幕間:再会の印象
──綾人──
今日、二年ぶりに彼女に再開した。
彼女、結亜は最後に別れた時とは何もかもが違っていた。
最後に結亜と会ったのは、中学三年の夏休み前だった。
あの時は、今のように明るい髪色ではなく、黒色で艶のある綺麗な髪をしていた。
結亜もそれを褒められると喜んでいた。
結亜は、当時、学校では目立たない方だった。
休み時間も読書をして、クラスメイトとは話さずに静かに過ごしていた。
美術部だった結亜と運命的な出会い方をした俺は彼女に自分にはない何かを感じた。そんな清廉で心優しい結亜に惹かれ、付き合うこととなったわけだが。
よもやそんな結亜が外見も性格も変わっていようとは露程も思わなかった。
俺が大好きだと言った、綺麗な黒髪も金に近い茶色に染まり、サラサラだった髪質はゆるふわっぽい感じになっていた。
流石にちょっとショックだった。
俺の中の思い出がガララと音を立てて崩れた。
いや、ホントどうなってんの?
勘弁してくれ。よりにもよってなんでギャルなんかに。
結亜は絶対に黒髪の清楚の方が似合う! なのになんだその髪型に派手なメイク。長い爪に短いスカート! おまけに胸までドーン!! あれは、なかなか絶景……こほん。
谷間が気になって勉強どころではないわ。
あれは俺の勉強意欲を妨げる。危険だ。
しかし、マジで何があった?
聞きたいことはいっぱいある。
だけど、変わってしまった結亜に前のように接することができなかった。
まず再会の仕方が最悪だった。
あんな再会の仕方さえしなければ、もう少しマシだったかもしれない。
それでも今の俺はギャルに対していいイメージを持っていないので変わらなかったかもしれないが。
あーだこーだ言ってても仕方ない。
なぜかわからないけど、今の俺と今の彼女はお互いに反発しあってしまう。
本当だったら、懐かしい思い出話に花を咲かせるところだったが、そんな雰囲気ではない。
俺自身、やっぱりギャルという人種が苦手ということもあり、どうしてもよそよそしい態度をとってしまうからだろうか。
いや……酷い別れ方をした彼女への負い目からかもしれない。
二年経ってもこのちっぽけなプライドは全く成長してくれてないんだと実感した。
結亜もきっと俺のことを同じように思っていることに違いない。
昔の俺は、中学の時の俺は、かなり無理していた。
彼女にとってはキラキラしたように見えた俺は作り物だったのだから。
今の方がどちらかと言えば、素に近い。
だから結亜は、そんな俺に酷く幻滅していることだろう。
そうでもなけりゃ、俺のことをあんな風にからかってきたりはしまい。
それに俺もらしくなかった。
突然の再会に動揺していた。あんなに誰かと話したのも星矢以外では久しぶりだったかもしれない。少しだけ。ほんの少しだけ浮き足立っていたかもしれない。
俺は平穏に目立つことなく、学校生活を終えたいのに。
次からはあまり結亜とも関わらないようにしなければ。
それでも……久しぶりにした会話は悪くはなかった。
そういえば最後にとんでもないことをしてしまったような……?
忘れよう。うん、それがいい。
うあああああああああああああああああああああ。
最悪の再会だったけど、これからもまた付き合いが長くなりそうな予感がした。
***
──結亜──
今日、二年ぶりに彼に再開した。
彼、綾人くんは最後に別れた時とは何もかもが違っていた。
最後に綾人くんと会ったのは、中学三年の夏休み前だった。
あの時は、今のように長く伸びきった髪型ではなく、爽やかな短いスポーツマンって感じの髪型だった。
それに、体も昔に比べて筋肉が落ちてヒョロヒョロになっていたように感じる。
綾人くんは、当時、学校の人気者だった。
いつも周りには人がいて、楽しそうにしている姿が印象的だった。
私にとって綾人くんは手の届かない存在であり、カッコよく、評判もいい彼に影ながら密かに恋心を寄せていた。クラスで端っこにいる地味だった私が。
そんな彼とまさか付き合うことなるとは天地がひっくり返らない限りありえないと思っていた。
天地はひっくり返った。付き合ってしまった。結局、別れてしまったけど。
そんな彼が二年の月日を経て、まさかあんな目立たないような地味な存在になっているとは思ってもいなかった。
見た目だけじゃない。性格も。私に優しく微笑んでくれてた彼はいなくなり、嫌味ったらしい男になっていた。
流石にちょっとショックだった。
私の中の思い出がガララと音を立てて崩れた。
いやいやいやいや。マジでやめてくんない?
勘弁してよ……。
私の中のかっこいい綾人くんを返して!! その長ったらしい髪も切って、前みたいに澄んだ瞳で私を見て、優しく微笑んでよねっ!! 久しぶりあったんだから元カレにそれくらい求めたっていいだろう。
あーだこーだ言ってても仕方ない。
なぜかわからないけど、今の私と今の彼はお互いに反発しあってしまう。
本当だったら、懐かしい思い出話に花を咲かせるところだったが、そんな雰囲気ではない。
私自身、彼にどういう風に接すればいいのかわからなくなってしまった。まるで昔の自分を見ているようで。
いや……酷い別れ方をした彼への負い目からかもしれない。
二年経ってもこのちっぽけなプライドは全く成長してくれてないんだと実感した。
綾人くんもきっと私のことを同じように思っていることに違いない。
昔の私は、純朴で平凡なふっつーの少女だった。
彼のことが大好きでそんな彼を精一杯支える健気な娘。なんていうか、ザ・女の子って感じ。それが私だった。
今の私にはそんな風に装うには到底無理だろう。息苦しくって仕方ない。
だから綾人くんは、今の私に酷く幻滅していると思う。
そうでもなければ、私のことをあんな風に嫌味ったらしく憎まれ口を叩いたりしない。
私は今後もこの学校で楽しく過ごしたい。前みたいに暗く、パッとしない生活なんて真っ平ごめんだ。
だけど、だからこそ。綾人くんのことは放っておける気はしない。きっとまた口喧嘩になっちゃうだろうけど。
そういえば、最後のあれはなんだったの?
あんなの卑怯すぎる。
なんだあれは。不意打ちだった。
あんな王子様キャラみたいな言葉、今の今まで聞いたことないのに。
あの時は、めちゃくちゃムカついたけど……。
今思えば、悪くなかったかも。じゅるり……。
はっ!? いかんいかん。
奴は私を陥れるためにそうしたんだ。完全に私をバカにした。
昔の綾人くんにならまだしも、今のあんなやつにときめいたなんて絶対違うから。
もう一度、腹を括りなおそう。
アイツに絶対勝つ。やり返してやるっ!!
最悪の再会だったけど、これからもまた付き合いが長くなりそうな予感がした。
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