２・５世帯のなみだ

第10話

悲劇はさらに、アタシの実家にも及んだ。

９月20日の深夜11時半過ぎのことであった。

ところ変わって、広島県福山市松永町にあるコンビニにて…

この時、アタシの次兄の23歳の兄嫁さんが19歳のフリーアルバイターの弟さんを迎えに来た。

弟を出迎えた次兄の兄嫁さんは、ヘルメットを渡した。

その後、弟は兄嫁さんが運転しているヤマハのスクーターに乗って、福山市高西町の自宅へ向かった。

自宅では、次兄が夜食を作って兄嫁さんと弟さんの帰りを待っていた。

出発してから20分が過ぎた頃であった。

(ブーン!!ブーン!!ブーン!!)

国道２号線を走っていた時、大型バイクの暴走族のグループが次兄の兄嫁さんと弟さんたちを囲むようにして走った。

次兄の兄嫁さんと弟さんは、危険をさけるために今津町の交差点から県道に迂回した。

その時、再び暴走族に取り囲まれた。

おりが悪いことに、19歳の弟さんが数日前に暴走族とトラブっていた。

その際に、弟さんは暴走族の男ふたりを鉄パイプで殴って殺した。

彼らは、弟さんに仕返しする目的で取り囲んだ。

その後、次兄の兄嫁さんと弟さんは暴走族のグループに柳津町の浄化センターの近くにある公園に連れて行かれた。

その直後に、姉弟は引き離された。

弟さんは集団で袋叩きにされた。

「やめて!!やめて!!イヤ!!やめて!!」

次兄の兄嫁さんは、暴走族のグループたちに倒されて身体を押さえつけられた。

その後、クリーム色のスカートを脱がされた。

「やめて!!イヤ!!やめて!!助けて!!ギャー!!ギャー!!」

次兄の兄嫁さんは、暴走族のグループに集団で犯された後、ボロボロに傷ついた状態で亡くなった。

兄嫁さんの弟さんは心肺停止の状態で救急車で搬送されたが、救急搬送中に亡くなった。

９月21日のことであった。

新居浜にいるアタシの元に電話がかかった。

電話は、アタシの実家の母からであった。

『（次兄）がお嫁さんを亡くしたのでひどく悲しんでいるから大至急帰ってきて…』

アタシは、実家がある三原に帰ることにした。

実家の女のコのきょうだいはアタシしかいない…

ちょうどよかったわ…

リコンして、実家へ帰ろうと思っていたのよ…

荷造りを済ませた後、アタシはボストンバックと赤茶色のバッグを持って新居浜駅へ向かった。

新居浜駅から特急列車と山陽本線の電車を乗り継いで三原駅へ行った。

三原駅で電車を降りたアタシは、改札口を出た後に急いで宮浦にある実家に戻った。

アタシが実家に戻った時であった。

出迎えた母は、アタシに泣きそうな声で言うた。

「とし子…シュウサクのお嫁さんが…暴走族のグループにレイプされて亡くなった…としこ…シュウサクのそばにいてね。」

「分かったわ。」

母は、次兄に過度に優しい声で言うた。

「シュウサク、とし子が帰ってきたよ。」

「シュウサクお兄ちゃん。」

アタシが戻ってきた時、次兄は泣いて喜んだ。

次兄は、アタシのことが大好きである。

アタシが戻ってきたので、アタシの乳房(むね)に顔をうずめて泣いた。

アタシの実家の家族は、両親と上に６人の兄とアタシの９人家族である。

長兄と三兄から六兄は県外や海外に生活の拠点を構えていて実家にいない。

女の子のきょうだいはアタシしかいない…

なので、次兄が元気になるまでそばについてあげることにした。

さて、その頃であった。

武方さんは裁判所に破産宣告をしたが、会社経営は続けた。

亡き父親が苦心して作った会社をつぶしたくない…

何としてでも再建させたい…

武方さんは、新しい委託先を探し続けていたが苦戦を強いられた。

会社を一軒一軒ずつ回って、配送業務の委託をお願いしたけど、断られてばかりいた。

会社を立て直そうと決心して、必死にがんばったけど、三日坊主で終わった。

その上にまた、頼みの信金も人事異動で支店長が変わったから、融資を断られた。

武方さんは『ヤーメタ』と言うてすべて放棄した。

次の朝、武方さんは家族と一緒に荷物をまとめて家出した。

その直後に、ヤクザの男たちが武方さんの家に怒鳴り込みに来た。

武方さんは、暴力団関係者の男から10億円を借りいれていた。

彼らは、武方さんに借金を踏みたおされたので激怒していた。

家のキンリンは、危険な状態におちいった。

10月21日頃であった。

ところ変わって、アタシの実家にて…

アタシは、次兄のそばについていた。

この時、次兄は立ち直るどころか赤ちゃん返りをしたあげくに、再起不能におちいった。

アタシは、限度を感じた。

次兄がビービー泣きながら『そばにいてくれ。』と言うから、アタシはそばにずっといた。

限度を感じた母は『もうこの際だからシュウサクを施設へ入れようか？』と言うた。

父も『そうするしかない…』と言うた。

次兄は、三原市郊外にある福祉施設へ移ることが決まった。

次兄は、極度のコミュニケーション障がいを抱えている…

ヘルパーさんの助けがないとやって行けない…

ごめんね…

シュウサク兄さんごめんね…

10月23日のことであった。

次兄は、福祉施設に強制入所した。

今後は、ヘルパーさんにお世話してもらうことになった。

10月22日に次兄を見送ったアタシは、すぐに新居浜へ帰った。

その間、義兄が家出して行方不明になった。

アタシは、その日の午後に壬生川のお寺さんへ行って、義母の遺骨にお参りをした。

お参りを終えて、新居浜へ向かおうとした時であった。

(カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…カンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカンカン…)

遠くでハンショウが鳴っていた…

それを聞いたアタシは、遠くで恐ろしい黒煙がもくもくと上がっていたのを見た。

もしかしたら…

アタシは、赤茶色のバッグを持って煙が上がっている方へ走った。

そしたら…

あいつの家が、激しく燃えていた。

アタシは、幼稚園の跡地へやって来た。

火災現場に消防車が６台止まっていた。

現場はどうなっていたのか…

あいつの家から揮発油のにおいが数日前から発生していたとキンリンの人から聞いた。

もしかしたら義父が…

アタシの不安は、さらに増幅した。

激しく燃え上がっている家から救助隊員に救助された義父は、身体が揮発油で濡れていた。

義父は、床にこぼれた揮発油に火を放った。

「放してくれ!!ワシは、あの家で人生を終えたいのじゃ!!」

「行きましょう!!」

「ヤダヤダヤダ!!」

義父は、このあと近所の人たちから集団暴行を喰らった。

そして、亡くなった。

アタシは、激しく燃え上がるあいつの家を冷めた目つきでながめていた。

アタシは…

クソッタレのダンナと結婚したから、大失敗したのよ…

もうイヤ…

結婚なんかもうイヤ…