【異説】竹取物語「かぐや姫の昇天」登場人物たちの考えている事を覗いてみたら、みんな意外と色々と苦労していた?
@togawa1228
第1話 「讃岐造」
「(か、かぐや、行かないでくれ、かぐや…)」
天人が現れると同時に輝く月の光は強さを増し、目もくらむほどになった時、屋敷の周囲に居並ぶ2000人のもののふどもは一様に力をなくした。それより非力な翁にいたっては当然のごとく、立ち上がることもできず地に伏し、事の成り行きをただ見守るしかないという体たらくであった。
昼の光にも匹敵する、いや、満月の光の10集めたほどに匹敵するこの不思議な光は、残酷なことに地上人の身体機能を奪う事はあっても意識を奪う事はなかった。この光によって意識を奪われ、その場で起こることを一切知ることなく、気がついたら姫がいないと言う方がまだ諦めがついたかもしれない。
今、現実に自分の目の前から去ってゆこうとしているかぐや姫。
竹林で運命の出会いを果たした我が美しい姫。
今、彼女が月に帰ってゆく。それをただ見ているしかできない自分。
「@#¥3*。」
脳に直接語り掛けてくる天人の声。聞き取ることができない発音による部分はおそらくかぐや姫の天上の名前であろう。天人の一人が指を振ると、その神通力によるものか、屋敷の障子が勝手に開き、かぐや姫が屋敷の外に姿を現した。かぐや姫はあきらめているのか、自らの意思で歩を進めているように見える。
「(頼む、行かないでくれ。かぐやを…連れて行かないでくれ。)」
翁の見開いた目から熱い大粒の涙がこぼれ落ちた。
「(お前が行ってしまったら…ワシの、貴族になると言う夢は…竹の中の金は…)」
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