花さんが書いた続き、ページをスクロールするのが怖かった。私は恐る恐るページをスクロールする。
「あれ、伊達君?何かさっきと雰囲気違うわね」
ドロンした後、ゆかり姫にそう言われた僕は自分の体を確認してみた。そして、手で触ってみるとある場所に触って違和感を感じた。
「⁉」
僕は再度確認する。僕は男だ。無いはずの胸の感触がある。まさか、そんな馬鹿な。僕はハッと気付き自分の下半身を確認した。
「付いてない‼男の子としてあるはずのものが無い」
ゆかり姫が僕の事をまじまじと観察しているのに気付く。
「何かさっきより、女の子っぽくなってない?」
「何言ってるんですか。僕は男ですよ」
「だって、胸大きいよ」
僕は思わず胸を隠す。
「女の子になってるじゃん」
僕はその言葉に一筋の汗を落とす。ゆかり姫は懐から鏡を出して、見て見なよと僕の方に向けてきた。
「ほら」
そこにいたのは女の子になっている僕が写っていた。
「あーーーーーーー」
僕は声にならない声を出す。
「なんでだーーーー」
私は小説を読みながら叫んでいた。
「何で、男の子が男の娘じゃなくて女の子になってるんですかね」
「だってさぁ、男の子は私嫌いだもん。だから女の子にして、百合展開にしたの」
「なるほど、そうきたか。そう云った展開も考えられるのか、興味深いですね」
芳賀君は凛花さんの意見に感心していた。
「一応、男女の健全な恋愛ものですし」
「えーー。それじゃ、つまんないよ」
「この後の展開、どうするつもりですか?」
「まぁ、見てみてよ」
何かの料理漫画の主人公が言いそうなセリフを言い出した凛花さん。私はその言葉を聞き再度黙読した。
「どうしてこうなったんだろうね」
とゆかり姫は僕に対して笑いかけてきた。僕は自分が投げた煙玉はもう一個同じ物があり、そこには「性転換玉」と書かれているのを見つける。そこには注意書きが書かれていた。
・注意 尚、潜入、尾行などでの使用目的があると思われますが効果は1日でなくなりますので注意してください。
「なんだってーーーー」
僕はまた叫ぶ、一日この格好で過ごさなければいけないのか。
「良かったじゃん。効果1日だけで」
「良くないですよ」
「それじゃ。女の子になった記念に私とデートしましょう」
「城下に行くと見つかりますよ」
「それなら、大丈夫。私変装の天才だから」
「⁉ちょっと待ってください。最初からその変装で城から出てれば僕がこんなことしなくてもよかったじゃないですか」
「そういえばそうね」
「おいっ」
ゆかり姫はあっさり答える。僕はその言葉に頭を抱えた。
「まぁ、いいじゃない。さっ。デートに出発」
反対にゆかり姫のテンションは上がっていた。僕は女の子の姿のままでゆかり姫に手を引っ張られその場から連れていかれる事になった。
僕はいつの間にか、ゆかり姫のおもちゃになっていた。
そして、僕は一線を越える。
「か、可愛い。これが僕・・・」
僕は鏡に映っている自分に驚き見惚れていた。これは何かに目覚めそうだ。
「やっぱり君持ってるね」
「何がですか」
僕は焦るが、ゆかり姫は「私の見立ては間違ってなかったようね。ふふん」と鼻を高くしていた。
ゆかり姫はその服を購入し、僕の手を引き退店。
その後、茶屋であんみつを食べたり、服屋でゆかり姫とかんざしを選んだりと男の僕には体験したことの無い生活スタイルだった。
僕はゆかり姫と買い物や食事を楽しむ。
女の子とて楽しむのがこんなに楽しいなんて思わなかった。
僕は新しい性癖の扉を開いてしまったかもしれない。そして、楽しい時間は唐突に終わりを迎える。
「そろそろ、暗くなってきたし帰るかな」
「?」
僕はゆかり姫の発言に困惑した。確かに周りは日も暮れて暗くなりかけている。
「あー。帰るって話?」
「さっき追われてるから、逃げてるって」
