良き旅路を

前略

僕は羨ましくて仕方がなかった

誰にでも好かれていて

僕よりも才能があって

何よりも色々な人に褒めてもらっていた

僕はそんなあの人が羨ましくて仕方がなかった


それでも僕はあなたの事が好きだった

傍に居て苦しむのは分かっていたけれど

それでも眼前の温みには勝てなかった

幸せを知らない僕には

あなたが見せてくれた幸福の虚像が拠り所だった


そういうあなたが上に行くと言った

僕が行けない世界を目指すと言った

僕は上に行けないことを知っていたから

それでも置いていかれる事が怖かった

だから僕は子供みたいにグズって泣いた


痛ぇ奴だと思うだろ

今思えば僕だってそう思うさ

けどな、当時の僕は必死だったんだ

置いていかれないようにと必死だった

まあどうなったかは君が今見ているどおりさ


結局あの人の選択は正しかった

今どうしてるかは全く知らないけど

それでも少しでも上に行けたんなら

きっとあの人にとって最善な選択だったんだ

そんなあの人を純粋に賞賛するよ


さて今からするのはそんな僕の今の話

何もかも足りなくて嫌われ者の僕の話

人生に正解なんてないと言うけれど

こんな人生を不正解と言わずして何と言う

それでもそんな人生に足掻き続けている僕の話

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る