第3話 新天地
アイトゥーシアとの熱い時間を3回も過ごした俺は、その過程で女の子の触り方や腰の振り方など、今まで知らなかった様々な事をレクチャーしてもらった。
「さて、と。名残惜しいけどそろそろキミを送り出さないとね…」
アイトゥーシアが立ち上がり「うーん」と体を伸ばす。体毛ひとつ無い美しいプロポーションが艶めかしく動く。
彼女と過ごした時間は夢のようだった。頭がボンヤリして本当に夢だったのではないかと思えたが、彼女の内股からわずかに零れだす俺の体液が照らし出す光が、夢では無かったことを証明してくれている。
「簡単に説明すると『ヨンブソダ』って世界は王様がいて騎士がいて、魔法使いやドラゴンとかゴブリンみたいなモンスターのいる世界よ。あなた達がイメージする『異世界ファンタジー』という概念に最も近い世界。細かい違いは多々あると思うけど、あたしも細かく把握してないのでその辺は現地で覚えて調整してちょうだい」
いきなり事務的な説明が始まったが、先程まで俺に抱きついて艶めかしい声を上げていた女の印象が強く残っており、半分ほどしか頭に入って来ない。彼女が未だに全裸なのもそれに拍車を掛けている。
「一応『聖剣』だけあれば何でも問題解決出来る様にはしてあるけど、逆に聖剣を体から1m以上離してしまうと、言葉も通じなくなるし色々な特典も失うから気を付けてね。あ、剣は別に手に持つ必要は無いわ。紐でも鎖でも良いから何らかの形で繋がっていれば、その切れ端から1m以内なら大丈夫だからね」
身振り手振りを交えて説明をしてくれるアイトゥーシア。そして動く度に彼女のたわわな胸が揺れて、俺の注意を惹き付けてくる。
「まぁとにかく『あちら』でキミは最強の存在になれるんだから、めいいっぱい人生を謳歌して… って聞いてる?」
俺の視線がアイトゥーシアの胸と腰に集中しているのに気付いた彼女は不機嫌そうに俺の顔を覗き込んできた。
「もぉ、3回もしたのにまだ足りないの? しょうがないなぁ、もう1回イッとく…?」
そうして自分の胸を手に取って成果物の様に見せつけてくる彼女に、俺は本能の滾りを抑える事が出来なかった……。
☆
「じゃあ本当にサヨナラだね。大丈夫、キミなら向こうできっと良いお相手が見つかるよ。じゃあ
アイトゥーシアがそう言うと、俺の視界は縁から次第に暗くなっていく。何だか死んだ時と似たような感覚に思わず背筋が震える。
やがて視界が真っ暗になって数秒、今度は鳥の
ゆっくりと目を開けると、そこはアイトゥーシアと睦み事を営んだ草原とは全く景色が変わっていた。
そこはなだらかな丘陵地で、街道なのかしっかりと踏み固められて整備されている場所だ。
周囲を一望できる小高い場所で見渡してみると、道の片方は高い壁に囲まれた城塞都市に繋がっているようだ。道の反対側は深い森に繋がっている様に見えた。
それ以外はまばらに木々の生える荒れ地という感じで、少なくとも現代日本じゃないって事は十分に見て取れた。
今の俺は例のアド、アド… 何だっけ? まぁとにかくアイトゥーシアから貰った聖剣を背中に背負い、服装は死んだ時と同じ学生服にスニーカーだった。
ズボンの右ポケットが妙に重いな、と確認してみたら、500円硬貨と近い大きさの金貨が10枚入っていた。きっとこれがこの世界の金なのだろう。
多分この金で当面の生活費や防具等の用意をしろ、という意味だろう。となれば未開の森よりも人のいる町へ足を向けるのが正しい選択だ。
女神とのめくるめく体験に比べて、あまりにも平和に始まった異世界転生ライフに拍子抜けしながら、俺は城塞都市へ向けて歩き始めた。
☆
30分ほど歩いた頃だろうか、前方から女の叫び声の様なものが聞こえた。見れば横転した馬車があり、その周りで何人かが戦っているようだった。
馬車の横で物陰に隠れる様に縮こまっている女と、それを守っている槍の様な長物を使って戦っている男がいて、その周りを10人くらいの腰蓑だけを身に着けた10歳くらいの子供が囲んで男達を襲っている。
これがアレか、子供に見える奴らは『ゴブリン』という魔物ではないかと思われる。アニメやゲームでよく見るゴブリンにそっくりだ。
進行方向の出来事なので来た道を引き返す訳にもいかない。そしてこの世界のゴブリンと思われる奴らが、俺の想像する様な邪悪な奴らとは限らない。ひょっとしたら悪いのは槍を持った男かも知れないのに……。
なんて気分で動けないまま傍観していたら、ゴブリンに囲まれていた槍の男が隙を突かれて背中をナイフで刺されてしまった。
そのまま男は苦悶の表情で膝を付き、倒れ込んでしまう。それを見てゴブリン達は大喜びで男に群がり、手にしたナイフや棍棒で倒れた男を滅多打ちにしだした。
『死者に鞭打つ』なんて慣用句だけの話かと思っていたら、異世界に来てすぐに実例を見せられてしまった訳だ。
あの男はすでに生きてはいないだろう。リアルタイムで惨殺される人の姿を見て、俺は呼吸すらも忘れてゴブリン達の動きを見入っていた。それしか出来なかった……。
邪魔な男が死んだ。ならば次にゴブリン達が狙うのは『一緒にいた女』だ。
絶望に満ちた女の叫び声が再び上がる。その際に女の瞳が俺を捉えた。『生』を切望する女の視線が俺を刺し貫いた。
決してヒロイズムに目覚めた訳では無い。だがそれでも俺は無意識に剣を抜き、ゴブリンの集団に向けて駆け出していた。
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