「さっきも言ったじゃん。私が城から出て一人で遊びに行くって言ったら、爺が怒っちゃって。わがまま言って変装して逃げ出したの」
「で?」
「それで、家来に追われてたら君に出会ったってわけ。まぁ、でも疲れたしもう帰って爺に怒られてくるわ。今日は楽しかった」
「え、帰っちゃうんですか。私を置いて」
いつの間にか、僕の言葉は女子言葉になっていた。
「まぁ、またどこかで会いましょう。ばーい」
ゆかり姫はそのセリフを言うと颯爽とその場から去って行った。僕は呆気にとられその場でゆかり姫の後ろ姿を呆然と見ていた。
「本当に今後会えるのかな」
僕はぽつりと呟き、日が沈む空を見上げていた。
そして月日は流れ、時は宇宙世紀XXX1年、場所は月面のクレーターの基地内だった。基地内では戦争で使う機器の整備が進められてる。
僕はブリーフィングルームでサンドイッチをほおばりながら、機器の説明書を読んでいた。
「⁉」
「これ、ちょっとおかしくないですか?時代飛びすぎ過ぎですよね」
「そう?」
凛花さんはのほほんとしている。
「だって、解り切ったところで終わるの次の展開、わかっちゃうからつまんない」
「ですけど、時代劇ものから宇宙ものになるのって無茶苦茶ですよ」
「転生ものでいいじゃない。今流行りよ、確か」
「しかも凛花さんの文ここで終わってるし」
「投げっぱなしジャーマンみたいでいいじゃん」
「それ、ジャーマンじゃないです」
私は冷静にツッコむ。
「これから先は僕のターンですね。見て下さい。僕の渾身の一作を」
芳賀君が待ってましたと言わんばかりの発言。眼鏡も無いのに眼鏡を上げる仕草をしてニヤリと笑っていた。
芳賀君がここから先どうするのか不安。でもちょっと読んで見たい自分もいた。
「読んで見て下さい。亜里沙さん」
凛花さんは私に近づいてきて「読もう、読もう」抱き付きスキンシップを図ってきて、ちょっと寒気がした。
「解りましたから、離れて下さい」
芳賀君のどや顔と凛花さんのスキンシップを回避しながら続きを読み始めることにした。
僕がサンドイッチを食べているとブリーフィングルームにアラームが響き渡る。
「敵機接近。敵機接近。パイロットは出撃準備お願いします」
その放送を聞いて僕はサンドイッチを口に詰め込み、ミリタリーセイバー(MS)格納庫に向かう。艦内のスタッフは先ほどのアラームで忙しくしていた。
久しぶりの出撃に僕は震えていた。
僕はコクピットに乗り込むとモニターの画面に女の子が写る。
「伊達さん。unknownです。識別信号が我々の軍ではありませんでした。敵軍のものかと思われます」
「数は?」
「一機です」
「こっちは何機で出るんですか?」
「三機で迎え撃ってください。この艦は次の作戦に向かわないといけないので時間稼ぎして、我々が逃げることが出来たら、退避して帰還してください」
「陽動作戦。きついですね」
「大丈夫です、伊達さんなら出来ますよ」
女の子はモニター越しに笑顔を振りまいてくれていた。その笑顔で僕は少し癒される。整備が「もう出撃していいぞ」と声をかけてくれた。
僕はMSを艦のカタパルトに移動させる。
「伊達機。発進します。ぐっ」
MSがカタパルトから射出される。Gの意識を保つのがやっとだ。射出される際のGはやっぱり慣れない。
僕のMSは三機編隊を組んで宇宙空間を移動していた。宇宙空間は久しぶりだ。
「伊達、宇宙はどうだ」
「えぇ、久しぶりの感覚ですね。エリック」
「まぁ、敵さんと出くわすまで準備運動でもしとけ」
「そうだぜ、伊達。簡単にやられるんじゃねーぞ」
「解ってますよ、ダグラス」
僕、エリック、ダグラスは他愛もない会話を交えてMSで移動している。
そんな時だ。レーダーに反応があるのが見えた。僕の肉眼では確認できなかった。
「近くにいるみたいだ、二人共。気をつけろ」
「あいよ。エリックの旦那」
