第60話 かき氷機を作ろう
今日はお店を開けたら、カウンターの中で在庫を増やしていく。後は騎士団用のヒーリング包帯とか作らなきゃだね。
ヴァイスとお話をしながら蒸留水を作る。蒸留水が出来たら、ボウルに蒸留水を入れて錬金棒で混ぜるとぽんぽんとヒーリング包帯が出来ていく。
「孤児院の子供達が増えているのに、お金が足りないのはどうにか出来ないかなぁ」
『そうだな。何か良い考えが浮かぶと良いのだが』
ヒーリング包帯が出来たら1個ずつ包んでいく。
ここのお手伝いにしても、誰か1人とか2人だけになっちゃうからあんまり良くないかな。それよりも大きくなってきた子達がみんな出来るお仕事って何かないかなぁ。
「あれ、カノン。どうしたんだい、何か悩み事かい?」
「あっ、アルマさん」
宿屋の女将であるアルマさんに、ここら辺に住む子供達はどう過ごしているのかを聞いてみる。親がいる子供達は10歳頃からお手伝いを始めるみたいだ。学校がないから必要な事はその都度学ぶらしい。
冒険者ギルドには13歳から登録が出来るらしいから、13歳から冒険者になる子達も多いみたいだ。だけど、13~15歳まではまだ魔法が使えないから、大体街の中での依頼になるんだそう。
「そうかい。孤児院の子供達増えているのかい」
「そうみたいなんですよね。何かお手伝い出来ないかなと思って考えてはいるんですけど、なかなかいいアイデアが浮かばなくて困ってたんです」
「なるほどねぇ。屋台かなんか出来たら収入にもなって良さそうなんだけどねぇ」
「あっ、屋台は良いですね~」
やっぱり収入がないとみんなのご飯を準備出来ないんだから、お野菜を育てるのと並行して収入を増やさないといけないのかな。
「アルマさん、ありがとうございます。何か屋台で売れる物を考えてみます」
「ははっ、カノンがやる気だからきっと孤児院も安泰だねぇ。何か手伝える事があったら言うんだよ」
「ありがとうございます、がんばりますっ!」
アルマさんはおやつを色々買って帰っていった。
子供達が作れる物で屋台で売れる物は何だろう。でも、あんまり火を使うのは心配だから、火を使わないのが良いよね。
「屋台……子供達が作れる物は何だろうなぁ」
『美味しい物だな!』
「美味しい物は分かってるんだけど、何が良いだろうなぁ。なるべく火を使わない物で、屋台で出来る物……むずかしい~」
『これからまだ暑くなるから、冷たい物はどうだ?』
「あっ、それいい! 冷たい物だったら安全で良いね」
冷たい物。ひえひえマドラーがあるから、冷たいジュース? でもそれだとそんなに売れないかもしれない。それこそアイス? でも、なんか新しい物が良いな。
「あっ、かき氷っ!」
『かきごーり?』
「うん。氷をふわっふわに削った物にフルーツのシロップを掛けるんだよ」
『ふむ、それは旨そうだな。カノン、味見だっ!』
「いやいや、まだ作ってないよね!?」
ボウルにお水を入れて、錬金棒で混ぜると氷が出来た。氷が出来たら、また錬金棒で混ぜていくとぽふんと深皿にふわっふわのかき氷が出来た。
アイテムボックスから取り出したベリーのジャムを上に掛けてからヴァイスに出してあげる。
『これがかきごーりか?』
「かき氷ね。本当はもう少しゆるっとしたシロップを掛けるんだけど、今日はジャムね」
『氷だからしゅわっと溶けるな。ふむ、これはさっぱりと旨いな』
「これからもっと暑くなるみたいだから、これはどう?」
『良いと思うぞ』
「よし、夜にかき氷機を作ろう!」
『良いのが思い付いて良かったな』
「うんっ! 相談に乗ってくれてありがとうね」
やっぱり日本にいた時のように、上に氷を入れて下から削られた氷が出てくるのが一番シンプルかなぁ。氷が溶けないように青の魔石、保冷の為の緑の魔石、削るための緑の魔石、後は白の魔石かなぁ。
夕方になりお店を閉めると、ヴァイスと一緒にお夕飯だ。今日はぽてとんから出たじゃがいもでコロッケを作った。
前にじゃがいもを使った事があるので、ボウルにじゃがいもを入れて錬金棒を入れると、ぽふんと潰したじゃがいもになった。具も合わせたら、衣をつけて揚げていこう。今日食べない分はアイテムボックスに仕舞っておこう。後は種を作る為に多めに揚げてアイテムボックスに仕舞っておく。
最近は作った物を全部種に出来るように余分に作るようにしている。種があるとどこかに行ったときに便利なんだよね。
お夕飯のお片付けを済ませたら、錬金部屋へ向かう。今日はかき氷機を作るよ!
