第19話【警備隊】
――城内医務室
「国王様!! あの少年が現れました!!」
「!! 場所はどこじゃ?!」
「西にある警備隊詰所近くの路地にて、警備隊が発見した模様ですが、少年は数名の警備隊殺害の後、再び逃走した模様です!」
それを聞いたサオの顔が青ざめた。
「そんな……テツくん……」
「そうか……では全警備隊に連絡せよ! 西警備隊詰所付近にて犯人を発見! 武器防具を装備して犯人確保に向かえ! 抵抗する様なら剣の使用を認める! 生死は問わん! 全力で犯人確保に向かえ!」
「はっ!!」
「王様??!!」
「サオよ、これも国の、いや、全人類の為なのじゃ……わかってくれるの?」
サオは涙を浮かべ国王を睨んだ。
そしてベッドから飛び降り、走り出した。
「サオ!! いかんぞ! 身体だってまだ! サオ!!」
サオはテツを助けに出て行ってしまった。
「サオ……馬鹿者が……お前に一体なにが……」
――ガルイード王国入口
「はあはあ、はあはあ……」
アンジは船場からガルイード王国まで戻ってきていた。
「ど、どこだ? 現場は一体……くそっ!」
アンジはとにかく走り周った。
「……っとに……恐いわね……」
「!!」
するとアンジは殺人事件の噂話をしている人達を見つけた。
「ちょっとあんたたち!!」
「!? な、なに?」
「はあはあ……そ、その殺人事件ってのは、ど、どこで起きたんだ?」
「ええ……? あ、あっちの繁華街の方だけど……?」
「あ、ありがとう!」
アンジは一目散に繁華街の方へと走って行った。
――――
「はあはあ、はあはあ……」
アンジが辿り着くと、そこは立ち入り禁止に区画されていて、数人の警備隊と大勢の野次馬で騒然としていた。
「はあはあ……」
アンジは現場の状況を確認する為、野次馬を掻き分け中へと入って行った。
「くっ! ん! ど、どいてくれ! 通してくれ!」
アンジはなんとか野次馬を掻き分け、最前列までたどり着いた。
「……!?」
アンジが現場を見渡すと、奥の方でなにか大きなモノに布が掛けられている事に気が付いた。
「…………」
アンジは意を決して区画しているロープをかいくぐり、その布の掛けられているモノへと走った。
「あ! コラッ! 関係者以外入っちゃいかん!」
アンジは警備隊の制しを振り切り、その布を取った。
「!!??」
そこには真っ二つに切り裂かれたダダン兄の死体と、数人の警備隊の死体があった。
「なにをしているんだ!」
アンジはたちまち警備隊に取り押さえられた。しかし、アンジは取り押さえられながらもなにかを考え込んでいた。
(あ、あの切り口は……ま、間違いない……)
アンジは思い出していた、以前島にいた頃、森の動物達が無惨にも何者かの手によって惨殺されていた事を、そして、その時見た動物達の死体の切り口と、ダダン兄達の死体の切り口は酷似していた。
(あの時島にいた何者かが、一緒にガルイード王国に来ていたのか……いや……)
アンジに隠しようの無い不安が過ぎり、胸騒ぎを掻き立てた。
「!!」
そしてアンジはまたなにかを発見した。
「うを! コラッ! 動くんじゃない!」
アンジは警備隊を振り切り、発見したものを拾いに行った。
「こ、これは!!??」
それは紛れも無く、以前自分がサオにプレゼントした洋服の切れ端であった。
「……くっ……」
アンジは切れ端を強く握ると、走り去って行った。
――ガルイード王国西側
一方、テツはサオを探して王国内を彷徨っていた。
「サオ、一体どこに行ったんだ?」
「いたぞ! あそこだ!」
「!!」
またも警備隊がテツを発見し、テツを取り囲んだ。
「……面倒臭いなぁ……」
「そこを動くな!! 抵抗するなら容赦はせんぞ!」
(ふっふっふ、この殺人犯は我が隊が仕留める!)