「はいっ」
エリックの声に緊張が走るのが分かった。先ほどの会話のような感じは消えている。ダグラス、僕も同じだった。
次の瞬間、肉眼でMSが確認。そこに見えたのは流線的なデザインのMS。僕たちの前にMS停止した。
「貴様はどこの所属だ」
「・・・」
エリックは正体不明の相手に通信を送ったが反応は無い。その数秒後、相手のMSが動き出す。
相手のMSのライフルの銃口が僕たちMSに向けらる。
その動作にダグラスが真っ先に反応した。
「野郎。なめやがって」
ダグラスのMSは相手に向って行く。ダグラスのMSは相手より早く動き近づき、ビームソードを振り下ろす。
ダグラスのMSの一振りが入ったと思ったが寸での所で相手のMSに避けられた。
「何⁉」
相手のライフルがダグラスのMSに向けられる。そして、ライフルからビームが発射されダグラスのMSに当たり、撃破される。爆音とともに爆破。
「ダグラーーーーース」
コクピットの内部スピーカーからはエリックの大声が響き渡る。僕も思わず「ダグラス」の名前を叫んでいた。
「貴様、よくもダグラスをぉぉぉーーーー」
エリックはビームガンを相手のMSに向かって連射する。エリックは射撃の上手いパイロットだ。これは全部命中だと僕は確信する。
「当たった」
エリックも確信していた。
だが、敵のMS装甲に当たる瞬間、ビームは拡散して無効になる。
「何だと‼」
エリックは驚いていた。
「ビームが効いていない」
僕も驚く。今、現在の技術力では装甲でビームが無効に出来るMSは見たことが無い。
ビームを連射するがことごとく弾かれ、マイクの音声からはエリックが「くそがっ⁉」と聞こえてくる。
エリックはビームガンの使用を止め、接近戦で敵MSに近づき振動ナイフで切りつけに行く。流石、隊長判断が速い。そして、敵MSの懐にエリックが飛び込む。
「これは確実に入った」
僕は確信する。振動ナイフが敵MSの腹部に刺さろうかとした時だった。
刺さる前に敵MSが振動ナイフの軌道をずらし、回避。MSでそんな繊細な動き出来るのか、僕は自分の目を疑った。当て身か僕は格闘技を連想する。
そして、流れるように回避して、その振動ナイフを、エリックのMSに差し込んだ。
「バカな‼」
それがエリックの最後の言葉だった。
エリックの乗っていたMSは自分の振動ナイフで機体が爆発。
その間わずか、1分の出来事。軍の機体が2機もあっさりとやられてしまった。手練れの2人がいとも簡単に。
僕は今までにない感覚で打ち震える。そんな時だった。
『お前も殺す』
いきなり、僕のコクピット内にその音声が流れだし、女性の声だったのが分かった。僕は思わず意を決して、聞いてみる。
「君は誰だ」
外部との繋がるモニターに女の子の姿が映し出され、僕は驚愕した。僕と同い年の女の子と思われる子が操縦していた。
『私はゆかり。お前は嫌な感じがする』
僕はその名前を聞いて、頭の中に何かがよぎった。
「うああああああ、頭が」
頭痛が僕を襲った。余りの痛さに悶絶する。どうしたんだこの声何処かで聞いた事がある。
『どうしたんだ。お前。・・・何だ、私も気分が・・・うわぁーーー頭が』
僕の頭の痛みに伴い、ゆかりの声が荒くなり、声を荒げた。僕に同調しているのか。だけど、頭が本当に痛い。なんだこれは・・・
僕は意識の中で、何故か敵パイロットのゆかりが目の前にいた。
【君は誰?】
僕は問うた。
【私はゆかり。あなたとはどこかであった事が・・・】
僕は意識の中で何かを思い出す。そうだ僕は前世でゆかりと会った事がある。
僕は江戸時代にゆかりとデートした記憶が思い出す。ゆかりはお姫様。僕は忍びの学生。そして、僕は何故か一日江戸の休日を満喫した事を。
【思い出したわ。私はあなたと前世で会った事が・・・】
【僕も君と会った事がある】
僕は言い切る。
そして、僕はゆかりと意識の中でつながった事が分かり、次々と過去の記憶が思い出していく。
その思い出の中で分かった事があった。僕はこのゆかりさんに恋をしていた事を思い出していた。
「あなたはゆかり姫なのですか?」
『君こそ、あの時の忍者君なの?』
お互いの心が通じ合う感じがした。これがセッ〇スセンスなのか。
「ぶっ⁉」
私は頬を赤らめ、又も噴き出してしまう。
「これ、セッ〇スセンスじゃなくてシックスセンス。この誤字は無いでしょ」
「セッ〇スで間違ってませんよ。だって心が通じ合うってセッ〇スじゃないですか」
「飛躍し過ぎよ。それにそんなにセッ〇スセッ〇ス言うな。あんた、わざとやってるでしょ」
「いいえ。本気です」
芳賀君は真面目な顔で私を見てきた。この顔は本気だ。この顔が無駄にかっこいいから腹立つ。
「あぁ、もうわかったわよ。分かったから、その顔止めて」
「僕は本気です」
「だから、こっち見るな!PCを見なさい」
私は芳賀君の顔を無理やりノートPCに向かせた。
「いたたたた。痛いです。止めて下さい」
他の人たちは私たちのやり取りをまたいつものですかといった表情でこちらを見ていた。
私はその顔を見て、我に返る。他の人たちからは私たちがイチャイチャしている様にしか見えないのだろう。
私たちは再び、画面の文字を読みだした。
そして、僕たちは過去の記憶を呼び戻し、戦う事を止めた。
お互いの過去の話や今まで起こった自分たちの話をして、時を過ごした事が前世のデートを思い出される。
戦闘で戦うことしかなく、楽しみと言ったら群から支給される食事だけ。
でも、ゆかりとのこの空間での会話が最大の至高、僕にはこの時間が本当に幸せだ。
しかし、その幸せは束の間の出来事。機体のレーダーが反応した。ゆかりのコクピットのスピーカーから敵軍の兵士の声が聞こえてきた。
『大丈夫か!ゆかり少尉』
『だ。大丈夫です。あなたは逃げなさい。早く(小声)』
ゆかりの声が僕のコクピットに響いてきた。その声は囁く感じで優しいものだった。
『ここにいるとあなたは殺されてしまうわ』
『誰かいるのか?ゆかり少尉』
『誰もいないです』
『敵機体のレーダー反応があるのだが』
『はい。先ほど、敵機体と戦闘し、撃破しました。パイロットのみ殺しました』
ゆかりは僕を庇ってくれいていた。まだ、一回しか会っていないのに。
『私が合図したら、この場を離脱しなさい』
僕は無言でカメラに頷く。
そして、兵士の機体が近づいてくるのをカメラで確認。僕の心臓がバクバクしていた。
兵士が機体から降り、僕の機体のコクピットを確認して来ようとした時だった。
『今よ。(小声)』
僕はゆかりの声と同時に機体のスラスターを噴射させる。機体はその場を離脱し、コクピットに近づこうとしていた兵士は飛ばされているのが見え、ゆかりの機体の手が兵士を助けているのが見えた。
僕はそれを見て、安心する。
ゆかりがこの後、どうなるのが予想は出来たがゆかりの事だ前世の記憶が正しければうまくやってくれるだろうと信じたい。
この後、またゆかりと会えるかなと僕は思いながら、暗闇の宇宙空間を自分の旗艦に自動航行していた。
芳賀君の文章はここで終わりになっていた。ここからは私の書いたストーリーが進行していた。
「ここから私のターンね。心して読んでね」
私は自信満々にウインクした。
「何か、すごく怖いですね」
「怖いでござるな」
「気持ち悪いです」
「あら、可愛い」
相田君、植田さんは私の事を悍ましいものを見る表情で見ていた。芳賀君も流石に引いていた。凛花さんは・・・
「怖がらないでよ。でも、好きな事を出し惜しみなしで書いたから、楽しかったわ」
「じゃあ、読んで見ますか」これ、芳賀君。
「そうですね」これは植田さん。
「我、わくわくします」相田君。
