第44話 嵐の中へ

ゼエッハア、ゼエッハア

 俺はだだっ広い草原をぜえはあ言いながら走っている。ランナーの『スタミナアップ』があっても、未舗装の草原を何キロも走るのは、余計な物を捨ててもなおきついらしい。

 遠くには櫓が見える。その下ではすでに戦闘が始まっているのだ。

 俺は犠牲を少しでも減らすため、クールタイムの明けた『ダッシュ』を使い加速した。



 1時間と少し前


「襲撃…」

「セドナ、最も早く状況を立て直す方法を」

「お待ちください」

 セドナは考え事を始めた。


 10秒の後、なんともセドナらしい作戦を立案した。



 俺は少しだけ休憩をする。

 地面にうつ伏せになりながら水を飲む。余分な体温を冷ますためだ。

 東の果てには胡麻のように櫓が見え、西の果てには稜線が空と地面を区切っている。セドナはあの頂上から狙撃すると言っていたが、本当にできるのだろうか…いや、とにかく信じるほかはないな。


「っし、休憩終わり!」

 俺はパチンと頬を叩き、身体に酸素を回すため余計な思考を放棄した。



櫓3階。緊急指令室

「キリヤさん。状況を教えてください」

「ユウトか。早かったな」

 そりゃまあ、大将がリスポーンして移動するなんて普通は考えつかないでしょう。


「今は櫓のゴブリンとNPCの支援でなんとかなっておる。が、不利だ。

 向こうの大将はハルカ達とゴブリンリーダーが抑えてくれている」

 ゴブリンやNPCとの連携がうまく行っているのは幸いです。


「セドナはどうした」

「山頂で狙撃と指示を下すそうです。おじいちゃんも一緒です」

「そうか…セドナは解像度さえあれば距離は関係無いのか」

「はい。上手く付き合っています」

 セドナは本当によくやっています。脳を機械・・を埋め込んだからと言って、感情が無くなるわけではないのに。


「それでは、わしも頑張らねばなるまい。

 行ってくる」

「武運を」

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