第四十話
前回のあらすじ、スケルトンライダーは強かった
「うう…尻尾燃えちまった…」
「俺も服燃やされちゃったよ…」
「はは、ボロボロだな…スケルトンホースの突進にウィッチの魔法追撃は卑怯だ…」
「全くだよ」
「とりあえず今日は戻るか…」
「そうだね…でもここまで来るのめんどくさいよなぁ…」
下級ダンジョンはワープポイントなんて無いので1階から順に降りてくるしかないのだ。走ってここまで来るとしても3時間はかかる、それだけで体力が奪われてしまう。
ちなみに他のダンジョンはワープポイントがあるらしい…何故下級ダンジョンだけ置いてくれなかったのか作った人に小一時間問い詰めたい
「しょうがねぇよ、ゆっくり休んでまた出直そう」
「分かった…」
という事で一旦俺達は出直す事にした
「あら今日は早かったのね」
「ああ、9階のスケルトンライダーが手強くてな…自慢の尻尾を燃やしてきやがってさ」
「ちょっと焦げ付いてるもんね…イリスの尻尾」
「あらあら、すぐに手当てしなきゃダメね」
「教会行ってくるか…」
「そういえば治療って教会じゃないと出来ないんだっけ」
「そうね〜、怪我をしたら教会に行ってお布施を払うと治してくれるわ」
「なるほど…でもどうやって治してるんだろ」
回復系は複合魔法じゃなきゃ出来ないし、その複合魔法は実質200年前の勇者の仲間であるエリーさんとその先生のレディッサ先生しか使えないし…
「あれは魔法では無いな」
「そうね、もっと別の何かね」
「ふーん…魔法以外にも治せる方法があるんだね」
「ちょうどこれから行くしリュウも着いてくるか?」
「いいの?」
「まぁ別に着いてくるぐらい大丈夫だろ」
「じゃあ行こっかな」
「おっけ、マリン行ってくるわ〜」
「行ってらっしゃい〜」
教会…どんな所なんだろう?俺を狙ってるって聞いてるけど、もし俺が勇者になる事を断ってたら襲ってた可能性もある奴らだ。油断は出来なさそうだ
…少し警戒した方がいいかな
教会に着いた、見た目はこれでもかと豪華で派手に装飾されてる。正直気味の悪ささえ感じる外装だ
「ここが教会か」
「まぁな…相変わらず趣味の悪い見た目してるな」
「同感だね」
「御布施で儲かってんだろうよ、治療技術を全部独占してっからな」
「それは酷いな…」
「ま、私達がどうこう言ったってどうにもなんないんだけどさ。中に入ろうぜ」
「うん」
教会の中に入る、中も派手な色に派手な色を塗りたくったような城でも見た事ないようなものだった
以下にも悪役が好きそうな見た目だ
「こんにちは、今日はどういった御用でしょうか?」
シスターと思われる女性がこちらに話しかける
「尻尾を怪我しちまってな、治療を頼みたいんだ」
「そうですか、では御布施を頂けますでしょうか」
笑顔を貼り付けたような顔でそう言うシスター
「あいよ、幾らだっけ」
「金貨4枚となっております」
高っ!ぼったくりじゃねぇか
「…また高くなってねぇか?」
「最近お祈りに来る方が減っていましてね、女神の為にも少しだけ増やさせて頂きました。ですが御布施をお供えしたあなた達はきっと女神は祝福なさるはずですよ?」
「前来た時は金貨1枚だったんだけどな」
金貨1枚でも十分高いな…どうなってんだ一体
「では治療はしなくてもよろしいので?」
「ああ…そんなに大怪我でもないしやめとくわ悪いな」
「ふふ…女神への御布施を断るなんて…災が降り掛かってもよろしいのですか?」
強いて言うなら今この状況が災なんですが
「さぁ、そうなった時はそうなった時だろ、じゃな」
「そうですか…それではまたのお越しを…」
「悪いなリュウ、せっかく付き合ってもらったのに」
「いいよ、別に中を見れただけでも十分だし」
そうして俺達は帰ろうとした時
「ちっ、獣人族の犬の癖に…汚らわしい」
聞こえてしまった、ああ…またか、またイリスを侮辱するのか
「今…何か言いました?」
「えっ…ひぃ!」
どいつもこいつもイリスを侮辱するなら消してしまってもいいんじゃないか?力でねじ伏せてしてしまえば…俺が…
…目障りな奴らは全て殺してしまえ
前に聞こえた謎の声とは違う、どこまでも深い闇のような声が聞こえた気がした
「ひ、あっ…」
「取り消してくれませんか?今言ったこと」
感情に抑えが聞かない、俺じゃない誰かがそいつを殺せと言っている。その首を切り落としたらさぞかし心地よいだろうと
いやダメだ…何を考えてる俺は勇者だ、人殺しなんかじゃない…そう思っても身体が言う事をきかない
まるで誰かに乗っ取られたような感じだ
「まぁ取り消しても遅いですけど」
「すみ…ませ…ん…助け…」
「おい、リュウ!何やってるんだ!」
イリスが手で抑える
「えっ?」
「その短剣をしまえ!」
いつの間にか短剣を握っていた
「俺は…すみません、大丈夫ですか?」
俺は何をやってるんだ、俺じゃない誰かってなんだよ厨二病か!まったく…シャレになってねぇよ
イリスが止めてくれなかったら俺…
「ひ、あ、悪魔よ…!ひいい!」
シスターは逃げていった、悪いことしちゃったな…でもイリスを馬鹿にしたのは許さないからな!
俺の方が酷いけど!ほんと申し訳ない…
「大丈夫か…?リュウ」
イリスが心配そうに見つめる
「うん…ごめんちょっと頭に血が上っちゃったみたい」
「気をつけろよ?私の為に怒ってくれるのは嬉しいけど無闇に人殺しはしちゃダメだ」
「分かってる、気をつけるよ」
「よし、じゃさっさと帰ろうぜ」
「うん」
なんだったんだあの声は、でも聞いた事あるような気がする声だった。くそっ謎ばかりだ、それに…
俺は本当に女神に選ばれた勇者なのだろうか…?
自分についてよく分からなくなってきた
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