そして、私は自分の書いたところをスクロールして、読み始める。
あの出来事から3か月ほどたった時の事だった。
僕は休日にある街で買い物をしていた。いくら軍人であっても休みはある。たまの休日位、羽を伸ばしたいもの。
それに、あれから3か月で状況は変わった。両軍が戦争を停戦条約を結んだのだ。何故そうなったかは下級兵士の僕にはわからないけど、だから今は戦争は起きていない。今は停戦の関係で治安が悪くなり、テロや暴動が各地で起きているのを警察と軍で止める仕事をしている。所謂、治安維持活動。今の軍にはちょうどいい仕事だと思う。人を殺さなくても済むからだ。
僕は買い物を終え、テラスのあるカフェでコーヒーを飲み休憩をしていた。テラス席ではカップルや家族連れが楽しそうにしているのが見えた。
僕も、その雰囲気に肖ろうとテラス席で一人穏やかに過ごしていた。
そんな時だった。
「相席いいですか?」
僕が座っているテラス席に帽子をかぶった誰かが声をかけ僕の前に座った。帽子をかぶっていて顔は見えない。だけど身長は小柄でぱっと見女の子かなと思った。
「ど、どうぞ」
僕はいきなり声をかけられたので少し焦る。声の感じでは女の人かなと思ったが一番気になったとがあった。
それは、他に空いているテラス席もあるのに何故ここの席に来たんだ。いったい何なんだ?この人は。
「ねぇ、知ってる?」
「何がですか?」
「私、君の事知ってるよ」
会ったのもいきなりだし、言う事もいきなりだし、本当になんなんだ。
「僕はあなたのような人は知りません」
「じゃぁ、これで分かるかな。伊達君」
声をかけてきた人が知らないはずの僕の名前を呼んできた。
「えっ」
僕は気にもかけていなかったけど、その名前を呼ばれ顔を上げた。その人は帽子を取り、その下にかけていたサングラスを取り外す。
「私よ」
その顔を見て僕は驚いた。数か月前にMSで戦闘をしたゆかりそのものだった。あのモニターから映し出されていた顔そのものだった。
「何で君がここに」
僕は椅子から立ち上がり、ゆかりの顔をまじまじと見ていた。確かにこの顔はあの戦闘の時にモニターに映し出されていたゆかりの姿。
「驚いた?」
「いや、驚くも何も」
僕は金魚の様に口をパクパクさせてしまう。
「君を逃がしてから色々あってね」
「あぁ、そうなんです・・・ごめん」
僕はあの逃走劇がゆかりの人生に影響を与えてしまった事に後悔した。
「謝らないで。私、後悔してないし」
「君の為に一回何でもするよ」
「ん?私の為に何でもしてくれるの?」
「男に二言は無いよ」
「じゃぁ。あの時みたいにデートしてよ」
確かに記憶の中のゆかりとはデートと言えたものでは無かったが楽しかった。
「いいよ」
僕は頷いた。
「やった。嬉しー。あー、後ね、私」
「今度はどうしたの?」
「あのね。私、実はね。外見は女の子だけど中身男の子なんだよね」
僕はゆかりの言葉に混乱した。
「付いてるの。あれが」
「は?」
ゆかりは僕の手を取り、その手をあそこへと導いた。僕の手には女性ではない温かいものの感触があった。
「は?えっ?」
僕の頭はさらに混乱した。
「実はね。私があなたを逃がしたことで軍法会議になって、死刑か男性になって生きていくか選択を迫られたの。そして、私は性別を変える事になっても生きる事を選んだの」
「はい。何で?」
ゆかりは僕に熱弁してくれて、僕は圧倒されて「はい」と答えるしかなかった。
「私は軍を止める事にしたの」
「僕のせいで波乱万丈だったんですね。ごめんなさい」
ゆかりは首を横に振り、僕を見つめた。
「私は気付いたの。恋は性別関係ないって」
僕たちは繁華街に消えていく。
「結局、ホモじゃないですかっ‼」
芳賀君がノートPCのモニターに向かって絶叫。さっきの私と同じ行動をしていた。
「さっき、今は一旦BLから離れるって言ったじゃないですか」
