第8話 魔石採掘①
「おはよう!もう朝だよー!」
「んむゃあ……?」
アネモネが元気な声で挨拶しながら窓を開けて朝日を部屋へと招き入れた。
寝起きのいい方では無いシェリーはベッドの上で呆ける。
「おはよう……朝から元気だね?」
「おはようございます……アネモネさん」
カインとリリィも疲れが抜けきって居ないらしく、気怠けに目を擦る。
「流石に疲れがヤバいわね。許されるなら今日一日ひたすら寝ていたいわ」
「大丈夫?もう一泊この部屋取って休んじゃう?」
アネモネは心配そうにシェリーの頭を撫でる。
「勝手になでるなぁ……」
抵抗するのも億劫なのかシェリーは払い除けもせずベッドに顔を埋めていた。
「アネモネさん、シェリーさんを甘やかしてはいけませんよ?」
「そうだよ。誰が許そうとも僕等の財布が許してはくれないからね」
「うぅ…………わかってるわよぉ」
シェリーはずるずるとベッドから這い出る。
「どうやらゆっくりし過ぎた様です」
身支度を始めたリリィの視線の先の窓からは街の喧騒が聞こえてくた。
「皆気持ち良さそうに寝てたからそっとしててあげようかとも思ったんだけど流石にそろそろ起こさなきゃ不味いかなって。遅過ぎたかな?」
まだ朝と呼べなくも無い頃合いだが太陽はかなり高くまで昇っていた。
短く無い旅路を経てこのエルビスの街へと辿り着きそのまま魔石の採掘に向かって命からがら魔物から逃走したり宿屋を探して街中を歩き回ったりしたのだから経済状況さえ許せば三人を咎める者は居なかっただろう。
「結構寝ちゃってたみたいだね」
「急ぎましょうか」
「…………そうね」
四人は手早く支度を済ませて宿屋を出る。
「さて!じゃんじゃん稼ぐわよー!」
完全に覚醒したアネモネは宿屋の前で意気揚々と拳を掲げて声を張り上げる。
「とりあえず今日の食事と宿の分を稼がないとね」
「昨日アネモネさんに多めに支払って頂いた宿代の精算も忘れてはいけませんよ?」
「急がなくて良いからね?余裕がある時でも全然大丈夫だし」
「いーや!速攻で返して魔術書を買えるまで稼ぐのよ!」
「僕もいつまでも今の中古で安物の装備は不安だからだしっかり稼いで装備を整えたいね」
「私は…………特に欲しい物は有りません。しかし食事と宿に困る日々からは脱却したいですね」
各々の目標を言い合いつつ四人は山へと向かう。
程なくして山の麓にある大きな建物へと辿り着く。
「あの建物が冒険者ギルドだよ。そう言えばアネモネは冒険者登録してる?」
「してないよ?というか私は冒険者じゃないし」
「冒険者じゃなくてもいろんな場所を行き来する商人の人とかは身元の証明の為に登録してるらしいからもしかしてと思ってね」
「登録してないなら今からすれば良いですよ」「そうね。登録にはそんなに時間掛からないしちゃっちゃとやるわよ」
アネモネ達は冒険者ギルドへと入る。
「へぇー、いっぱい人が居るね?」
その建物へはつるはしや武器に青く光る魔石を担いでる人達が忙しなく人が出入りしていた。
その建物へと入りいくつもある受付の一つへと向かうと制服姿の女性の職員が丁寧な応対で出迎えた。
「こんにちは!エルビス冒険者ギルドへようこそ!魔石の採掘ですか?」
「あの、こっちのリザードマンの彼女の冒険者登録をお願いしたいのですが」
「畏まりました。同時に採掘メンバーの追加でしたら採掘許可証をお願いします」
「あっはい」
カインが小さな札を職員の女性へと差し出す。
「お預かりしますね」
職員の女性はそれを受け取ると一礼して奥へと引っ込む。
そしてしばらくして職員の女性が戻ってくる。
「お待たせしました。こちらの空欄に登録される方の情報を記入して下さい」
「はいはーい」
差し出された書類にアネモネは次々と記入していく。
そしてアネモネは採掘についての説明を受け、いよいよ採掘をしに坑道へと向かった。
「いろいろ教えてくれるし荷物を預かって貰えるし必要な道具も貸してくれるなんてここの人達すっごい親切だね!」
アネモネが背負っていた大きな鞄は預け、代わりに魔物の革で作られた丈夫な袋を背負い、腰にはつるはしを下げている。
「借り物なんだから壊すんじゃ無いわよ?説明されたとは思うけど壊れたら弁償させられるんだからね!」
「うん!」
「たくっ……ホントに分かってんのかしら……」
上機嫌なアネモネにシェリーは念を押して注意する。
「手続きも準備も済んだし早速行こうか」
「昨日と同じ目に合わない様に慎重に行きましょう」
四人は魔石ギルドの裏手にある坑道の入り口へと向かう。
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