第18話 挫折(ケイス)
「ケイス、そなたを『騎士』に転職させる」
玉音のような王の言葉が頭上に降り注ぐ。最も怖れていた言葉だった。
「デュランダルはもう『復活』しない。手を尽くしたが徒労に終わった。だが、そなたほどの男を『
ケイスは『勇者』以外の神託を受けなかった。だから、『王の任命』で無理矢理『転職』するしかない。
「お気遣い痛み入ります。けれど、慎んで辞退します」
「分かっているとは思うが、『聖剣』による加護はなくなる。そして、聖剣を保持していなければ、『勇者』としての能力も落ちてしまう」
「それでも!…………
それでも、俺は『勇者』です!」
赤い瞳が熱く燃える。ケイスの意志は固く、ジュリアスはそれ以上の説得はしなかった。
『お前は勇者になるだ!強い勇者にな!』
『おお!強い勇者になって!この国を守るんだ!』
それが父との合い言葉だった。『勇者』の神託を受けたケイスを誰よりも誇りに思っていたのは父だった。そのために日々体を鍛え、剣術を磨き、鍛練をしてきた。だが、父は俺が聖剣を継承する前に亡くなった。病気だった。聖剣を背負う自分の姿を一目見て欲しかったが、俺が勇者になれば父と俺の夢は生き続ける!
聖剣がその輝きを失ったとしてもだ!
俺が聖剣を超えるほど強くなればいい!体を鍛え、剣術を磨き、鍛練を重ねればいい!
だが、それがいかにちっぽけな努力なのか思い知った。飛竜が村を占拠したのだ。騎士団が出撃し討ち倒したが、俺は何の役にも立てなかった。騎士と同じ速さと高さを駆け回る筋力もなく、属性攻撃を持つ武器も扱えない。巨大で凶悪な飛竜を前にして、怪我人の回収をする事しかできなかった。
聖剣を失った事であんな魔物が現れるなんて……。
自分は何もできないなんて……。
なんて……なんて無力なんだ……。
「おお、ケイス!戻ったか!」
騎士団本部に顔を出したケイスにキースが話しかける。昔から共に切磋琢磨してきた戦友だ。
「ああ、ざっと見回ってきたが魔獣の影はなさそうだったぞぉ!」
ケイスは国の周辺の森や近隣の村を巡回して、異変がないか調べていた。勇者の頃からの役目だったが、
「あんたがいなかった間にすごい事が起きたぜ!使えなくなっていた武器や武装が元に戻ったんだ!」
「戻ったぁ!祈祷がようやく通じたのかぁ!」
「違うよ!『秘石』を直せるって男が現れたんだ!」
「秘石を直す?そんな『奇跡』のような事ができるのか?」
「実際直ってるんだよ!ああ、ほら!彼だよ」
ケイスは彼の指差す方向を見た。秘石室から出てきた男は背は高いが痩せている青年だった。背伸びをしている彼の元へケイスは走り出していた。
頼む!……聖剣を………取り戻してくれ……!
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