警備隊第三兵長のソウダは手柄を狙っていた。
「……」
「捕らえろ!!」
ソウダの一声で数人の警備隊が、一斉にテツに飛びかかった。
するとテツは高くジャンプし、回避した。
「はははっ! 抵抗したぞ!! 全員抜けぇ!!」
警備隊達は剣を抜いた。
「生死は問わん! 捕らえろ!」
「おおお!!」
一人が剣を振りかぶりテツに襲いかかってくると、テツはすかさず後ろに飛んで避けた。
「うおおお!」
「!?」
さらに後ろから警備隊が襲いかかった。しかしテツは剣をなんなくかわしている。
「うををを!」
「はああああ!」
「!?」
さらに右側左側からも襲いかかってきた。
「チッ……多いな……」
「おはああああああ!」
ついに警備隊の剣がテツを囲むように捉えた!
「!!??」
なんとテツは警備隊の剣を素手で、かすり傷一つ負わず受け止めていた。
「なっ!!??」
そしてテツは剣を掴むとそのまま握り潰した、そしてそのまま一人の警備隊へと近付いた。
「おい、お前達サオをどこへ隠した? サオは僕とアンジの大切な人だ、なにかあったらタダじゃおかないぞ」
警備隊の男はテツに脅え、震えている
「おいカウダー!」
「ヒィ!?」
兵長のソウダがその男の名を叫んだ。
「貴様、我が隊で今まで何を教わってきた? 我が隊の意地を見せつけてやれ」
「ブルブルガタガタ……ひっひぃぃひゃあああああああ!!」
「!!??」
カウダーはテツにガッチリとしがみついた。
「お! 俺ごと切れー!!」
「お、おおおおお!!」
数人の警備隊がカウダーごとテツを突き刺した。
「!?」
しかし倒れたのはカウダーだけで、テツの姿はそこにはなかった。
「い、いない! どこだ?!」
警備隊達の前に何かが投げつけられられた。
「!? ひぃ!!」
それはカウダーの両腕であった、なんとテツはカウダーの両腕をちぎって脱出していたのだった。
「……」
「ひ、怯むな! 行け! 行けー!」
「お、おおおおお!」
「しつこいなぁ……ん?」
その時、なにかがテツの元へと飛んでくると、突如大爆発を起こした。
「や、やったか!?」
爆発の煙の先からテツが飛び出した。
「今のは、アンジが作ったやつ……」
そう、爆発したのはアンジが作った魔法弾であった。
「ま、まったく無傷?! よ、避けたと言うのか? あの一瞬で?」
テツは着地すると辺りを見廻した
「!!」
するとまた魔法弾がテツへと投げられた。しかしテツは魔法弾を手で掴み、その手の中で爆発を抑えた。
「ちと熱かったな……」
「う、うぅ……」
警備隊達は怯んでいる。
「ぐ、ぐぬぅぅ……な、なにをしとる! 怯むな! 殺せ! 早くあの化け物を殺せー!」
ソウダは隊員達をテツの元へと蹴り飛ばした。
「う、うををおおおお!!」
「うぎゃあ!」
「ぎゃああ!」
「ぐわあぁ!」
隊員達が切りかかるも、次々にやられていった。そしてテツは切りかかる隊員達を次々に倒しながら兵長へと近づいて行った。
「ひっ! く! くるなあ! だ、誰か! 早くあの化け物を止めろ!」
「うぎゃあ!」
「ぎゃああ!」
テツはどんどんと兵長に近付いて行く。
「ひっひいっ! だ、だれか! ま、魔法弾! 魔法弾部隊! な、なにをしているんだ! は、早く殺せ! 投げろ!」
「し、しかし、この距離では兵長も無事では済みません!」
「な!? ぐうぅ……だれでもいい! は、早くこいつを殺せー!」
ついにテツはソウダの目前にやって来た。
「……」
「ひっ! ま、待って、殺さないで、も、もうなにもしないから……」
「……」
テツはゆっくりと右手を構えた。
「ひいぃぃぃいい!! だれかぁぁぁああああ!!」
「テツくん!!」
ピクッ! テツの手が止まった 。
「サオ!?」
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