雪ちゃんとの生活、開始 8

「はぁっ!重かった~!」


ドサドサドサッと、買い物袋をキッチンへに置いた。


「流石に買い過ぎちゃいましたね」


「そう?二人分の一週間なんだから、これ位にはなるでしょ」


「いやでも、買い物袋5個分は買い過ぎじゃあ……」


「問題ないわよ。日持ちするのは後で使えば良いんだし」


「まあ、そうですね。では、さっそく作り始めますね!」


思いの外買い物に時間が掛ってしまい、時刻はすでに20時になろうかと言う所。


冷蔵庫に入れるべき物はさっさか入れて、ハンバーグ作りにとりかかろう。


「じゃあ、私ちょっと着替えて来ますね」


作業の前に、動きやすい格好に着替えて来ないと。


すると雪ちゃんが、ジトーっと細くした目で私を見る。


「な、なんですか?」


「またあのスウェット着るの?」


「はい。あれが一番動きやすいので」


「折角可愛い部屋着買ってあげたのに……」


雪ちゃんが唇を尖らせながら、ブーブー文句を言っている。


「あんなんじゃ料理するのに邪魔です。スウェットが一番です」


ピシャッと言い切る。


後ろでブツブツ言っている雪ちゃんは放っておいて、私はスウェットに着替える為に部屋戻った。


ドアを後ろ手に閉め、はぁ…と小さく息を吐いた。


買って来た(と言っても私が買ったんじゃない)部屋着を、袋から出してベッドに広げる。


「こんなん、着れないよ……」


形状はワンピースだけど、所々にレースやリボンが散りばめられていて、とてもメルヘンな作りになっている。


「要らないって言ったのに……」


私はその時あった事を思い出す――。




一悶着(テーブルの件)があった後に入った雑貨屋。私よりも雪ちゃんの方が一目惚れをしたこの部屋着。


これが良い!!と言う雪ちゃんの意見を「要らない」と一蹴いっしゅうし、買わずにそのお店を出たハズなのに、「トイレに行って来る」と言って中々帰って来ない雪ちゃんが何か袋を持って帰って来た。


「なんですか?それ……」


少し…いや、もの凄く嫌な予感がして恐る恐る聞いたら、


「はい。さっきの部屋着。買っちゃった♡」


と、満面の笑みでその袋を手渡された。


やっぱり……。


ガクッと項垂れる。


「要らないって言ったじゃないですか……」


「うん。でも絶対に似合うから」


「……………」


この強引な所、どうにかならないのかな?


と、私は心の中で盛大に溜め息を吐いた。




――ベッドに広げたその部屋着をハンガーに掛け、クローゼットへしまう。


申し訳ないけど、多分着る事はないだろう。


「……よしっ!着替えてハンバーグ!」


私は、一番しっくり行くスウェットに着替え、髪の毛をひとつに括り、キッチンへと戻った。

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