第42話インテルメッツォ-42 事実/自実
「さぁてぇ、どうでしたかねぇ」
魔王の心中にある想いなど些かも察することはなく、少女はただ己の裡にのみ没頭してゆく。
その不動の心を波打たせる存在は、少女にとってはもうこの世界にたったひとりしかいないのだから。
「
自らの顎に指を当て、記憶を探るように言葉を紡いでゆく。
その応えと回答は、男の理解と寸分違わず合致した。
しかし己が得た正解に、魔王が想い感じることなど何もない。
ただ淡々と、事実を確認しただけに過ぎない。
「成程な。それは確かに仕方がない。如何ともし難い程にな。俺もお前と同じように嬉しく思うぞ。お前の見解と認識を、改めて知ることが出来たのだからな。だが、忘れてくれるなよ。お前はまだ、俺の最初の問いに応えてはいないことを」
その言葉に少女は両手を会わせて、今まさに思い出してたというような仕種をして見せる。
浮世離れした雰囲気を持ちながら、そんな俗な振る舞いが奇妙な程にこの少女には似合っていた。
「そうでしたそうでしたぁ。わたしとしたことがあなたの初めてを蔑ろにしてしまうなど、あってはならぬことでしたぁ。くふふ、などと言っても本当はちゃ~んと覚えておりまたよぉ。とは申しましても、お応えは同じなのですよねぇ。いみじくも、答えが被ってしまっているのですよねぇ。ああ、失礼しました。被っているなどと、男性には禁句で御座いましたねぇ。申し訳ありませんでしたぁ、と謝ったので許してくださいねぇ。それでもあえて言葉にするなら、仕方がなかった、のひと言で尽きてしまいすねぇ。いやはや、全く以て面白みがなくて誠に恐縮の至りに御座いますよぉ。ただの一度で打ち止めなどと、わたしとしても大変不本意な幕引きで物足りなかったのですがぁ。しかし何と申しましても最早これだけが固定されてしまった事実の全てになりすのでぇ、そこはどうかご容赦くださいねぇ。わたしは正直者ですから、あなたに嘘など申しませんよ?」
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