第42話 出発

「そうだ、ハルカとサクマとキリ爺さんはどうしたんだ?」

 階段でユウトに聴く。


「ハルカは東の森で修行をしていて、サクマは<アイスクリーム>の生産部門の講習役に出ていて、桐谷さんはそこの訓練場で稽古をつけています」

 みんな忙しいんだな。


「剣太郎の稽古か…死人が出ないといいがのう」

「大丈夫ですよ。すぐ生き返られますから」

 こえーよ!なんだよその会話。


「あ、タツさん。お久しぶりです」

「ええっと、ビーストロマノフさんだったな。パーティの調子はどうだ?」

 階段を降りたところで桃色髪のビーストロマノフさんに出会った。


「おかげさまで。あのあと支援役の女の子を一人入れて順調にやっています」

「それは良かった…わり、急いでるからまた今度」

「はい、また今度」


 やっぱり本拠地は人が多いな。そう考えながら道へ出る。


「みなさんにリュックを配ります。中には1日分の食料が入っています」

 結構重たい。



 とくに何事も無く櫓まで来た。


「ちょっと待っていてください。ゴブリンリーダーさんに挨拶をしてきます」

 そう言ってユウトはセドナを連れて去った。


「「……」」

 俺と爺さんは特に話すことも無いので互いに無言だ。

 広場にはプレイヤーもゴブリンも、NPCも居る。

 プレイヤーは談笑したり装備を整えたり、ゴブリンの子供は相撲のようなものを取ったり、ゴブリンの大人やNPCは露天を開いている。


「…なあ爺さん」

「…なんじゃ?」

 話は聞いてくれるようだ。


「ユウトが戻ってくるのって時間かかるよな?」

「まあそうじゃな。あいつにも責任や立場があるしの」


 俺は相撲を取っているゴブリンを指差す。


「ゴブリンにさ、人間の武術を教えたら、どうなると思う?」

「奇遇じゃな、ワシもお主とおんなじことを考えておったわい」

 俺と爺さんは顔を見合わす。


「へへっ」

「ぬひひ」

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