錬金釜にミスリルを入れて蓋を閉める。蓋の魔石に手を置き、形を良く思い浮かべて魔力を流す。
チーン!
次はこれに魔石を付けよう。内側に青の魔石(中)、緑の魔石(中)を貼り付けている時にふと思いついた。
「そういえば、フードプロセッサーと同じように作れば良いんだよね。だったら緑の魔石と黒の魔石も必要だよね」
『そうだったな。緑の魔石だけだと泡だて器になった記憶があるな』
「そうだよね」
黒の魔石(中)も貼り付けよう。外側には安全の為の白の魔石(中)と緑の魔石(中)で冷気が逃げないようにしよう。
これで上の穴から削った氷が落ちてくる、はず!
錬金釜に入れて蓋を閉めたら魔力を流す。
チーン!
蓋を開けて鑑定してみると、かき氷機と書いてある。
日本にいた時のかき氷機のイメージで、上側の蓋を開けて氷を入れる。下に器を置いたら氷を入れた所の横を触るとスイッチが入る。手を離したらスイッチも切れるようにしてみた。
「あっ、ちゃんと出来たみたいだよ!」
『お、やったな!』
「フードプロセッサーを思い出して良かったよ~」
『味見するか!』
「いやいや、夜に冷たいの食べて大丈夫なの?」
『我だからな!』
かき氷を食べるだけなのに、そんなにえっへん! ってしなくても良いかと?
可愛いから、なでなでもふもふしちゃうけどね。でも私もきちんと出来ているか確認したいから、氷を入れて作ってみよう。
錬金釜にお水を入れて蓋を閉めて魔力を流すと氷が出来る。この氷をかき氷機の蓋を開けてぽいぽいっと入れる。深皿をかき氷機の下に置いたら、かき氷機の横を触ってスイッチを入れてみよう。少し動いた感じがした後、さらさらとお皿の中に削られた氷が溜まっていく。
「おぉ、出来てる。素敵っ!」
『そうやって出来ていくのだな』
ヴァイスは見ていて楽しそうだ。しっぽがゆらゆらと揺れて楽し気に見つめている。お皿に山になった氷を見てうずうずしている。
かき氷機から手を放すとスイッチが切れて氷が止まった。お皿を取り出してジャムを掛けてあげようとしたら、ヴァイスがぱくり! と氷を食べた。
「あっ」
『む? カノン、味がないぞ?』
「あははっ、そりゃそうだよ。まだジャム掛けてないよ?」
『なんだと!? 早く掛けるのだ!』
「ふふっ。どうぞって言う前に食べるからだよ~」
アイテムボックスからジャムを取り出して掛けてあげると、うれしそうに食べ始めた。
次はシロップを作ろう。お砂糖、水、フルーツの味を付けたいからオレンジをアイテムボックスから取り出した。
ボウルに材料を入れたら錬金釜に入れて蓋を閉めて魔力を流すと、すぐにチーン! と音がしてオレンジシロップが出来た。
『カノン、それはなんだ?』
「オレンジのシロップだよ。かき氷に掛けるんだ~」
私も少し味見してみよう。かき氷機の下にお皿を置いたらスイッチを入れる。さらさらと氷が溜まったので、スイッチを切ってお皿を取り出す。オレンジシロップをとろっと掛けたら完成!
『カノン、我もだっ!』
「いやいや、今食べたでしょ?」
『味見は必要だと思うのだぞ!』
必死過ぎる。あまりにも可愛かったので、私のを一口食べさせてあげた。
『む! これは旨いっ!』
「ふふっ、良かった。また明日食べて良いからね」
『うむ!』
オレンジシロップのかき氷を味見してみると、オレンジの良い香りと爽やかな味でとっても美味しい。これなら屋台で売れる気がする。
明日は他の味も作ってみよう。後はブドウ、レモン、ベリー辺りが良いかな。
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