37.キュメネ邑へ
僕達が保護したソニヤさんをアイナさんとライラさんが連れて行った翌日の朝は一先ず穏やかだった。
エリナさんにとってはかもしれないけどね。
今日もエリナさんは僕の寝床に潜り込んでいる。たった数日なのに僕も慣れてしまったみたいだ。
昨日も寒いからとしれっと言ってきた。多分それは言い訳だ。これはもう意図して潜り込んできている筈。
僕も悪い気はしないのだからお互い様という事なのだろうか?でも一緒に寝ているだけで何をしたという訳でもない。・・・と、思う。
何しろ僕は一度眠ってしまうと容易に起きないらしい。でも朝になればきちんと起きれるんだけどね。だから僕の寝床には容易に忍び込めるということみたいだ。
よく考えたらこれって僕一人で野宿していたらアウトじゃないか?緊張感が足りないのだろうか?改善できるようなら検討しないと。
などと穏やかなエリナさんの寝顔を見ながら考えていた。
火傷の傷は痛々しいのだけど綺麗な顔だよな。長い金髪は本当にツヤツヤで綺麗で触り心地が抜群にいい。癖になる感触だから暫く梳いていたら唐突に僕の胸に顔をくっつけてきた。
あれ?起きていたのか?見ると顔は見えないけど耳が真っ赤になっている。
これは羞恥か?怒りか?
・・・・・前者である事を願おう。
「エリナさん。もしかして結構前から起きてました?」
「・・・・」
おおぅ。頭がゴリゴリ押し付けられてくる。しかも無言。これは前者だろう。何か可愛らしい。
結構素な所を見せてくれるようになったよね。それだけ頼って貰っているのかと思うと、無条件で嬉しい。こんな好い人の信頼を得ているんだよ。問答無用で嬉しい。
ついついエリナさんの髪を触ってしまう。胸枕のような体勢だな。うん、ありがとうございます。
・・・なんかずっとこうしていたいな。
どうやら僕もエリナさんに心地よいものを感じているかも。
寝起きなのに既に安心しているってなんだろ。もう少しこうしていよう。
「・・・なんでかな。ケイ君とこうしていると凄い安心するよ。もうちょっとこうしていて良い?」
「うん。いいよ。僕も安心できるんだ。つい最近まで酷かったから、その反動なのかな?」
「え~。それって誰でも良いって事なの?」
僕の胸に埋めていた顔をあげ避難するように僕を見つめてくる。
怒ってますよアピールのような体だけど。怒って無いのはなんとなく分かる。勿論エリナさんが聞いてくるように誰でも良い訳じゃない。
エリナさんは僕の体にのっかって這い上がって来る。・・・近いデスヨ。
「まだ数日なのに僕は何言っているんだと思うけど、エリナさんだからだと思う。最初はビックリしたけど慣れると安心するんだよ。ほんとだよ」
「本当に?口だけではなんとでも言えますからね~」
「う~ん。それは難しいですね。どうしたら信じてもらえるかな?」
「それはケイ君が考えてください。言葉よりも・・・ね?」
「・・考えときます」
う・・・課題が増えた。
でも、本当に話し方が砕けてきている。それに距離感も近い。
二人でいるときは常に一緒にいたがるようになってきたんだもの。僕が思うのもなんだけど・・・俗にいう恋人関係でないんだからね。
この位の年齢の親子、兄弟でもこんなに近くはならないだろう。だけども僕等二人には嫌悪感は全くない。
恥ずかしいときは時折あるんだけどね。なんか妙な間になるときがある。お互いに踏み込みたいけど踏み込めないような感じ。
僕は僕がまだ色々分かっていない。記憶が戻ってないからだ。少しでも戻れば考えようもあるのだけど。どうにも戻らないんだ。これについてはもどかしい。
だけど今はこの場所で生活していくのが最優先だ。それができずにあれこれ考えたりしてもね。
なんだけど、今は周辺の邑が存続の危機にあるようだ。僕は現地を見ていないから状況が全く分からない。
今の所ソニヤさん、アイナさん、ライラさんからの話だけだ。彼女達は嘘はつかない。特にソニヤさんはキュメネ邑で襲撃を受けた当事者だ。あの様子で嘘などある筈がない。
そして僕達はそのキュメネ邑に向かうのだ。周辺の邑の状況が分からないのに、この岩場で生活が確保できるかも怪しい。危険ではあるけど、やはり知っておかないといけない。
うん。頑張ろう。
しばらくのんびりとした時間を過ごして僕達は起床する。食事は昨日から採集している木の実や果物。昨日獲った川魚は軽く焼いて持ち運ぶ。今日の移動中に食べる予定。
エリナさんの助言もあってキュメネ邑にはお昼位に確認する予定だ。なんでもキュメネ邑は牧畜の邑でお昼は邑人は皆休んでいるそうだ。
夜明け前から働きお昼前に休んで夕方に働くパターンなんだと。だからお昼に様子を見れば分かりやすいのでは、と助言してくれたんだ。
これもエリナさんの知識からなんだけどこの岩場からキュメネ邑までは近いらしい。走れば鐘一つ分(4時間)の距離なんだって。これはかなり近い。やっぱり周辺の安全確認は必要だ。
出かける準備を整えてからキュメネ邑に向かう。
キュメネ邑はこの岩場から南西の方角で途中に川がある。上流のほうが浅いから最初は西に向かって川を渡ったら川沿いに進めばいいとの事。これはソニヤさんの助言。
エリナさんもソニヤさんの助言を全面的に賛成みたい。僕は何も分からないから道順については従うだけ。
僕の主な役目はエリナさんの安全確保だ。今回はエリナさんと一緒に行動する。エリナさんは戦う力は無い。護身程度の嗜みはあるそうだけど戦力として数えないで欲しいと言われている。
何かあれば僕の異能を使って危機を回避するのだ。勿論キュメネ邑の確認が終われば異能を使った超速で戻る予定だ。
危険な事は分かっている。でも今は一人で生きてくんじゃないんだ。エリナさんの安全が確保できなければ意味がない。この岩場が無理なら遥か北の邑を目指すのも良い。
僕は僕の意思で行動している。誰かに言われるだけでなく自分で考えて判断している。
これが良い判断なのかは記憶の無い僕には判断ができない。でも何もしないで襲われるのはまっぴらだ。
ならば可能な限り相手の情報を知らないといけない。
さて何が分かるのか。不安が多いけどやっぱり動かないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます