膠着 2 ※
「赤い本」
一
それは、赤い表紙の古びた本でした。
どうこうと表現しにくい赤なのですが、不思議なことに、その本を見つめておりますと、なぜだかもの言えぬ安堵に包まれてしまうものですから、ついつい手にとっていたのです。
当時私は、何とも懐かしく郷愁を誘うその古本屋の魅力に取り憑かれ、繁く足を運ぶようになったのでございます。
初めて来たとは思えない不思議な感覚。前世にでも訪れたことがあるのでしょうか、そんな非現実なセンシビリティにいつも囚われておりました。聞けば戦後間もない昭和23年、日本に滞在する米軍兵士の慰安の為に、
今にも崩れ落ちそうな本の山。暫く眺めていると、その煤けた背表紙がやたらと気になりはじめ、鋭感とはこのようなことを言うのでしょう、赤子は母親に抱かれ、母の胸の鼓動にこの上もなく安堵すると言いますが、自身の動悸が血管を伝わり、その振動が耳骨にゆっくりと、確実に鳴り響いてゆくのを感じました。
つま先立ちで、崩れぬよう慎重に上に積まれた本を
其処には…………
そこには………………?
そこにはそこには……
……だめだ、出てこない……
書けない……
スランプかぁ~っ!(泣)
……熱い紅茶でも飲もう
うん、そうしよう。
・・・
馬場俊英
「スタートライン」
https://youtu.be/R1HkXSVxLyU
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