彼女が僕を助けようと必死すぎた

 僕は泣いていた。

 パソコンに映った動画では、美咲が6人の男女のクラスメートとともに、ブロッコリーをかじっている。


「見て、このとおり、ブロッコリーって、こんなにおいしいんだからっ!」

 美咲の顔はこわばっていた。彼女はブロッコリー農家の息子である僕を好きになっていた。ブロッコリー自体は嫌いなのに。


「確かにブロッコリーのせいで、千葉県の小学校で食中毒が出たのは、本当に本当に残念だと思うけど、本当はブロッコリーって、とてもとてもおいしいの! 私の彼氏の親たちが作ってくれているものもね!」


 

 僕は、美咲が本気で僕を愛しているんだと知った。

 これなら両親の農家も救われる気がした。



 それから僕と美咲は24歳で結婚した。両親の跡継ぎを目指して、一家でブロッコリー農家を切り盛りし続けている。

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