11話 街へ帰還
俺はホーンラビットと対峙する。ミーシャにいいところを見せないとな。
「……我にさらなる祝福を。生命力強化、体力強化、肉体強度強化、視力強化、反応速度強化ーー」
俺は自身に対して支援魔法を重ねがけする。先ほどからミーシャと同じく自分にも支援魔法をかけてはいたが、念のためだ。俺程度の実力では、万が一ということもあるからな。
ミーシャの俺に対する評価次第では、俺の新しい就職先のパーティが決まる。全力でアピールする必要があるのだ。
「いくぜ! せえいっ!」
俺は剣で斬りかかる。俺のメインは支援魔法士だが、もちろん最低限の自衛のために多少は鍛えてある。
……ん? いつもより体が軽いな。支援魔法の効力が強い。調子がいいようだ。俺の高速の剣が、ホーンラビットに近づいていく。
「ぎゃうっ!」
ホーンラビットが悲鳴をあげて、絶命した。一撃だ。
おかしいな。いつもの俺なら、何度も斬りつける必要があるのだが。
「す、すごいのです! 支援魔法士なのに、ここまでの戦闘能力があるのは予想外なのです」
ミーシャがそう言う。
「い、いや……。自分で言うのもなんだが、俺の実力はもっと下のはずなのだが……。ミーシャの件といい、どうも今日は支援魔法の調子がいいみたいだ」
「そうなのですか? いえ、きっとそれがロイさんの実力なのです。期待しているのです」
ミーシャがそう言う。明日以降もこの支援魔法の調子が続くかどうかは不安だが、なるようになるしかないか。
あまり卑下していると、せっかくの再就職のチャンスがふいになってしまうかもしれない。とりあえずこれを俺の実力ということにして、様子を見ることにしよう。
--------------------------------------------------
その後も、ミーシャとネモとともに街への道を進んでいく。無事に、街まで戻ってきた。
「ロイさん、ミーシャさん。本当にありがとうございました」
「いえ。ケガがなくてよかったのです」
「今度からは1人で行くのは避けたほうがいいですよ。護衛を付けるか、せめて複数人で行ってください」
礼を言うネモに、ミーシャと俺はそう言う。
「そうですね。次からはそうします。冒険者ギルドを通して、ささやかですが謝礼を出しておきますね」
「どういたしましてなのです。お金はありがたく受け取っておくのです」
ミーシャがそう返答する。ネモは去っていった。
「よかったな。ミーシャ。思わぬ臨時収入だな」
「はいなのです。ロイさん、私と等分でいいのですか?」
「ん? 俺ももらっていいのか?」
「もちろんなのです。ロイさんは大活躍だったのですし、当然なのです」
「そうか。そう言ってもらえると、俺もうれしい。ありがたくいただこう」
俺はパーティをクビになったところだ。金はいくらでもほしい。
「それで、ロイさんをわたしのパーティに紹介したいのですが」
「願ってもいないことだ。ぜひお願いしたい」
彼女のパーティメンバーにもうまくアピールできれば、俺の次のパーティが決まるだろう。ミーシャは優秀なようだし、人当たりもいい。彼女のパーティに入れてもらえるのならば、ぜひそうしたい。
「ちょうど、わたしたちのパーティには支援魔法士がいないのです。きっと、みんな喜ぶのです。ちょうど今から、冒険者ギルドで1人と落ち合う予定なのです。いっしょに行くのです」
ミーシャは俺を高く評価してくれている。その期待に応えられるよう、俺もより一層がんばらないといけない。期待と覚悟を胸に、ミーシャとともに冒険者ギルドに向かう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます