第5話
ミクルの部屋に戻った後、司はミクルの部屋の隣の部屋に案内された。
「ここが貴方の部屋よ」
「ここが!?」
司は絶句した。
ミクルの部屋の四分の一位の広さで、ベッドが置かれただけの簡素な部屋だった。
「感謝しなさい、これでも個室がもらえたのは奇跡的なんだから」
ミクルはそう言って、司のベッドに腰掛けた。
「育成係というのは、勇者見習いよりも扱いが悪いんですね」
司は立ったまま、ミクルに訊ねた。
「まあね。貴方は異例中の異例だしね。普通はドラゴンとかゴーレムとか上位モンスターを従える物だからね」
ミクルは金髪のショートボブを掻き上げた。
見た目だけなら、文句なしの美少女だと司は改めて思った。
「司、一応貴方にこの街の周辺の情報を教えてあげる」
「はい」
司は頷いた。
「このシラヌイの街は、大陸の中央に有るわ」
「はい」
「西に行くとヨークの村、南にはサクレンの町と海岸、東北に消された町ミレス、東にはモンスターが沢山すんでいる丘、北には何もないわ」
ミクルの指先が光り、空中に光りの線が浮き出す。
ミクルは空中に簡単な地図を書いて説明した。
「私たち、勇者見習いは魔王の討伐を目指しているの」
ミクルが言うと司は言葉を返した。
「討伐ですか? 俺は関わりたくないです」
「私の言うことは絶対よ」
そう言ってミクルは微笑んだ。司の左腕の紋章が光る。
「これは何ですか!? さっきも痛みが走ったんだけど!?」
司は左腕を押さえて、座り込んだ。
ミクルは笑った。
「束縛の紋章よ。呼び出したときに一緒に魔法をかけておいたの」
「そんなこと、なんで・・・・・・」
「呼び出した相手が、従順かどうか分からないじゃない」
ミクルは苦痛に歪んだ司の顔を見て、満足したのか、魔法を解いた。
「司には修行をしてもらうわ」
「修行?」
司はミクルに聞き直した。
「ええ、図書館で補助魔法の本を読んで、覚えてもらうわ」
「俺、この世界の文字が読めるか分からないですよ」
「まずはやってみてから言ってね」
ミクルは可愛らしい仕草で首をかしげた。
司はため息をついた。
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