あなたといると、わたしはくるしい。
幻中六花
第1話 嘘をついて笑う
──ランチタイム。
「阿子、また恋の悩み?」
大学の友人である
「うん、そんなとこ」
阿子にはもうすぐ付き合って1年になろうとしている彼氏がいた。名前は
「阿子さ、恋愛してると見てて辛そうなんだよねー。真信君と付き合ってて楽しい?」
「そりゃあまぁ……楽しいよ」
──恋愛していると見ていて辛そう。
この言葉は、高校時代にも親友に言われたことがある。阿子自身は楽しんでいるつもりなのに、周りから見ると辛そうに見えるらしい。
「私達、合わないのかなー」
「いやいや、1年付き合っといてそれはないっしょ。また阿子が臆病になりすぎてんじゃないのー?」
美嘉の言うことは正しかったけれど、阿子に自覚がなかったため、自分のことを『恋に臆病』と言う人が理解できなかった。
「で、どんな悩みなの?」
美嘉は面倒くさいと思いつつも世話焼きタイプなので、いつも阿子のどうしようもない恋の悩みを聞いていた。
「なんかさー、真信君が他の女子と楽しそうに話してる姿を見てられないんだよね。これって私が真信君を信用してないってことじゃない?」
「はっ……そんなことー?」
「本当は話さないでほしいのにそんなこと言えないから、見なかったことにしてさ、デートの時には笑ってさ。それって心から笑えてるのかなーって思うことあるんだ」
美嘉は内臓まで出てきそうなくらい深い深いため息をつく。
「ちょっと阿子、それ本気で悩んでんの? からかってるなら相談なんか乗らないよ?」
「本気だってば……! 自分でもどうしたらいいかわかんないんだもん……」
阿子から見る美嘉はとてもハッキリした性格で、自分もこんなにサバサバできたら悩みも減るだろうな、と思っている。自分にないものを持っている美嘉のことが、阿子は大好きだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます