6話 猫獣人ミーシャからの誘い

 俺は”黒き炎”を追放されてしまった。その翌日、俺は1人で冒険者ギルドに向かっていた。


「新しいパーティをなんとか探さないとなあ……」


 俺はそんな独り言をつぶやきながら、ギルドの中に入る。中にはいくつかのパーティがいた。


 俺をパーティに入れてもらえないか、聞いて回る。しかし。


「Dランクの支援魔法士? ダメダメ。お呼びじゃないよ」

「ん? 確かお前は、”黒き炎”のやつだな。とうとう追い出されたのか。ガハハハ!」


 こんな感じで、取り付く島もない。


「はあ……。今日のところはソロでできそうな依頼を受けるか」


 俺が掲示板を見始めたときだった。


「ちょっとそこのお兄さん。パーティメンバーをお探しなのです?」


 女の子が話しかけてきた。年齢は10代中盤くらいか。髪はショート。猫耳が生えている。猫獣人のようだ。


「あ、ああ。そうだよ。君は?」

「わたしはミーシャというのです。Cランクのレンジャーなのです。普段は”白き雷光”というパーティで活動しているのです」


 レンジャー。斥候や奇襲の役目を担う者のことだ。”白き雷光”の名前は聞いたことがある。確か、若手有望株と噂されているパーティだったはず。


 こんな若い女の子がCランク冒険者だとは。Bランクであるユリウスたちよりわずか1つだけ下のランクだ。Dランクの俺よりも格上である。敬語を使ったほうがいいのだろうか。年齢は俺のほうが少し上だし、悩みどころだな。


「そうか。俺はロイ。Dランクの支援魔法士だ」


 敬語に切り替えるタイミングを失ってしまった。指摘されたら直そう。


「そうなのですか。もしよければ、わたしと同行するのです? 影の森にヒポタス草の採取に行くつもりなのです」

「影の森か。Dランクの俺には荷が重い場所だ。Cランクの君といっしょとはいえ、魔物が出てきたら危険だ」


 影の森は、Cランク下位相当の狩場とされている。それなりに強い魔物が出てくる。Bランクパーティである”黒き炎”に所属していたときは、何度も行ったことがある場所ではあるが。


「わたしのことはミーシャでいいのです。深くまでは入らないので、魔物のことは心配要らないのです」

「ふむ。レンジャーであるミーシャがそう言うのであれば、心配ないのだろうな。しかし、なぜ俺を?」


 ”白き雷光”の他のメンバーは不在なのだろうか。


「もともといっしょに行く予定だったパーティメンバーが、急用で来れなくなったのです。中止してもよかったのですが、ダメ元でメンバーを探していたのです。良さそうな人がいてよかったのです」

「良さそう? 俺が? ……まあ、そう言ってくれるのであれば、断る理由もない。ぜひいっしょに行かせてもらおう」

「よろしくなのです」


 こうして、猫獣人のミーシャと行動をともにすることになった。俺が”黒き炎”から追放されて、初めての臨時パーティだ。今回の同行でいいところを見せれば、もしかすると彼女のパーティに正式に入れてもらえるかもしれない。がんばるぞ!

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