第74話 新しいダンジョンへ

 ダンジョンの門に手を置いて中に転送された。ここのダンジョンは白い石造りのダンジョンで、蔦が色々な所に巻き付いていて、おしゃれな感じだ。

 ここはまた1フロアの広いダンジョンだ。移動ボードを出して上に乗ると、上まで浮上させる。上から見ると、階段の位置がすぐに分かった。だけど、ダンジョンの情報が欲しいから下に下りて進もう。


 少し進むと、この階での初めての魔物に遭遇した。


「ロックゴーレム?」


『そうみたいだな』


 ヴァイスが倒すと、ぽふん! とドロップ品を落とした。ドロップ品は黄の魔石(中)、丸い氷だった。


「ん? ドロップ品が違うね。なんで丸い氷なんだろうね」


『ふむ、不思議だな。鉱石が落ちないのはなんでだろうな』


 次のロックゴーレムを倒しても鉱石は落ちなかった。ヴァイスがいれば魔物は怖くないから、次々にロックゴーレムを倒しながら進んで行く。鑑定してもロックゴーレムで合っているみたいだ。


「そこまで魔物が溢れている感じじゃなくて良かったね」


『そうだな。溢れたら大変な事になるからな』


「そうだよね~。それにしても、ここのダンジョンはいきなり魔石の中サイズを落とすってことは、難しいダンジョンって事なのかな?」


『そうかもしれんな』


 階段の場所が分かったし、いつもみたいにフローデスベルナーで進もうかな。その方が細かく動ける感じなんだよね。


『なんだ。ボードはダメだったか?』


「ううん。こっちの方が小回りが利く感じがして便利かなって思ったんだよね」


『なるほどな』



 フローデスベルナーで速めに走らせて進んで行く。移動ボードも同じくらいスピードを出せるようになったんだけど、細かく動くにはこちらの方が楽なのだ。慣れてるのもあるだろうけどね。


 3階へ向かう階段を見つけるまでに、丸い氷が大量に手に入った。これは何に使えるんだろうなぁ。3階へ下りると、フロアの中心に櫓が見える。櫓の周りには動物が踊ったりお神輿を担いだりしている。


「なぜ?」


『どうした?』


「なんで、お祭りなの!? 櫓あるし、お神輿まで!?」


『祭りだと!?』


 近くに寄ってみると、カワウソみたいだ。


「なんでカワウソがお祭りしてるのー!?」


『なんでだろうな』


 つい大声を出してしまったら、櫓の周りにいたカワウソ達がこちらを振り返った。こちらを見つけるとキラーン! と目が光った気がする。


「あっ、やばっ!」


『任せろっ!』


 一瞬で櫓とお神輿まで消え去った。さすがヴァイス、凄いね。


「わぁ、一瞬だねぇ」


『当たり前だろう』


「だよね」


 辺り一面ドロップ品が散らばっている。散らばっているドロップ品に瓶がゴロゴロある。あれは何だろう。1本拾い上げて鑑定してみると、日本酒と書いてある。瓶のサイズに違いがあると思ったら、1合サイズから1升サイズまで色々だ。

 しかも、鑑定するたびに甘口、辛口、大吟醸、にごり酒など色々な種類が出ている。


「ヴァイス。これは凄いよ! 日本酒が色々な種類出てくるよー!!」


『日本酒とはなんだ?』


「私がいた所にあったお酒なんだけどね、お料理にも使えるし色々なお料理に合うんだよ!」


『我の知らない酒かっ! よし、もっと倒すぞ!』


「ヴァイスもお酒好きなの?」


『うむ。我もお酒は好きだぞ!』


「よし、沢山倒していこー!」


『任せろっ!』


 とは言っても、このフロアにいたカワウソは全部倒したみたいだけどね。4階へ下りよう。


「あっ!」


『どうした!?』


「3階と4階にあの日本酒を出すカワウソがいたことを考えたら、5階のボスも?」


『よし、早く行くぞ!』


 ボスから出る日本酒は一体どんな美味しい日本酒なのか、とっても楽しみだ!

