第7話
「起きなさい、司」
ドアをノックする音とミクルの声がした。
司は寝ぼけ眼をこすりながら扉を開けた。
「おはよう、司。今日はミレスの跡地を案内するわ」
「おはようございます、ミクルさん」
司は出かける準備ができ次第、ミクルの部屋に行く約束をした。
「俺、育成係と言われたけど、扱い悪すぎないか?」
司はブツブツと呟きながら、外出の準備をした。
昨日ミクルから受け取った服を着て、ミクルの部屋に行った。
「準備が出来ました」
「遅いわよ」
「・・・・・・すいません」
司はちょっとむっとしながら答えた。
ミクルはそれを見て舌打ちをした。
「じゃあ、ミレスに向かうわよ。これを装備しなさい」
そう言って、ミクルは司に剣と盾を渡した。
司は剣を腰に差し、左手に盾を装備した。
「なかなか似合ってるわよ」
「それはどうも」
「行くわよ」
ミクルは杖とローブを装備して、部屋から出てきた。
司はミクルの後について歩き出した。
シラヌイの街は活気にあふれていた。
「よお、ミクル。お出かけかい?」
武器屋の青年が声をかけてきた。
「はい、ミレスまで」
「・・・・・・そうか。気をつけて」
青年は微妙な表情でミクルを見送った。
「ミレスって、消された町ですよね」
司が訊ねるとミクルはいらついた様子で答えた。
「ええ、そうよ。私の故郷」
「そういえばご両親・・・・・・」
「うるさいわね、黙りなさい」
ミクルは杖で、司の右腕を突いた。
「痛!」
「シラヌイの街を出るとスライム位は出るから、司も戦いなさい」
ミクルの言葉に司が問いかける。
「戦う?」
「補助魔法を私にかければ良いわ」
ミクルは少しだけ振り返って、司を横目で見た。
歩いて行くとスライムの群れに出くわした。
「10匹くらいね、これなら楽勝ね」
ミクルはそう言うと杖を構えた。
「えっと、魔力が上がるイメージをして・・・・・・」
司も身構えて、ミクルの魔力が上がるイメージを心に描いた。
呪文が自然に司の口からこぼれ出す。
「ファイアボール!!」
「があぁああ」
スライム達はミクルのファイアボールで一掃された。
「・・・・・・凄いわね、司の補助魔法」
ミクルは少しの沈黙の後、ぼそりと呟いた。
「凄いんですか?」
司の無邪気な問いかけに、ミクルは少し悔しそうに頷いた。
「いくら私でも、ファイアボールを一回唱えただけでは、一匹しかスライムを倒せないわ」
「じゃあ、10倍の力になっていると言うことですか?」
司は少し得意げに言った。
「調子に乗らないで頂戴!」
ミクルは歩くスピードを上げた。
司は小走りになって、その後を追った。
しばらく歩くと、廃墟が見えた。
「あれがミレスの町・・・・・・」
ミクルはぎゅっと手を握りながら、司に言った。
「建物は無傷なんですね」
そう言いながら、司は町の中に入った。
「ええ、生き物だけが見事に消えたわ」
ミクルも町に入った。
「この場所を見せたのは、魔王が酷いって事を感じて欲しかったからよ」
ミクルは歩きながら、町を観察した。
ここで生活していたことが思い出されて、涙が出そうになった。
「ミクルさん・・・・・・」
司はミクルの肩に手を置いた。
「ちょっと、触らないで!!」
ミクルは司の手を振り払った。
司は慌てて手をどけた。
「さあ、魔王の力の凄さと残酷さが分かったでしょう?」
「ええ、ミクルさん」
「それじゃ、私を全力で支えなさい!」
ミクルは手を腰に当てて、偉そうに言った。
司は、ミクルの虚勢に気づきながらも何も言わずに頷いた。
「それじゃ、シラヌイの街に帰るわよ」
「はい、ミクルさん」
ミクルと司はシラヌイの街に戻っていった。
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