魔属性の勇者パーティーが世界に復讐を果たすまで~クラスごと異世界の勇者として召喚されたけど、神に見捨てられて、魔族の裏切り者だと国を追放された魔属性勇者の俺は世界に復讐を誓う~

@hryuy0117

第一章 亡命編

プロローグ



 今日最後のチャイムが鳴り響く。

 ここは県立水衣高等学校。県内ではそれなりになの知れた進学校だ。

しかし、そんな進学校に通う生徒も頭がいいからといっても素行まで優等生とは限らない。


 「帰りカラオケ寄らない?」


そんな会話がきこえてくる。

今は放課後、皆さん部活やら、遊びやら、デートやらの話で盛り上がる時間帯。

 

そんな中、遊びに誘う予定も誘われる予定もない俺はさっそうと帰る準備を始めた。

別にぼっちじゃない。ただ友達がいないだけ。


どこのクラスにも一人はいる誰からも嫌われているわけじゃないけど友達ほどの間柄じゃないやつ。俺はそいつだ。

俺は友人といえるやつはいないが、陰キャというほどではない、だから、誰からもいじめられることもない。個人的にも存外この立場を気に入ってる。

誰とも深い関係にならないから裏切られることもないし、期待することもない。


 ですよね。ヒッキー先輩。


それにいじめられっ子だったらもういる。

 

 「なぁ百鬼(なきり)、今からゲーセン行こうと思ってんだけどさぁ、おれら今月はもう金なくて、奢ってくんない?」


教室の片隅でそんな声が聞こえてくる。

 「佐藤君、ぼ、僕も今月はもうお金なくて...それに一昨日もボーリング代全員分僕が払ったよね」


 「は?何?俺の言うこと聞けねぇの?」


 「ハハハ、やめてやれって佐藤、百鬼ちゃんがびびってお漏らししちゃうからw」


佐藤の威圧に口をつぐんでしまった百鬼、いつもはクラスの女子が止めに入るのだか今日はいないようだ。


見てていい気分じゃないし助けてもあげたいが、俺一人が何か言ったところで何か変わるとも思えないし、何より佐藤たちの標的が俺に移って毎日バカ三人の相手をするのは何としても避けたい。良心が痛むがここは百鬼一人で頑張ってもらおう。


バックを背負い廊下に出る。相変わらず廊下は廊下でガヤガヤ、バタバタ、イチャイチャで騒がしい。


 高校生にもなって廊下を通るときのルールも守れないのか、

 壁に「廊下は走らず騒がず右側歩行」と書いている

 ポスターが貼ってあるだろうに。


 特にそこのカップル、イチャイチャしてんじゃねぇ、

 そういうのはホテルか自分の部屋でやれ。

 ここは不純性行為禁止区域だぞ(私的感情含む)。


玄関に着いて下駄箱で靴を履き替える。そういえばこの中靴もボロボロになってきたな。そろそろ買い替えるべきか。


そんなことを考えてる時だった。


 「悠くん、もう帰るの?」


背後で俺を呼ぶ声がした。俺のことをそう呼ぶやつは一人しかいない。


 「よう小花代、お前も帰りか?」


 「うん、どうせまた部活にはいかないんでしょ。だったら途中まで一緒にいこうよ。」


この声の主、整った顔とねじれっけひとつないドストレートのロングヘアで校則規定通りの高さのスカート、絶壁の胸部、いかにもな清楚系ヒロインのようなこいつは俺のクラスメイト兼幼馴染こと小花代 桜羽(こばない さくらは)である。


 「俺は構わないが学校のアイドルであるお前が、こんな冴えない一匹狼とつるんでたら悪い噂が立つぞ。......おい、一応言っとくが、それに俺は部長公認で幽霊部員になっているんだからな。小花代が思っている程素行は悪くないからな。」


 「もったいないなぁ、中学の時は東北大会とかにも出てそれなりにカッコよかったのに、そんなに剣道は嫌いなの? ......それと、念のため言っておくけど、私はアイドルになったつもりはないし、わたしと君じゃ噂すら立たないってこと忘れないでね。」


小花代はあまり人とつるまない俺の数少ない友人?と言える人物だ。家がご近所なだけあって小花代と俺は気の置けない仲ではあると思う。


そのおかげか学校ではお嬢様を装ってる小花代も俺には砕けた言い方になる。

これがそのまま恋愛感情なら恋愛小説の主人公とヒロインのようなにおいがプンプンするのだが、こいつには俺は弟にしか思えないらしい。(そういう俺は、小花代は妹のようにしか思えなのだが...)


