雪ちゃんとの生活、開始 1

――チュンチュン……


        ……チチチッ――



柔らかく射し込む朝日。


小鳥のさえずり。


自分のベッドとは比べ物にならない位ふかふかな布団の中で、「うーん」と伸びをする。


「朝、か……」


時計に目をやると、7時半丁度を指していた。


「そろそろ起きるか……」


昨夜の「時間厳守よっ!」と言う雪ちゃんの言葉を思い出し、のそのそと起き上がる。


「あ、そーだ。朝ゴハンってどうするんだろう……」


そう思ったら、お腹がグゥ~っと鳴った。


「お腹空いたな」


昨夜あんな事があっても、生きてる証拠。お腹は空く。


流石にネグリジェのまま朝食、は私が嫌なので、昨日おおよそ必要な物を詰めて持って来たバッグから、いつも部屋着で着ているTシャツ、スウェット上下を取り出し着替える。


「うん。やっぱりこっちが落ち着くわ」


持参したタオルを持って洗面所へ。


サッパリしたかったのでお湯ではなくお水を出した。


顔を洗い、髪を後ろにひとつに括り、鏡を見る。


「うん」


少し濡れた洗面台をタオルで拭き、リビングへ向かう。


「あら、おはよう。早いのね」


そこには、新聞を読みながらソファーに腰を下ろす雪ちゃんがいた。


「おはようございます」


朝食はどうするのか、聞いてみよう。


「あの……」


目の前に立って声を掛けると、雪ちゃんは読んでいた新聞をソファーに置き、眉を寄せ、私を上から下まで舐め回すようにジロジロと見た。


「な、なんですか?」


「アンタさ……」


「はい」


「もう少し可愛いの着た方が良いわよ?」


「……は?」


「それ」


『それ』と指差されたのは、今着ているスウェット。


「よ、余計なお世話ですよっ!これが一番落ち着くんです!」


私は、プイッ!とそっぽを向く。


(何を着ようが私の勝手だし!)


「せっかく可愛い顔してるのに……勿体ないわねぇ……」


はぁっ…と、雪ちゃんが頭を抱える。


そ、そんなにダメですか。上下スウェットが。


「そ、それより」


雪ちゃんが頭を抱えたまま、「なによ」と答える。


「朝食はどうしていたんでしょう?」


私の問い掛けに頭を上げ、こう答えた。


「ああ、適当に食べていたわよ。シリアルとか……」


「は?」


その答えに、私は唖然とする。


「シリアル……?」


別に、シリアルが悪い訳じゃない。だけど、その日のエネルギー源である朝食を、「適当」なんて粗末に扱うだなんて!


「分かりました」


私はそれだけ言って、キッチンへ向かう。


私はおもむろに冷蔵庫の前に立って、「開けさせて頂きますね」と断りを入れ、パカッと冷蔵庫を開けた。


ザッと見渡す。


中には、『牛乳・食パン・卵・ベーコン・トマト・チーズ・レタス・ブロッコリー』などが入っていた。


それらを全て取り出す。調味料は……あ、あった。冷蔵庫の隣にある棚を見ると、塩や砂糖、お醤油など最低限の調味料は揃っているようだった。


「え、江奈さん……?」


雪ちゃんが恐る恐る近付いて来て、私に声を掛ける。


「今、朝食の準備をしますから、座っていて下さい」


ピシャッ!とそれだけ言って、私は作業に取り掛かる。


雪ちゃんが小声で「はい……」と返事をして、ソファーへと戻って行った。


「よしっ!」


気合いを入れ、水を張った鍋を火に掛ける。


まず、卵2つをボールに割り入れ、コシがなくなるまで溶き解す。お湯が沸いたら、トマトを湯剥きし、種を取り、ベーコン・チーズ・トマトを1センチの角切りに。これらと牛乳少々を卵に混ぜ入れ、塩・コショウで味付けをし、熱したフライパンで焼く。油より、バターで焼くと風味良し。


1品目、「トマトとチーズのオムレツ」完成。


次に、トマトを湯がいたお湯で、ブロッコリーを茹でる。


2品目、「手抜きじゃないよ?だって茹でただけが美味しいじゃん、ブロッコリー」完成。


次に食パンを袋から出し、半分の厚さに切る。幸い、5枚切りだったから切りやすい。レタスを適当な大きさに千切り、焼いたベーコンと一緒に、マヨネーズを塗ったパンに挟む。


3品目、「ベーコン・レタスサンド」完成。


スープは……。確か、粉末のコーンスープがあった。それにしよう。


鍋に、分量の3分の1のお水、残りの分量の牛乳を入れ、温め始める。沸騰したら粉末のコーンスープを入れ、しっかり混ぜて溶かす。スープをカップに注ぎ入れて、完成!


「よし!」


出来上がったそれらを運び、テキパキとテーブルの上に並べた。

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