「いやだって。やっぱ好きなことしないと。みんなの展開見てたら、この展開BLに使えるって思って。つい・・・」
私は芳賀君の言葉に小さくなっていた。
「まぁ、東雲の気分転換になって良かったじゃない」
高瀬先輩が私に向かって笑いかける。
「お疲れ。スランプから抜け出せてよかったじゃない、亜里沙ちゃん」
凛花さんが私に抱き付いてきた。性懲りもなく、制服の中から手を入れて胸をもんできそうになったので、引きはがす。凛花さんは本当にブレない。
「はい。今回の企画楽しかったです。部長にしては良案じゃないですか」
「部長にしてはは、一言多いんじゃない?」
「あっ、ごめんなさい」
私は舌を出して、エヘッと誤魔化す。
「その顔が見たかったんだよ。私は」
私は高瀬部長のその言葉に胸がキュンとし、頬が赤くなった。何かいつもの部長じゃないみたい。
「『東雲、電流走る。ここからまた、東雲の新たな恋が始まるのであった』」
「そこ、勝手にナレーションつけない」
「ご、ごめんでござる」
相田君は私の言葉に怒りを感じたのか、小さくなっていた。
「まぁ、私もスランプあった時は先輩たちとこうやって気晴らししてスランプ抜け出したのよ。先輩たちから教わった事だよ、東雲」
「部長。ありがとうございます」
「私が卒業したら後輩のスランプはこうやって対処してあげな」
高瀬部長は私の頭を撫でてきた。何かカッコいい、いつもの部長じゃないみたい。
「ちょっと、辞めて下さい。僕の東雲さんを口説かないで下さい」
芳賀君は高瀬部長の手を払い、私を抱き寄せる。
「ちょっ」
私は焦る。いまここで何が起こっているのか。目の前が暗い。
「ちょっと。それズルい。私も」
凛花さんが芳賀君に割り込み私を引っ張る。芳賀君も引っ張る。
この状況は【大岡越前守の名裁き〔本当の母〕】。私はその話を考えていると段々腕が痛くなってきていた。やばい。
「痛い」
私がそう呟くと二人は同時に手放した。私は勢いで床にへたり込む。二人は各々「ごめんなさい」「ごめん。亜里沙ちゃん」と心配げに言ってくれた。
私のそんな状況を見ていた植田さんがポツリと言った。
「これは二人から愛されてますね」
「大岡越前守の名裁き〔本当の母〕ですな」
「まぁ、二人の愛をどうするかは東雲さん次第ですね。頑張ってください。じゃ、そういうことでお先に」
私の考えていた事を相田君が代弁していた。まぁ、いつものごとく植田さんはいつものごとく無関心な感じで部室を出て行った。
「私達も、もう帰るか?」
高瀬部長が言った事で私はスマホの時計を確認した。時計の時刻はすでに17時半を過ぎていた。
もうこんな時間だったのと驚いてしまった。楽しい時間は過ぎるのが速いわ。
「そうですね」
「吾輩も帰りますか」
「亜里沙ちゃん、帰ろう~」
「帰りましょう」
私がそう言うとみんなも帰り支度を始め、帰路についた。
「さぁ、さっきの二人の引っ張り痛かったので二人には帰りに商店街でたい焼き奢って下さいね」
「解ったわ、亜里沙ちゃん。私の身体で払うわね」
「それはいらないです」
私は凛花さんの言葉にすぐさま否定。凛花さんは言ってる事本当にやるから、怖い。
「じゃぁ、僕はクロワッサンたい焼きで」
「あなたは私に奢るの」
芳賀君は自分の食べたいものを言っていた。
「じゃあ、我は・・・」
「相田君は自分で買って」
私は相田君の言葉を遮る。
「ヒドイでござる」
相田君は足元から崩れていた。そんなになるほどの事。正直私は相田君の反応にビビってしまう。
「じゃあ、帰りましょう。部長お疲れ様でした」
「はいね」
やっぱり小説を書くのは楽しいわね。
私達は高瀬先輩に挨拶をすると夕日が差し込む部室を後にしたのだった。
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