 4階へ下りるとやっぱりまた櫓を組んで、お神輿を担いでいる。なんでお祭りしてるのか良くわからないけれど、楽しそうだよね。ただ、あれが一斉に襲ってくることを考えると、凄く怖い。


「ヴァイス。あれって普通の冒険者が勝てるの? 一斉に襲ってくるよね?」


『そうだな。しかも動きが速いから、相当な高レベル冒険者パーティーじゃないと難しいだろうな』


「やっぱりそうだよね。3階からそんなのが出るなんて怖いダンジョンだね」


『我らには楽しいだけだがな』


「確かに。魔石も日本酒も手に入って嬉しい限りです!」


 カワウソからは青の魔石(中)が出るんだよね。ダンジョンは魔石の補充が出来て良いよね~。まだまだアイテムボックスには大量に仕舞ってあるけれど、魔石は沢山使うからね。


 5階へ下りるとやっぱりボス部屋の扉が見えた。これは楽しみ過ぎるっ!


「ふふっ、やっぱりボス部屋だねっ!」


『そうだな。どんな日本酒が出るか楽しみだ! 早く行くぞ!』


「うん!」


 5階のボス部屋に入ると、大きなカワウソが座っている。何かを考えているような、なんだか職人っぽい。


「もしかして、杜氏?」


『とじとはなんだ?』


「えっと、日本酒を造る人達を纏める人だよ」


『なるほど、一番偉いって事か』


「そうだね。というかと、さっきのカワウソ達が日本酒を造っていたって事っ!?」


『……倒したな』


「……そうだね」


『まあ、ダンジョンだから大丈夫だろう』


「そ、そうだよね!」


 どうりで日本酒が沢山出たはずだ。きっとダンジョンだからまたカワウソ達が現れるはず!


『とりあえず、倒すか』


「そういえばそうだね。倒さないと次に進めないしね」


 ヴァイスが手を振ると、座っていたカワウソはぽふん! とドロップ品を落として消えた。ドロップ品は青の魔石(大)、一升瓶に入った日本酒、ライスワイン畑の種が出た。


「なにこれ!?」


『なんだ?』


「ライスワイン畑の種って書いてあるよ?」


『なに!? もしかしてお酒がなるのか!?』


「さすがにそれはないんじゃない? あっ、日本酒用のお米が実るのかもしれないね~」


『そうかもしれんな』


 5階の宝玉に手を置いてから6階へ下りよう。次はどんな魔物がいるんだろうなぁ。6階の階段を下りていると、なんか丸っこい茶色い物が動いている。


「なんか茶色いのがいるね?」


『そうだな』


 6階に下りて鑑定してみると、ラムーンと書いてある。よく見ると羊だ。しかも、羊のおでこの辺りに黄色い羊毛で月の模様が書いてある。


「ラムーン、なるほど」


『まあ、倒すか!』


「そうだね、お願いします!」


 ラムーンを倒すと、白の魔石(中)、ラム酒、ラム肉が出た。ラム酒はラムレーズンが作れそうだね。


「ラム酒だ。お菓子に使えそうだね~」


『お菓子! それは良いな!』


 ラム肉はどんなお料理にするか悩んじゃうね。美味しく食べたいね。しかし、ここのダンジョンはお酒が良く出るね。もしかして、お酒ダンジョンなの!?


『どうした?』


「いや、お酒が良く出るなと思って。ここってお酒ダンジョンなのかなって思った所なんだよね」


『鑑定してみればいいのではないか?』


「あっ、また忘れた」


 地面を鑑定してみると、アルコールダンジョンと書いてある。ここのダンジョンは15階までで、やっぱり色々なお酒が出るんだそうだ。


「わぁ、色々なお酒が出るって!」


『それは楽しみだな!』


「お酒に合わせたお料理を作って食べたいね~」


『そいつはいいな!』


 他にはどんなお酒の種類が出るのか、とっても楽しみだ。

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