 「俺の部活のことはいいが、小花代こそ生徒会の仕事はいいのか?」


元々剣道は父親の意向で無理やりやらされてただけだったので、高校では自由に過ごそうと心に決めていた。今さら小花代に何か言われても戻る気はない。


 「今日は生徒会は休みだから大丈夫だよ。それよりもさ、今週末買い物に付き合ってくれない?新しい下着買おうとおもってて」


ああ、またか...


昔から俺と仲のいい兄妹感覚でつるんできた小花代はたまに一緒に買い物にこうと誘ってくる。


俺も、ただの買い物に付き合うぐらいだったら、家の中でぐだぐだ過ごしている間の気晴らしに丁度いいので、買い物について行ったりするのだが、高校生にもなって男女で下着を買いに行くのはいくら兄妹みたいだからといっても流石に恥ずかしいこと極まりない。

仮にも俺は思春期真っ盛りの男の子だ。周囲の視線も痛すぎる。

 


 「下着をつけるほどのものは持ち合わせていないだろうに...」


愚痴をこぼす。

即座にタイキックが飛んできた。


 「イテッ!」


 小声で言ったつもりだったが聞こえていたか...


 「悠くんそういうとこだよ。」


 「すいませんでした。」


なんやかんやで、何とか小花代も機嫌を取り戻してもらい、俺も家に着く。


そこで後から冷静に行動を振り返ってみる。


 俺たち自身がどう思っているかはともかく、はたから見たら恋人同士に見えなくもない状況だよなぁ。


放課後廊下で見かけたカップルを思い出す。


 名も知らぬカップルよ。俺が思ったことは撤回しよう。すまなかった。



ーー·ーー



 翌日、なぜか朝から俺はクラスのカースト上位の女子たちに囲まれていた。

 

 「あんた、昨日桜羽と一緒に帰ってたでしょ。」


グループのリーダー格である綾崎礼嶺(あやさき れいね)がいかにも不服そうな顔で聞いてくる。いや、もはや脅迫である。


 うわ、絶対怒ってるじゃんこれ。

 そんなに俺と小花代が一緒にいるのが嫌なのだろうか?

 俺なんかと一緒にいると小花代の格が落ちるとでも言いたいのか?

 こっちからしたら、まったくもって迷惑だ。


 「見間違いでは?」


 「昨日、あんたと桜羽が一緒にいるのを見たってやつがいんだよ。ごまかしてんじゃねーぞ。」


 あぁ、これは回避不可能なやつですぜ。

 ていうか、小花代「私と君じゃ噂にすらならないよ」っていってたじゃんか。

 余裕でうちの女番長が気にしておられるのですが...

 どうしてくれるんだよ。嘘つき!

 てか、早く登校して来てくださいよ、何やってんのさ!


 「昨日はたまたま帰る時間がかぶっただけで、俺なんかが小花代さんと帰れたのは奇跡中の奇跡と言いますか...」


 「あら?それにしてはとても仲がいいように見えたのですが私の気のせいだったかしら?」


もう一人のリーダー格、桂花院鏡華(けいかいん きょうか)が皮肉たっぷりに答えてくださった。


言い返そうとすればこんなイキり野郎たちが泣いちゃう位のことは言える。しかし、このクラスを支配者とも言えるこいつらを敵に回したら、その瞬間俺の安泰な高校生活は終わりを告げる。

 


 あぁ、マジて面倒くさい。

 俺はまだ教室に入ってきたばかりで今日の授業の準備すらできていないんだ。

 お前らみたいな、低脳な奴らと話している時間はないんだよ。


俺も怒りを我慢するのもやめて、もういっそのことこいつらを完膚なきまで言い負かしちてやろうかと思い始めてた時。


 「礼嶺も鏡華も、それくらいで十分だろ」


 さわやかなイケメンボイスが割って入った。

 

