第80話 車いすを作ろう

 今日は屋台を開店させたら、アルちゃんに外にいて貰い護衛を頼んでから王城へ向かう。


「アルちゃん、お願いね」


「きゅきゅーっ!」


「可愛い護衛さん、お願いしますね」


 そう丁寧にお願いをしたのはビアンカだ。やっぱりおっとりと良い子だよね。


「アルちゃんが助けてくれると思うけど、無理しないようにしてね」


「「はいっ!」」



 私はヴァイスを肩に乗せて王城へ向かって歩き出した。無効化のアクセサリーは早く渡した方が良いだろうからね。魔族がどこにいて、いつ狙われるか分からないからね。


「そういえば、魔族ってどんな感じなの?」


『色々あるが、特殊な魔法を使うみたいだぞ。今回の様に呪いとか魅了とかだな』


「そうなんだ。魔法が凄い人ってこと?」


『いや、人族にも変身出来るみたいだが、角があったり羽があるやつもいるみたいだぞ』


「飛べるなんて凄いね。でもそうすると門だけでは止められないんだね~」


『そうだな。まあ、近くに来れば分かるから、カノンは問題ないだろう』


「ふふっ。頼りにしてます!」



 王城の門で手続きをして少し待っていると、今日はフランツ様が来てくれた。ユリウス様の部屋に案内して貰っている途中で、気になる人を見つけて思わず立ち止まった。


「カノン様?」


「えっと、あの方達は?」


「ああ、あちらには救護棟があるんです。今はリハビリ中みたいですね」


「あぁ、レオンハルト様がいらした所ですね。なるほど……ポーションでも治らないのですか?」


「そうですね。やはりポーションの数が足りなくなることもありますし、そうすると治らないこともあります」


「そう、なのですね」


 ポーションも万能ではないみたいだ。エリクサーがあればきっと治せるのだろう。だけど、すべての人に渡せるわけではないし、それでは私がいなくなった後に今より困ったことになるだろう。

 それに治る怪我もあるだろうし、その為の補助道具が欲しいよね。一応松葉杖みたいに持って補助してくれる道具はあるものの、車いすは見かけない。


「あの、座ったまま動ける道具はないのですか?」


「座ったまま動ける、ですか? ないですね」


「なるほど。リハビリを補助出来る道具を考えてみますね」


「ありがとうございます」


 車いすは作れると思う。移動ボードと同じようにすれば良いと思うんだよね。そんなことを考えながら歩いていると、ユリウス様の所へ到着した。フランツさんはそのまま訓練に戻って行った。

 ユリウス様の部屋へ入ると、テオドール様と第1王子のレオナルド様もいた。


「カノン、昨日は妹が済まなかったな。助けてくれて感謝する」


「いえ、お気になさらず。たまたまうちのお店の側だったので良かったです」


「それで、カノン様。今日はどうしましたか?」


「状態異常無効化のアクセサリーが出来たので持ってきました」


「「「えっ!?」」」


 3人は驚いた表情をして固まってしまった。


「あれ?」


『カノン。当たり前であろう。呪い無効ですらなかったのだぞ?』


「あっ、そういえばそうだったね」


「カノン様。状態異常無効化とは、呪いの他にも毒なども効かなくなるという事ですか?」


「そうみたいです。呪い、魅了、毒、麻痺などですね~」


 テーブルに状態異常無効化のアクセサリーをコロコロと出していくと、さらに驚いた顔になって固まっている。


「……カノン様。も、もしかして、これ全部状態異常無効化のアクセサリーなのですか?」


「はい!」


「ははっ、カノンは本当に凄いね。そんな国宝級な物がコロコロ出てくるなんて思わなかったよ」


「カノン様。これはお預かりしても宜しいのでしょうか?」


「どうぞ。国王様やレオンハルト様、シャルロッテ様以外にもお渡しした方が良いと思われたら、ぜひ渡してあげてください」


「「ありがとうございます」」


「カノン、ありがとう。シャルロッテにも必ず渡すよ」


「はい、お願いします」


 無事にアクセサリーを渡せたので、そろそろお店に帰ろう。帰りはテオドール様が門まで送ってくれた。門を出たら、今日は屋台にささっと寄って、みんなのお昼ごはんを買って帰ろう。

 今日はケイティさんのパン屋さんへも寄って帰る。美味しいパンが食べられるのはとても嬉しいです。


 お店に戻ると、まずは2人とヴァイスにご飯を食べて貰おう。


「アルちゃん。護衛ありがとうね」


「きゅきゅ~」


「ふふっ。カノンお姉ちゃん。アルちゃんはみんなからとっても人気だったのよ」


「そうなんだ。ふふっ、アルちゃんったら看板植物だからね!」


「きゅ~!」


 アルちゃんもお店の中に入るかと思ったら、私が屋台に立っている間、護衛として一緒に居てくれた。ビアンカ達が戻ってきたらお店番を交代して、ご飯を食べてからお店を開けよう。


 お店を開けたら、店番をしながら作業をする。午後になって冒険者達が増えてきた。最近は種の人気が凄い。やっぱり出掛けた先で温かい物が食べられたり、携帯食よりも美味しく食べられる物は助かるみたいだ。

 私も食べるのだったら美味しい物が食べたいもんね。



 夜になり、ヴァイスとアルちゃんと錬金部屋へ向かう。


「よし、今日は車いすを作るよー!」


『くるまいす。昼間に言っていたやつか』


「うん。足が不自由だったり怪我をした人が座って移動出来るようになるんだよ」


『なるほどな』


 椅子には座り心地が良くなるように、綿と布で座面を作ろう。錬金釜に木材と布、綿を入れて蓋を閉める。まずは車いすの形を作る。日本にいた時の車いすと同じようだけど、車輪はいらないから足を置く台が付いた椅子だ。

 一応人が押せるようにそこは私が知っている車いすと同じにする予定だ。


 浮かせて移動するから、バリアフリーじゃなくても移動出来ると思うんだよね。そう思い浮かべて魔力を流すと、すぐにチーン! と出来上がりを知らせてくれる。


 錬金釜の蓋を開けると、車輪の付いてない車いすが出来た。なんかおかしい。取り出したら魔石を貼り付けていこう。


 今回はあんまり高くまで浮いても危ないから、緑の魔石は中サイズを使おう。それと他の人でも押せるように椅子の背に付いているハンドルを握ったら移動出来るようにもしておこう。


 椅子の下には緑の魔石(中)、黒の魔石(中)、白の魔石(中)を貼り付けよう。椅子の座面には緑の魔石(中)、白の魔石(中)で風の膜を作っておこう。


 魔石を貼り付けられたら錬金釜に入れて魔力を流そう。魔力を流している間、車いすが錬金釜の中でくるくる回っているのは、なかなか面白い光景だ。


 チーン!


 錬金釜の蓋を開けて鑑定してみると、車いすと書いてあるから出来たのだろう。床に置いてみると、地面から少し浮いている。

 試しに座ってみると、少しふわっとする。足を置いてどうやって動くかを念じてみると、すぅーっと動いた。これなら振動もないから響いて痛いという事もないだろう。


 5台くらい持って行って使ってみて貰おう。改良点があれば教えて貰いたい。こればかりは当事者じゃないと不便さは分からないだろうからね。


 その後同じ物を4台作ってアイテムボックスに仕舞っておく。また明日は王宮へ行って来なきゃだね。

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