クラスではお調子者キャラな俺でも、真剣にこの子を好きになってもいいのだろうか。
いいかお前らよく聞けよ。一回しか言わないからよく聞けよ。女子っていうのはな、女子っていうのは、実は呼吸をおこなって生活しているんだ……。あの女子がだぜ?
クラスではお調子者キャラな俺でも、真剣にこの子を好きになってもいいのだろうか。
首領・アリマジュタローネ
いいかお前らよく聞けよ。一回しか言わないからよく聞けよ。女子っていうのはな、女子っていうのは、実は呼吸をおこなって生活しているんだ……。あの女子がだぜ?
『オッ、待ってました! やっと来たか!
よう、お前ら待った? ごめん、母ちゃんが中々朝起こしてくれなくてさ。 なんでだよ、って問い詰めようとしたんだけどできなかった。気が付いたんだよ。俺……親の扶養から外れていたなって。
『浜松、今朝は何食べたの?』
あんまり時間がなかったからさ、乾燥した犬の糞を粉末状にしてご飯にまぶして食ったわ。
『よっ、浜松。また例の本貸してくれー!』
いいよ。週刊かがくるアドベンチャーだよな?
『浜松、おまえのニキビ見てると食欲失せるんだよー。スキンケアしろよー』
うるせえなあ……。ダイエットに丁度いい顔面してんだろ?
『こんな医者はいやだ。どんなの?』
怒ったらすぐモノに当たる。
『思わず会いたくなってしまうあなたの友人のあだ名は?』
『デヴィ夫人と無人島生活をしてわかったことを教えてください』
眠るときにそっと口づけをしてあげないと安心して眠ってくれない。
『つまんない』
日光浴びて眠ろうぜ? 明日になりゃ笑えるさ。
※※※
「お前、やっぱりめちゃくちゃ面白いな。お笑いやったら?」
あまり喋ったことのないクラスメイトにそう言われたことが、なによりの幸せだった。
毎日毎日、結構な無茶ぶりをしてくる人だけど、それでも俺にとっては相手をしてくれるだけで充分光栄なことだった。
「あーよく言われるけど、俺忙しいんだよね。習い事してて」
「え、なんの?」
「道場破りの」
「は?」
、、、
「今のはつまんなかったな~。ちょっと意味がわからなかった」
「道場破りが?」
「うん」
「え、それって……道場破りがってこと?」
「いやだからそうだって」
「お前のいう道場破りって、俺らでいう道場破りのことだよな?」
「そうだっての!!」
「認識間違ってないよな。道場破りの」
「頭がおかしくなるからやめろ!! 俺が悪かった!」
「え、道場破り?」
クスクスと男子からの笑い声が聴こえてきた。
また浜松がアホやってらぁ、的な視線も感じる。
『マジ最高だわ、はまっちゃん』
『おもしろいよなーあいつ』
『顔も個性的だしな!』
『女子に相手されない意味がわからん』
『アイツらの見る目がないだけだろ』
『それなw』
はは。
『浜松さんしか勝たん』
『ほんまそれよ』
『清潔感なさすぎなところも好き』
『わかる。俺も好き』
『浜松とかいう男ウケに特化しすぎて女子人気ゼロなやつ』
『浜松
ははは。
「えー、あんなやつのどこがいいの?」
。。。
『ふつうにノリがウザい』
『面白いこと言おうとしている感が必死すぎ』
『もう少し普通にしてほしい』
『わかるー』
……。
『シンプルに顔がきらい』
『くさそう』
『幼女に鼻の下伸ばしてそう』
『萌えアニメとか好きそう』
『ロリコンそう』
『成人しても子供部屋に住んでそう』
『家の中では偉そうにしてそう』
……。
『糞とか普通にドン引きなんだけど』
…………。
『てかさー、前に話していたマリちゃんっていたじゃん。年上の人!』
『あー、シンジが狙っていた子?』
『そうそう、その子に彼氏が出来たんだけど、むっちゃブスなんだよ』
『ブスとか言ったらダメだよーほんと』
『いや、でも、マジで不細工なの』
『えーw どんな顔?w」
『誰に似てるかっていうと』
『うん』
『浜松w』
『あーねw』
…………。
俺はそそくさと教室を抜け出し、すぐさまトイレへと向かった。
鏡に映る自分の顔を眺めていると、ほんの少しだけ涙が出てきた。
×××
屋上へと向かう階段付近。ここでいつも俺はご飯を食べている。
クラスでは孤立していないし喋る人だっているのに、お昼は決まって一人で食べている。
ここはお気に入りの場所。
誰にも邪魔されないこの空間が好きだ。
周囲に誰かがいると気を遣ってしまう。
だから、ここにいる。
トイレが一番落ち着くという人がいるように、俺にとってのトイレがここだった。
人が来ることはない。
陰キャラとか陽キャラとかそんな言葉があるけど、別にどっちでもいい。
ごく普通の人。単なる凡人くん。
教室では女子以外からは避けられていないし、浮いてもいない。
そう、思いたい。
たぶんきっと、俺は"お調子者キャラ"という立ち位置なのだろう。
もしくは盛り上げ隊長。面白担当。ユーモア専門。略してユモア専。
それかいじられキャラ。というか、イキりキャラ? おふざけキャラ?
わからない。でも人を笑わせるのは好きだ。
お笑いが好きだから子供の頃からよく観ていた。
逆にいうとお笑い以外のものに何も熱中できない。
悔しいけど、コンプレックスの塊だ。
顔はブサイクだし、運動はできないぽっちゃりだし、ニキビができまくって顔面は悲惨なことになっているし、身長は160センチしかないし、女子とは緊張して上手く喋れない。
どうしようもない見せかけ人間だ。
同性からはすごく好かれているけど、女子からは好かれた経験がない。
中学三年生のときもこんなことがあった。
その人はとても優しくて俺にも話しかけてくるような素敵な女子だった。
だからついつい浮かれてしまった。
それがいけなかったんだと思う。
『え、本気だったの? いつもの冗談だと思っちゃった』
俺の本気の告白はあまりにも軽くて、普段の言動にそぐわないものであった。
『浜松だけはないかな~ごめんだけど』
半笑いの表情のまま、告げられてそれきりだった。
その時に確信した。
もう期待などするものかと。
そっちがそういう態度であるなら開き直ってこのキャラを全力で演じ切ってやろうと。
世間がそれを必要とするのならそれをただ全うするだけだ。
こうしておけば誰からも嫌われることはなく、平穏に生きられる。
「はぁ~……」
菓子パンの袋をゴミ箱に入れる。
下の階の自販機でミルクでも買おうかな。
そう思い階段を降りようとしたときだった。
「え、なんでどうして?」
「別れたいと思ったからだよ! それ以外に理由なんてない!」
男女が言い争っている声がした。
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