第2話 一等車のお姫さまと三等車の夢見る眼鏡の少女
3等車の片隅では、地味な着物に眼鏡をかけた少女
隅の方で、そっと座っている
手には、人から貰ったボロボロの小説が1冊
1等車の少女は 楽しげに窓から 景色を眺めている
「もうすぐ 到着よね まだしばらくは学校はお休みして
それまで、家庭教師についてお勉強 軽井沢の別荘でのテニスが楽しみだわ
そうそう、横浜で御買物も楽しみ ふふ」
「お菓子とお茶をどうぞ」「ああ、有難う」
受け取ったのは 和菓子に冷たい緑茶
「みたらし団子も美味しいわ」パクパク食べつつ満足そうに笑う
「有栖(ありす)お嬢様、お食事会やお茶会でのご用意も忘れずに」付き人の一人が言う
「わかっているわ 素敵な方に会えるといいのですけど」茶目っ気たっぷりに笑う有栖
「華族の子爵さまに異国の貿易商の方に必ずご挨拶するようにと
お世話になった叔母様が言われていたけど・・」
口元には笑みを浮かべる有栖(ありす)
「幼馴染の京矢お兄様にお会い出来るのも楽しみですわ」
「大きな店の店主 まだお若いのに
最近では 仕事の合間に学問を学ぶために 大学に通われておられるそうで」
「もともと学問はお好きでしたもの」
懐かしげに 幼い時分の頃を思い浮かべる
「あ、そのおせんべいも欲しいわ」「どうぞ 有栖さま」
「そうそう 赤い袴(はかま)と袴に合う着物ももう少し買わなくちゃね
学校では、皆様はその服装が多いとか」
「やはり、お店で買い物ね」うっとりとした表情を浮かべた有栖
少し離れた席には 華族の子爵が まだ 互いの存在を知らすに
偶然 座っていた
静かに機関車から 見える風景をぼんやりと見ていた
彼は、以前 恋に落ちた人の事を考えていた
早く 忘れなくては・・あの方は すでに人の妻
そう・・早く
たまらずに深いため息をつく
「ふう」 本を読み終えて 一息をつく少女
眼鏡に地味な着物で静かに座っていた
「恋物語の本は素敵」
あたしのような者には、こんな素敵なお話は縁のない事ですけど・・ふふ
「・・異国のシンデレラみたいに魔法使いが現れて、ガラスの靴やかぼちゃの馬車に素晴らしいドレスを頂けたらいいのですけど なんて うふふ」
3等車の少女は 孤児院を出るときに頂いた 布の包みから
取り出して、おにぎりを一口食べる 他にも林檎もある
そっとため息をつく
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