 「隼人...」「隼人君...」


 俺を取り囲んでいた女子たちが振り返る。


 神楽代 隼人(かなしろ はやと)


容姿端麗、成績優秀、運動神経抜群、人当たり良しの完璧超人で彼氏にしたい男堂々第1位のイケメンくんだ。


 「二人ともそんなに言わなくても...それに京(かなどめ)くんも悪気があったわけじゃないんだろう?」


 予想外の助け舟だ。これに乗らずに何に乗るっていうんだ。


 「あ、あぁ、偶然昨日小花代さんに話しかけられて...でもその後すぐに別れたし...」


 俺は迷わず答えた。

 

 「ほら、京くんもこう言ってることだし、この話はもう終わりにしよう。これ以上話してもお互い気分が悪くなるだけだ。」


この言葉にはさすがの綾崎も引くしかなかった。

桂花院に関しては「私もそろそろ飽きていたところでしたの。」と甘い口調で神楽代にすり寄っている。

さっきまでの俺に対する態度はとっくに消え去っていた。


 人を選ぶぶりっ子は本当に怖いな。


今さっき俺を助けてくれた人にこういうのはなんだが、個人的に俺は神楽代のことが苦手だった。


これまでの17年間の人生で人を見る目は人並み以上に養ってきたつもりだが、神楽代からは綾崎礼嶺とは違った圧力を感じる。

さっきもそうだ、上辺だけ見れば神楽代が女子たちを諭しているように思えるが実際は綾崎礼嶺が黙ってしまうほどに強制力があった。そして何より神楽代は本当の顔を隠している...ように思える。


かくはともあれ、難は去った。これでまた俺の楽しい高校生活が待っている。よかった一安心。


ガラガラガラ


 「皆さん、おはようございます。」


暫くしてやっと桜羽さんご本人が出勤してきた。


 「桜羽!おはよう、今日は少し遅かったね。どうしたの?」


桜羽に気づいた女子生徒が心配そうに聞いた。


 「めざましに気づかないで寝坊してしてしまいました。もう最悪です。」


 あらあら、本当に最悪な理由ですこと。なんでよりによって今日寝坊するんでしょうか。

 こっちはあなたのおかげで朝から精神すり減らしていたというのにたいそういい御身分で...


周りにバレないように少し文句を言ってやろうかとも思ったが無理そうだったので断念した。



今は4時間目数学の時間、皆さん午前中最後の授業で眠そうです。ていうか、寝てます。

かくゆう俺も10分ほど前から睡魔と絶賛格闘中。

まぶたが重い。こんなに眠気に襲われるのは久しぶりだ。

そこそこ勉強できることしか取り柄のない俺がここで落ちるのはまずい。

そこで俺はある違和感を感じた。

ん?まて、何かおかしい。なんだこれは...


 「..う...っ!」

急激な睡魔が襲った。


急速に思考能力を奪っていく。


 ダメだ!ここで寝てはいけない気がする。寝たら何か大変なことなると本能が叫んでいる。

そこでようやく感じた違和感に気がついた。


 「なんで俺以外みんな寝てるんだよ!?」

この時間帯がどんなに眠くなりやすい時間といっても俺以外のクラス全員が、優等生の小花代や、神楽代まで頭を伏して寝ているなんて明らかにおかしい。

そして何より先生はなんで起こそうとしないんだ。

クラスのほとんどが寝ているんだぞ、クラス全員で結託して寝たふりをしない限りそんな状況は起こりえないんだ。

それをまるで気づいてないかように授業を続けて、

・・・いや、俺たちが見えていないのか?もしくは先生の目には俺たちがちゃんと授業を受けているように映っているのか?

ダメだ、これ以上は意識が持たない、クソ、どうなってるんだ!

その瞬間また急激な睡魔が襲った。

 「クソ...が...」

一瞬にして視界が白く光り、俺は眠気に逆らえるはずもなく意識を手放した。

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